第34話 お届け物 暇なサキュバス
シロにダンジョンで見つけた杖を届けたい、もしもこの杖で戦闘が楽になって危険が少なくなるなら早い方がいいと思う。
「ユキさん、今勇者パーティーってどこにいるか分かりますか?シロに杖を届けたいんですけど」
「勇者パーティーですか?確か今は…。ええと、帰ってくるまで待っていたらどうですか?」
なんか歯切れが悪いな、そんな危険な場所なの?
「僕は地下室で行くだけだから安全ですよ、心配しないで大丈夫です」
「いや危険では無いんですけど危険と言えば危険?な場所?的な?」
急にユキさんがギャル男みたくなってしまった…どうもハッキリしないな…。
僕は安心して下さいと言うと渋々と場所を教えてくれた。
「勇者パーティーは色町…サキュバスタウンに行っています…」
色町?サキュバス?ふーん。
それは危険ですね。危険だけど僕行かなきゃ!冒険者だから!僕のショウ君も冒険しなきゃ!
「何か魔獣でも出たんですか?勇者が行くほどの」
僕は出来るだけ平常を装い聞いてみた。
「いえ、定期的に巡回して貰ってるんです。女の子の勇者が定期巡回してるとなればハメを外しすぎる人も少なくなるので。でも今回は少し時間がかかってるみたいなので心配でもあります。」
なるほど、たしかに何か悪い事したところを勇者になんか見つかったらえらい事になるな…
抑止力と言う事か。
「帰りが遅い?大変だそれは。じゃあちょっと行ってみます、シロに杖渡さないといけないので。これ急ぎなので。」
「ショウさん…まあ良いですけど杖を渡したらすぐに帰ってきて下さいね!!」
語尾を強めに言われたがなんとか出発できた。
サキュバスタウンか…まあ興味ないけど?興味が無いがこの胸の高鳴りはなんだろう…恋?
ショウが出発してすぐ、ユキの後ろで話を聞いていたノアちゃんがユキに話しかける。
「いいんすか?サキュバスの町になんか行かせて。」
「まあ実際勇者パーティーは帰ってくるの遅すぎますからね、そしてショウさんは結局何もしないと思います。」
「まあそうっすね、私もそう思うっす。ショウさんは奥手というか、ヘタレな感じがするっす。」
「そうですよね、お泊まりした時も全然何もしてくれないし…」
先輩…本音声に出てるっす…
…
なんかすごく失礼な事を言われた気がするよ。
しかしサキュバスの町か、きっとこう、良いんだろうなぁ。良いんだよなぁきっと。
結構近いな、まあそんな遠かったらお客さん来ないか。
まだ明るいので人はまばらだが確かにこれは…
短いスカートに胸が半分出ている服。そんな女性がお店の前にチラホラ。
どういうシステムなんだろ、いや入らないけどさ。
お金は持ってきたけど。
とりあえずシロを探そう、聞き込みだ。
僕は期待を胸に近くの店の前のサキュバスさんに声をかけた。
「あの、勇者パーティー来てますか?ちょっと探してるんですけど。」
近くで見るとすんごいな。色気と魅力でどうにかなってしまいそうだよ。
「あら、イケメンのお兄さんじゃない、勇者パーティーなら隣の喫茶店で遊んでるよ。」
遊んでる?何してんの?
「それよりお兄さんも遊んでいかないかい?今なら五人同時でも良いよ。」
なんだって…五人?それはもう…なんだろう!分からなくなったきたよ!
