第22話 襲来 遠出 怒り

「緊張するな…」

BARで散々騒いだ後にゆっくり眠り、ノアちゃんとマロンさんは仕事へ。ユキさんはデートの準備をすると家に一度帰った。


そして今僕は待ち合わせ場所のギルド前に向かっている。

ピクニックをして外でお弁当を食べると予定。しかもユキさんの手作り…なんて夢のようなプランだ。


ギルド前に着くとなにか騒がしい、なんだろ…嫌な予感しかしない。今デートが中止なんてなったら原因を作ったやつに暴力的手段をとってしまうかも。


しばらくするとユキさんが慌ててギルドから出てきた。ギルドの制服だしお弁当も持っていない。

まだだ、まだ慌てるような時間じゃない。


「あ!ユキさん、僕は丁度今着いたんだよね、さて行こうか」

最後まで諦めない…諦めないぞ。


「ショウさん!王都に魔王軍が進行を始めました!至急Bランク以上の冒険者は王都に向かって下さい!緊急クエストです!」


はぁ…そうですか、魔王軍が進行してると…昨日から楽しみにしてたユキさんとのデートの日に?


ふーん…ちょっとぶっ殺してくるね。

「無事に帰って来てください!帰ったら今度こそデートに出かけましょう!」

ユキさんも楽しみにしてたんだろうな…でもしっかり自分の仕事をしている。


僕もウジウジしてられないか、さて、ぶっ殺しに行くか、絶対に許さないからな。


もう他のBランク以上の冒険者は出発したらしく僕は急ぎ王都へ向かう。

王都かぁ…どんな場所なんだろ。そして敵はどんな敵?オーガのゴウケツさんとか連れて行ったらだめなの?


数日運転を続けてやっと王都に到着した。

城門の辺りには冒険者が集まっている…が、


「は?これだけ?100人もいないじゃないか」

確かに屈強なメンツだが数が少ない…Bランク以上ってこんなに少ないの?

見知った顔を探すとブレイズのメンバーを発見!久しぶりだ!テンション上がるな!


「カムイさん!シルバさん!シンシアさん!アカネちゃん!お久しぶりです!」

この世界で初めて一緒に旅をしたブレイズのメンバー、何も変わってない、無事冒険者を続けてるみたいだ。


「ショウさん!やっぱり来たんですね!」

「久しぶりじゃの、元気そうでなによりじゃ」

「会いたかったですわ!そろそろシャンプーが無くなりそうで!」

「ショウさん!久しぶり!ショウさんがいれば百人力だね!」


みんな元気そうでなにより、後で一緒にカレー食べましょうね。


「ところで冒険者ってこれだけしか居ないんですか?なんか少ないような…」


「あぁ、冒険者はCランク以下がほとんどだからな…俺たちだってチームを組んでAランクだが個人でいえばBランクかどうかも怪しい」

そう言う事?じゃあ分断されたらやばいんじゃないの?


「個人でAランクなんてそうそういないよ?ショウさんはそれくらい強いんだよ。」

アカネちゃん…僕は硬いだけの大砲野郎だよ?


するとリーダーから話があると兵士が叫び、リーダーが壇上に上がってきた。


「みんなー!頑張って敵倒そうねー!」

おい…あの馬鹿でかい剣持った女の子って…


「やっぱり勇者様がリーダーよね。」

シンシアさん、認めちゃダメだよ!あの人アホだから!


後ろにはシロが一緒に立っているが喋るのはホノカだけだ。

「もうすぐ魔王軍が来るから怪我しないように撃退してね!作戦は命を大事に作戦だよ!多分ここにいるショウって冒険者がキズ治してくれるから死なない程度に頑張って!」


おいおい…別に良いけど死んだら復活できないと思うぞ。

そして魔王軍もう来るの?なんか少し準備したりする時間くれないの?


急に来やがって…僕はユキさんとのデートを邪魔した事許してないからな…

ぶっ殺してやると言い続けるよ。


各自準備をして迎え撃ってね、という言葉で挨拶は終わった。なんだったの?今の。


勇者に文句言ってきますとブレイズのメンバーに伝え、ホノカの元へ歩いて行く。


「おーいホノカ、なんだ今の」


「あ!ショウだ!頼んだわよ!色々と!」

「ショウ、久しぶり。」

シロは少し嬉しそうだ。結構仲良くなったもんな。


「結局僕は怪我人の世話をすればいいの?それとも敵を倒せばいいの?」

地下室は僕がいないと入れないし戦闘に出てしまったら怪我人をヒール風呂に入れるのは困難だ。


「とりあえず怪我人をどんどん治療して欲しいかな、あの大砲1発撃ったあとで。」

あの大砲強いんだけど範囲が狭いんだよね。大丈夫かな?


「私は範囲魔法を撃つ、疲れたらお風呂入りにいくから。」

それだと無限に魔法撃てるのか、魔王軍も可哀想に。


「でも敵ってどんなの?強いの?」


「まあ大した事ないわね、召喚された魔物が大半よ、倒すと消えていくけど召喚士をどうにかしないと無限に湧くわね。限度はあるみたいだけど。」

なんとなく安心した。よくある敵にも家族がいるんだ!みたいな感じじゃなくて良かった。


「そろそろ来る、準備を」

シロが真剣な顔で口を開いた。

なんか展開早くない?まあさっさと終わらせたら早く帰れるしな。


「来たぞー魔王軍だ!迎え撃て!!」

そのセリフって一応ホノカが言うんじゃないの?だれ君。


魔王軍の数は…分からない…多すぎる。

黒い何かが押し寄せてくる、あれ全部敵なの?無理じゃない?


