第112話 子供同士 吸血鬼の実力

「おーいゼフー遊ぼうぜー」

嵐鳴竜ゼフィラード、七聖龍の一人。アルカリスの町のお祭りで出会った大事な友達だ。


「ショウやないか!ホンマの急に来るのう!まあゆっくりしてけや!」


「今日は子供達と遊びたくて、この子はエリザ、吸血鬼だよ」

日焼け止めを塗り大きな黒い日傘をさしてなかなか快適そうなエリザ、しかし少し緊張しているようだ。


「わ、我は誇り高き吸血鬼のエリザだ!よ…よろしく…ね…」


「なんや吸血鬼なんて久しぶりに見たわ!ガキ共は向こうで遊んでるで!ショウが来たって知ったら喜ぶやろな!」


そしてゼフと共に子供達の遊んでいる広場に向かい、追いかけっこか?なにか走り回ってる子供達を見つけた。


「おーい!ショウが来たで!挨拶しいやー」


「ショウさんだ!また地下室で遊ばせてくれるの!?」

「私ジュース飲みたい!!」

「僕は釣りしたいな!」

僕人気者じゃん、地下室の人じゃん。


「今日は友達連れてきたよ!エリザっていうんだけど一緒に遊びたいんだってさ」


「ちょ…我は別に…その…無理に遊んで貰えなくても…」

遊びたいんだろ?公園も作ったし一緒に走り回ってきなよ。


「おぉ!牙ある!!かっこいい!!」

「白い綺麗な髪の毛だ!触っていい!?」

「お洋服素敵だね!その足のベルトは何に使うの?」

「そのぬいぐるみ可愛いね!私も持ってるよ!ほら!」


子供は無邪気だ、魔族だろうがカッコいいもんはカッコいいし可愛いもんは可愛いだよな。


「わ…我の牙かっこいい?服可愛い…?一緒に遊んでも…いいかな…」


「良いよ良いよ!一緒に遊ぼう!ショウさん!地下室行って良い!?」

もう大丈夫そうだ。僕は子供達に公園があるからエリザに遊び方聞いて遊ぶと良いよと伝え、地下室の扉を開いた。


子供の数は4人くらいか?まあ小さい村だからなぁ…


「ゼフはどうする?」


「そら決まっとるやろ!大人もええか?」


「良いに決まってるじゃん!飲んじゃおうぜ!」


少し気になったのでゼフと公園を見に行くともうエリザは随分と子供達と仲良くなったようだ。


「我がブランコ押してあげる!しっかり掴まっててね!」


「エリザちゃーん!こっちも押してー!」


「良いよー、それぇ!!」

キャッキャと騒ぐ子供達と笑顔でブランコを押すエリザ、しばらくすると交換してエリザが押される側になった。


「我強いから思いっきり押して良いよー!」

どんどんスピードを増すブランコ、そして丁度スピードが乗ったところで飛び降りクルクルと回りながらエリザは着地した。


「おお!かっけぇ!!エリザすごいじゃん!」

「すごい回ってたね!でもパンツ見えちゃってたよ!」


「そ…そうかな…?我かっこいい!パンツなんかいくら見られても良いかも!」

いやダメだろ、男の子の目線がちょっと泳いでるよ!あれ?女の子から見た僕ってこういう感じに見えるの?僕も少し気をつけたし!