「そうしたいのは山々ですが…そんなところ勇者パーティーに見つかったら大変な事になるので…」
残念だねぇと言われ僕は隣の喫茶店に入る。残念だねぇ、本当に残念だねぇ。
店に入るとシロが将棋をしている、何してんの?完全に遊んでるじゃん。
「シロー久しぶりだな」
「ショウ!?なんでこの町に…?まさかサキュバスの店に…」
シロは驚きと落胆を見せる、感情ぐっちゃぐちゃだな。
「違うんだよ、これを届けに来たんだ。ダンジョンのクリア報酬、シロに良いかなって。」
僕はドラゴンボーンスタッフを見せた。
「杖?私に?嬉しい!ありがとう!」
シロは笑顔で受け取り、まじまじと見ている。
「これは…ドラゴンボーン?すごい、初めて見た」
シロ曰くドラゴンボーンスタッフは単純にドラゴンの骨で作られたものでは無いらしい。魔力が強いドラゴンの体内で偶発的に生まれるスタッフとして使える骨がドラゴンボーンスタッフなのだとか。
「魔力循環効率がすごく良い、これなら魔法の質も上がる。今の杖の数倍になるかも…」
数倍?チートじゃんそれ。
「大事にする。ショウに貰った杖」
シロは良く笑うようになった。いい事だね。
「ちょっと勝負を決めてくる」
そういってシロは将棋に戻っていった。
相手はサキュバス、戦況は…シロ負けてるの?なんで?
結局シロは負けてしまった…結構強いと思うんだけど。
「うー…勝てない…」
普通に悔しがってるな…手加減してる感じじゃない。
勝負が終わったので少し話を聞いてみる。
勇者パーティーの巡回が始まって治安は向上、犯罪まがいの事は全く無くなり平和そのものになった。
しかし同時に客足も遠のいてしまってヒマになった。
ヒマを持て余していたサキュバスと将棋をしたらまさかの敗北。
勝つまで帰らん!と今勝負を挑み続けているらしい。
負けず嫌いで遅かったの?
「ホノカは?先に帰ってるとか?」
「ホノカは子供達と遊んでいる。なかなか人気」
アイツが遊んで貰ってるんじゃなくて?
しかしサキュバスの店が暇かぁ…治安が良すぎるのも考えもの?そんな事ないか。
「サキュバスさんも大変ですね」
シロを負かしたサキュバスさんに声をかける。
「治安が良いのはいい事ですよ。しかしまぁ私達サキュバスなので…」
精力を吸い取らないといけないって話?
「性欲が溜まってしまう子も多いですね」
ん?なんか少しだけ解釈が違うような…
「あの…少し聞きたいんですけど、精力を吸収するみたいな話は…」
「なんの話ですか?」
あれぇ…
全く会話が成り立たないのでシロが助け舟を出す。
「ショウは何か勘違いをしている。サキュバスは性欲が強い種族だが何かを吸収するとかはしない、普通に食事をする。」
じゃあそれただのエッチなお姉さんじゃん!
単純に商売として色町を経営、ついでに性欲も発散。
それがサキュバスタウンだという。
なんか人間でいう食事みたいな物だと思ってたよ。
なんかそう聞くと人助けの大義名分が無くなった気がする。サキュバスに必要な精力を提供します!みたいな言い訳が使えなくなっちゃった。
「しかしヒマなのも考えものなのかな?」
「まあそうですけど、落ち着いてこうやってのんびり遊ぶみたいなのもいいものですよ」
なんかサキュバスっぽくないな…まあ僕が勝手に勘違いしてただけだけど。
暇を持て余したサキュバスか…何もしないよりスポーツでもして発散したらどうだ?
「サキュバスのみなさんってスポーツ…えーと、運動とかしないんですか?」
「ベッドの上の話ですか?」
おっと急にドキっとする話題転換!
「説明が難しいですね…」
ステータスを開くとサッカーやバレー、スケート…バスケットボール。バスケか…
まあ僕も体動かしたい時に使うしアクティベートするか。
200ポイントでアクティベート、遂に地下室にバスケットコートができた。
「シロ、ホノカも呼んで地下室に行こう、暇を持て余してるサキュバスとボール遊びだ。」
「わかった、ショウがそう言うならやる」
シロはホノカを呼びにいく。
「サキュバスさん、大きなお世話かも知れないんですが少しボール遊びをしませんか?暇な方も呼んで」
「ボール遊びは得意です!みんな呼んできます!」
なんかニュアンスが違う気がするけど…
幸せポイントも貯めておきたいしサキュバスをおもてなししよう!
数分後、15人のサキュバスとシロとホノカ、初めてこんなに大人数の女の子に囲まれたな。
ここは天国か?
そして僕は好青年として行動できるのか!!?
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