第93話 ドワーフの結婚式 女神の祝福

「いやぁ良い買い物をしたな!」

「このナイフの切れ味すごいよ!なんでもスパスパ切れちゃう!」

僕の知り合いと言う事でかなり安くして貰ったらしく二人はかなりの上機嫌。


「いいの?結構値引きして貰ったみたいだけど」


「ショウさんがいなかったら僕達はここにはいられませんでしたからね!正直儲かってるんで大丈夫です!」

なんかドワーフっぽい豪快さが身についてるな…。


「久しぶりに来たんだし地下室来ない?あと結婚おめでとう!」


「そう言えば言っていなかったですね!ありがとうございます!是非お邪魔させて下さい!」

儲かっている余裕のドワーフは店を早々と閉めてブレイズのみんなと地下室に降りてきた。


「なんかすごい事になってますね…」

「私達が来た時はもっと小さかったような…」

まあそういうスキルなんだよ。もう誰が何で遊んだか把握できてないよ。


「もう結婚式はしたの?呼んでくれれば良かったのに」


「なんですか結婚式って?」

え?無いの?結婚式。


「ショウさん、結婚は指輪を渡したら成立だよ?儀式なんていらないよ?」

アカネちゃん、違うんだ。なんか僕が変な事言ってる空気になっちゃってるけど。


「えーと…花嫁が綺麗なドレス着て、なんかこう、結婚しました僕達!みたいにお披露目する風習があるんだよ。」


「綺麗なドレス!?」

キキちゃんは目を輝かせて食いついた。


「ねぇどんなドレス着るの!?私に似合う!?」

きっと似合うよ、キキちゃん可愛いし。見た目は美少女だけど年齢は80とかだっけ?ドワーフは長寿だからたまに良く分からなくなる。


「私も気になる!きっとすごいドレスなんでしょ!?」


「ドレスに憧れない女子はいませんからねぇ…私も見てみたいです」

アカネちゃんとシンシアさんも興味津々か。

衣装室に出してみようかな。確認すると何着か纏めて20ポイントくらいだし安い安い!もう千単位で使ってるんだけ僕は。


とりあえず見てみようと言う事で衣装室に全員で移動、カムイさんとシルバさんも気にはなるようだ。


「おぉ!これこれ!ウエディングドレスって言うんだよ」

あれ?どうしたのみんな固まって…白すぎて目をやられた?


「素敵…」

キキちゃんはそう言ってドレスに見惚れている。

アカネちゃんとシンシアさんも同様だ。


「こ、これはすごいですね…こんな細かな細工がされたドレスなんて見たことありません」

シン君も興奮している。これすごい高いらしいよ?


「これを着て教会でみんなに祝福されるの、それが結婚式だよ」

神父とかも必要そうだけどぶっちゃけあの女神来そうだし黙っておこう。


いっその事教会もアクティベートしよう。事が済んだら一旦消すけどね、なんかあの女神住みそうだし。


見惚れているみんなの目を覚まし教会に案内する。

「これこれ、この神聖な感じの中であのドレス着るんだよ。やってみたくない?シンくんはタキシードっていう服着るんだよ」


「「「やりたいです!!」」」

三人は同時に声をあげる。

いやダメだよキキちゃん以外は…


「一応ウエディングドレスを着るのは原則一回だけだよ?結婚出来なくなってもいいなら良いけど…」


「うーんそれは嫌ですねぇ…私はその時の為に取っておきますわ…」


「私も取っておくよ…ねぇショウさん、試しに結婚してみない?」


「いやダメだよ付き合ってもいないのに」

僕はちゃんと段階を踏んでからその…やったほうが良いと思う!


「だめかぁ…結構本気なんだけどなぁ…」

何かすごい事を聞いた気がするが今はキキちゃんとシン君のお祝いの場なので!


「急だけど今日の夜に式やろうよ、みんなも呼んでさ」

ドワーフは酒と聞くと集まるし、良い機会なんじゃなかろうか。


「やります!!ね!やろうよシン!!」


「そうだね!やってみようか!」

二人ともノリノリだね。


二人がウェディングドレスとタキシードを選ぶと言うとアカネちゃんとシンシアさんは手伝います!と付いて行った。きっと楽しく選ぶのだろう。


残された男三人。

「俺達は何をすれば良いんだ?」


「僕は使ってない地下二階に宴会場を作るので…まあ一緒に行きましょう」


「どんな風に作るのか気になるわい」

そう言ったシルバさんだが僕の宴会場作りを見て言葉を失った。


「えーと、机いっぱいと椅子いっぱいでしょ?料理はこんくらい出して、酒は山ほど置いて、あとウエディングケーキかな。一番大きいのでいいや。照明は豪華にしてっと。」

ポンポンと現れる酒と料理、そしてどんどん華やかになる部屋。


「なんじゃこれは…魔法の気配がまるでせん…もうわからんな、飲むか」


「お?良いねぇ、料理には手を付けないが酒なら良いかな?」

どうぞどうぞ、もう終わったんでゆっくりして下さい。

あとカメラね!新しいの出しておこう!もう墓まで持ってくレベルのカメラは人前では使わないぞ!