「次はみんなで砂場で遊ぼう!我砂の山作るのうまし!」


子供達は砂場で山を作ったりままごとをしたりと忙しい、なんか良いよね、子供が遊んでるの見るのって。


「エリザちゃん!いっぱいお水持ってきて川作ろうよ!」

「橋も出来ちゃうんじゃない?」

「エリザは砂遊び上手いな!俺の山にもトンネル作ってくれよ!」


「我に任せて!みんなでこの砂場にいっぱい山作って川流す!一緒にやる!」

エリザちゃんリーダーみたいになってるっすね。僕は嬉しいよ。


「あの吸血鬼の嬢ちゃんええ奴やなぁ、吸血鬼ってなんかお高く止まってるヤツばっかやと思っとったわ」


「そうなの?僕はエリザしか知らないからさ」


「前に会ったヤツは血の眷属がどうとか赤き月からなんちゃらとか偉そうに言ってたわ」

知らないかも知れないけどそれ厨二病っていうんだよ。病さ…。


もう大丈夫そうだな、僕とゼフはベンチに座り楽しそうに遊ぶ子供を見ながら酒を飲み、世間話をしているといつの間にか日が暮れていた。


「大人達はもうベロンベロンやな…ショウの地下室の酒は美味すぎんねん、あとたこ焼きな」


「今日も好きなだけ持ってくといいよ」


「ありがたいわ、たこ焼きはワイのソウルフードやな」

そんな話をしていると村人の一人が息を切らしながら公園に入ってきた。


「ゼフさん!!魔獣だ!!かなり多い!頼む!!」

このタイミングで?今から風呂で飲む予定なんだけど…


「魔獣だって!村が壊されちゃうかも!」

「ゼフがいるから大丈夫だよきっと!」

「でも数多いんだって…私のお家壊されたら…」

子供達は不安だろうな…じゃあ僕の地下室で滅多切りにするか…。はやくゼフと飲みたいし…。


「魔獣?我に任しておくれやす!我強いから大丈夫!!」

エリザ?一応四天王だけど本当に強いの?


「エリザちゃん!危ないよ!魔獣って怖いんだよ!」

「やめとけよ!エリザ女の子じゃん!」


「大丈夫!任されたし!妾の…その…友達の村だし…」

危なくなったら僕が出るか…自分で友達の村守るって言ってるんだ、止めるのも野暮ってもんだろう。


「じゃあ行くか嬢ちゃん!ワイも助太刀するで!」


「一人で行く!酔っ払いは座ってて!」


「いや…そんなに酔ってへんのやけど…」

本当に強いのか?ゼフの戦うところも見たかったんだけど…。


外に出ると熊の魔獣がもう村の手前まで来ていた、30匹ほどか?多くない?ショウ君心配なんだけど。


そして先頭の一匹が柵を壊したところで…


「やめろ!!我の友達の村を壊すなぁ!、ブラッドブレイク!!」

エリザは完全に大人の容姿に変化し、呪文を唱えた瞬間にクマは細切れになり赤い霧となって消えた。


え?強すぎない?


「残りも許さない!!あの世で後悔されたし!!」

なんか今回のされたしは重みが違うな!


「スカーレット・ティアフォール!」

急に空が赤く染まり、魔獣を目掛けて落ちてくるのは…赤い隕石!?なんだあれメテオとかじゃないの?!


魔獣に隕石が当たると魔獣を吸収し、どんどん消えていく、死骸も残さないのか、便利なもんだ。


最後の一匹が隕石と共に消えたところで空は静かな夜に戻っていった。


「エリザ強いじゃん!正直口だけの子供かと思ってたよ。あと早く小さく戻って!なんかガーターベルト気になって感想まともに言えないから!」


「我は四天王だからね!このくらいできるんだよ!ショウは本当に足が好き…別にショウなら見ても良いのに…」

いや見るけど!意思とは関係なくね!


子供達の元に戻ろうというとエリザは大人しく小さくなった。いきなりナイスバデーのお姉ちゃんになったら子供達もびっくりするからね。


地下室に戻り魔獣は追い払ったと報告、もうエリザはヒーローだな。


「エリザちゃんすごいね!今度戦い方教えてよ!」

「強いんだな!俺だって次は戦うんだ!」

「村を守ってくれてありがとう!エリザちゃん!」


「ホンマに強かったんやなぁ…」


「一瞬だったよ、ゼフはもう仕事ないね」


「アホ抜かせ!ワイだって本気出したら瞬殺やで!」

まあ魔獣もいなくなったし…飲むか!

流石に明日はアルカリスの町に戻るけど…エリザどうすんだろ…

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