まずシロは先頭に飛び出し

「アストラルフレア…」

空が黒くなり炎は降り注ぐ、地上に降りた炎は大きな爆発を起こし敵を吹き飛ばしている。


「強いなぁ…相手が可哀想になるくらいじゃないか。じゃあ僕も一発打ち込むか…じゃあ僕も撃ち込むからみんな離れててね。」


そう言って地下室に降りて操縦席に座る、そういえば大砲は使ったけど切り裂きの方は使ってないな…


ポイント使ってアップデートして使ってみようかな…100ポイントだし実は大砲より強かったりして…。


切り裂きのボタンを押すと照準が…あれ?これロックオンできるの?すごい速さで敵がロックオンされていくけど…

なんか範囲攻撃っぽいしこれでいこう。

アップデートもしちゃおう、きっとみんな驚くぞ。


ポチっとな。


ボタンを押すと回転する手裏剣?のような刃が三個出現、敵の方にものすごいスピードで飛んでいき…


あれいつ止まるの?かれこれずっと敵切り裂いてるけど。数分過ぎても数十分過ぎても永遠に敵を切り裂いて回る手裏剣。


敵はどんどん召喚されるが切り裂く方が早い、しばらくすると魔王軍は壊滅した…しょうもな…


外に出るとホノカが地下室の上で待ち構えていた。

「ちょっと!私の出番ないじゃない!」

ないよ?何したかったの?


「いや、なんか大砲だと範囲狭いじゃん?だから切り裂きっていうの使ったの。そしたらこうなった。」


「規格外、でも良かった。」

シロはとりあえずみんなが無事だったのを喜んでいる。ホノカも見習え。


冒険者全員が魔王軍の撃退を喜び歓声が上がっている。

ブレイズのみんなも近くに来てお礼を言われた。

僕はちょっとした有名人になったみたいだ。

しかしこれだけで終わらないのがセオリーだよね。


「お前…よくもやってくれたな…あの軍勢準備すんのに何十年かかったと思ってんだ?」

ミノタウロスと悪魔を足したような魔物が空から話しかけてきた。


「お前が魔王?ちょっと文句言いたいんだけど。」

僕は忘れてないよ?お前のせいでユキさんとのデートが延期になった事。


「魔王様がこんな小国に来るワケねぇだろ、おれは四天王の一人、軍勢のバビロン様だ。」

もう軍勢いないじゃん…

「アイツは強い、すごい魔力、規格外」

シロは少し怯えているようだ、そんなに強いの?


「あのさ、お前なんで今日来たの?お前のせいで僕は楽しみにしてたデート出来なかったんだが?」


「「「デート!!!?」」」

アカネちゃんとシロとおまけにホノカが同時に声をあげる。

「デート…誰と…」

「ショウさんデートする人いんの?くっそぉ出遅れたぁ」

「で、デートなんて誰と行くの!?私というものがありながら!?」

おい、ホノカは何を言ってるんだ?君はとりあえず大剣ぶん回してあのバビロンとかいうの地上に叩きつけてよ。


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!こうなったらここにいる全員片っ端からぶっ殺してやる!低俗な冒険者なんか敵じゃねぇよ!」


「あ?お前いまなんつった?」

ここの冒険者を殺す?ブレイズのみんなも?ホノカやシロも?


「ショウ?あんた顔怖いわよ…」

「冷静になった方が良い」

ホノカとシロは珍しく怒った僕に少し戸惑ってるようだ。


「殺すって言ったの?ここのみんなを?」


「そうだよ!お前が大事にしてるそこの女共は犯してからぶっ殺してやるから楽しみに待っとけよ!」

そうかそうか、もう容赦はしないから覚悟しろ。


「待ってろ、今叩き落としてやるよ。少し準備するから二人とも宜しくな。」

そう言って地下室に降り、操縦席に座る。


「おいおいおい!逃げちゃったよぉ!だっせぇなぁ!よえぇくせに調子のんなよ」


「…エターナルブレイズ」

シロの杖から炎が飛び出しバビロンに向かって飛んでいく、しかし簡単に躱されてしまった。


「おっと危ねぇ!威力があっても当たらないと意味ないよなぁ!」


「ショウの事をバカにするのは許せない…ヴォイドテンペスト…」

暗闇が広がり突如として竜巻がバビロンを包み込む、しかしバビロンは事もな気に弾き返した。


「少しは出来るみたいだが俺様には効かねぇよ、残念だったな。」


「でもこれならどう?結構痛いよ?」

さっきの魔法に隠れて飛び上がったホノカは上空から剣を振り下ろす。

しかしあっさり避けられてしまった。


「いやいや遅いって、そんなのろい攻撃当たる方が難しいだろ。」

ホノカは拳をまともに受け地面に叩き落とされた。


「いったぁ!なんなのアイツ腹立つ!」


「時間稼ぎにしては本気で殺しに行ってるな…まあそれはそうか…」

僕が地下に入って準備をしている間に殺戮が始まったら目も当てられない。

しかし準備は整ったぞ。


僕は二段階アップデートした大砲の照準をバビロンに向ける。大砲には気がついているが簡単に避けられると思ってるのか?この大砲はアップデート前でも聖剣へし折ったんだぞ?


さて、終わりにしよう。

約束の暴力的手段だ。

僕は大砲のスイッチを押した。

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