タキシード選びは案外すぐに終わったらしいシン君を誘って僕はサウナに来た。

「色々ありがとうございます、キキすごい喜んでて…」


「とりあえず教会で写真を取ろうか、あとはみんなに祝福して貰って」

僕は簡単な流れだけ説明、多分本格的なのってもっと時間をかけるものだろうけど…今回はドレスを着て思い出が残れば良いのではないか。


繁盛してる店を休んでまで準備に時間をかけるのも提案した僕としては心苦しいからね。


そしてサウナで整ったあと、花嫁のドレスが決まったらしいので簡単な打ち合わせをする。

「普通の流れだとまずシン君が先に教会の中で待っててキキちゃんはお父さんと一緒に入ってくるんだよね。

そしてうちの娘を任せたぞって意味を込めてシンくんに花嫁を渡すっていう流れなんだけどどうする?」


「うちのお父さんそういうの苦手なんだけど…一応聞いてみるね!ダメなら普通に教会の中で写真?撮って貰うだけでもいいかな!」


「緊張しますね…頑張ります!!」

ブレイズのみんなもオシャレをして出席するらしくスーツとドレスを選びに行った。


結婚式準備は恐ろしいスピードで終わり、今僕はシン君を見守りながら教会の一番前の席に座っている。

シン君緊張してるなぁ…


シャッターチャンスを逃すまいとブレイズ全員はカメラを持って待機だ。

すると音楽が流れ始め扉が開いた。

音楽どこから流れた?


扉から現れたのは真っ白なウエディングドレスを着たキキちゃんと緊張で汗をダラダラかいているお父さん。

参列者も緊張の面持ちで見つめている。


しかし綺麗だなぁ…僕もいつか誰かと結婚するなんて日が来るのかな…。とりあえず写真だ写真!!

ブレイズのメンバーは見惚れていてそれどころではないみたいだし!


シン君の所まで歩いたキキちゃんとお父さん。

お父さんはキリっとした顔になり、真面目にシン君に声をかけた。

「結婚した時にも言ったが俺の娘を泣かせたら承知しねぇからな!まあシンの事は昔から知ってるからそんな事しねぇヤツだって知ってるけどよ…。俺の娘を宜しく頼むぜ!」


「は、はい!一生幸せにします!!」

全力で答えるシン君…いいなぁこの感じ…。


そしてキキちゃんはシン君の元へ…

「き、綺麗だよ!すごく似合ってる!」


「そ、そう?一生懸命選んだの、歩きにくいんだねドレスって…でも夢みたいだよ!こんな綺麗なドレス着てこんな綺麗な場所でみんなの祝福されるなんて!」


この後は誓いの言葉とかチューとかあるんでしょチューとか。今回は神父がいないからこのままみんなで写真撮って…


「女神の名においてあなた達の婚姻を祝福します」

げっ!急に現れやがったなあのKY女神!良いところで邪魔すんなよ!帰ってくれ!


サキエルが急に現れ全員困惑している。

「あれって女神様よね…お美しい方…」

「すごいすごい!神様来ちゃったよ!どうするの!」

「俺たちも初めて見たな…なんて神々しい…」

みんな待ってくれ、ロクでもない事する前に帰って貰おう。


「新郎シン、あなたはここにいるキキを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も

妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

あれ?意外にちゃんとしてんな…


「え?あ!ハイ!!誓います!!」

シンくんは困惑しているが元気よく誓いの言葉を立てた。


「新婦キキ、あなたはここにいるシンを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


「誓います!!」

キキちゃんも同様だ。女神に会えて喜んですらいる。


「今、この両名は天の父なる神の前に夫婦たる誓いをたてました。何人もこれを引き離す事はできません。誓約書のサインを持って正式な夫婦として神の加護を与えましょう。」

目の前に一枚の誓約書が現れ、二人は緊張の面持ちでサインをしている。シャッターチャンスは逃すまい!


「婚姻は成されました、おめでとうございます!シンさん!キキさん!!お幸せに!!ケンカしちゃだめですからね!」

最後だけサキエルはサキエルになって帰って行った。

あいつもやればできんじゃん。あとで酒でもやるか…

ありがとうな。


女神が消えた後しばしの静寂が訪れ、我に返った参列者はどっと湧き上がった。


「うおおおおすげぇもん見たぜ!!酒だ酒!!祝い酒だぁああ!」

「素敵だったわ!!私もやって貰えばよかった!!!」

「神の祝福まで受けたんだ!!幸せに暮らせよな!」


祝福ムードの中僕はシャッターを切り続けた。

「なんかすごい事になったね…」

「でも私幸せよ、シン。愛してるわ」


良いなぁー!!良いなぁ!!

そして僕はみんなに声をかける。


「地下室二階に宴会場を用意しました!!好きなだけ飲んで食べて下さい!!!」

再度歓声が湧き上がり、これから披露宴が始まる。

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