第19話 約束 ピザ 禁酒

僕は今町に帰って冒険者ギルドに報告に来ている。

「…と、言う事で貰ったのがこの剣です!」

僕は高らかに剣を掲げて自慢していた。

だって格好いいんだコレ、いつもは地下室に飾ってるんだけど。


「結構時間がかかっていると思ったらそういう事でしたか、とりあえず依頼達成ありがとうございます。これは今回の報酬です。」

ユキさんはいつもしっかりしてるな、お酒飲んだらあんな感じだけど…


「それで…あの…私明日おやすみなんです、今日の夜から暇なので…その…」

あ!ビリヤードの約束だ!しかも明日休み?何かが起こる予感!


「ちょっと先輩ぃ、それがいつも喋ってるショウさんっすかぁ?」

「最近髪の毛がサラサラになる薬貰ったショウさんって冒険者よね、私もご一緒したいわ」


後ろから盗み聞きをしていた二人のギルド職員が受付に現れた。ここで働くと地獄耳に改造されんの?

一人は後輩、一人は先輩か。

後輩は茶髪のやんちゃ系。

先輩は黒髪でなんというか…妖艶だ。


「ちょっと!そんなに話してないですよ!からかわないで下さい!」

慌てているユキさん…レアだ。可愛いなぁ。


「今日その地下室行くんすか?二人だけで?ちょっと私達もお邪魔したいっす!大勢の方が良いっすよ!」


「そうねぇ、冒険者の男性と二人っていうのは私心配だわぁ、みんなで行きましょう。それとも二人じゃないとなにか不都合でもあるのかしら?」

ユキさん…顔がぐぬぬってなってるけど大丈夫?


「で、でも…ぐぬぬ」

遂に口に出ちゃったよ。


「ショウさんもそれで良いっすか?じゃあ楽しみにしておくっす!」

「じゃあまた夜にね、ショウさん」

そう言って二人は奥に戻って行った。

僕何も言ってないけど…テレビでも見ている感覚だったよ。


「すみません…なんか三人で行きます…ギルド前で待ち合わせで良いですか…」

落ち込んでるなぁ…そりゃそうか…職場の人いたら好き放題飲めないよね。


じゃあ夜迎えに来ますと言ってギルドを出た。

そして地下室で何を出そうか考える。


ポイントもいっぱい貯まったし何か設備を交換しようかな。

お酒かぁ…これが良い、バーカウンター50ポイント。

少し高いがどうせ色々と飲み放題なんだろう。


ビリヤードの部屋は殺風景だったからな、ちょっとオシャレに模様替えだ。


間接照明を付けて明かりの色を暖色に変更、音楽なんかあったら良いけど…


…あるじゃん…ジュークボックス…万能だな。


結局こだわりのBARが出来上がった…結局80ポイントも使ってしまったがこれは良い。


いやかなり良い。

ホテルとかにあってもおかしくないんじゃないか?


試しにジャズを流しカウンターに座ってコーラを飲む。

落ち着く…


立ち上がりビリヤードをしてみる。

落ち着く…整うわぁ…


カウンターにはお酒のビンが並んでいて色々作れるようだが土台無理な話なので酒用ドリンクバーなるものを設置。


カクテルを選んでボタンを押すとコップに出来上がったカクテルが出てくる優れもの。

シャカシャカするアレもしたかったが素人がやってカッコいいものではないからね。


少し早いが迎えに行こう!早くお披露目したいよこのBAR!名前は考えてないけどBARと呼ぶ事にします!


ギルドの前に行くと三人は談笑している。もうギルド終わったの?


「お待たせしました。早かったですね。」


「ショウさん!仕事は全部ギルド長に任せて早上がりしました!」

大丈夫なの?ギルド長って上司でしょ?


「ショウさんはAランクっすからね!親睦を深めてこいって話っすよ!」

「他の町に行かれるとなかなか困る案件のありますもので。」


なんか期待されちゃってるのかな?地下から大砲ぶっ放すだけなのに?

深く考えずに三人を路地裏に案内し地下室の扉を出す。


「うお!これが噂の地下室っすか!」

どんな噂?モグラとか悪口言われてない?


「夢のような空間ときいていますわ」

良かった。悪口じゃないみたい。


「なんか久しぶりな気がしますね。」

ユキさんはとても楽しそうだ。そう言えば二人の名前は?


地下に降りてソファに座り簡単な自己紹介を済ませた。

後輩ちゃんはノア、先輩はマロンと言う名前らしい。

マロンか…なんとなくイメージ通りだなぁ。


ユキさんに地下室案内を任せて僕は食事と言う名のツマミを作る。

カルパッチョがもう一度食べたいというので一品は決定。あとはサラミと…ピザとかどうだ?


温めるだけのピザを交換、三人が風呂に入っている間につまみ食いをすると美味い、これはビールが欲しくなる。


調理が終わったタイミングでちょうど三人が上がって来た。


「やばいっす!良い匂いもするし髪の毛サラサラだし!あれやばいっすよ!このパジャマ?もやばいっすよ!」

ヤバいっすよね、みんなやばいみたいっすよ


「本当に夢のよう…毎日お手入れしてもこうはならないわ…少し貰えないかしら?このパジャマはもう着てしまったから貰いますけど…」

あげますよ、なんか回収したら変態みたいじゃないですか。


「このお風呂を知ってしまうと…他のお風呂では満足できません…そもそもお風呂は高級品でお家にないですし。」

聞けば公衆浴場があるらしいのだがみんなが入るのでお湯が濁っているらしい。清潔な風呂に慣れてしまっている僕はちょっと遠慮したいかな…


そしてソファに座って軽く休憩。軽食にピザを出す。

みんなそれぞれ飲み物を持ってくるが…


あれ?ユキさん飲まないの?ノアとマロンさんはビールがぶ飲みしてるよ?


「このピザっていうの美味いっす!やばいっす!ビールも最高っす!」


「本当に美味しいわぁ、コクのあるチーズがたまらない。そしてこのビール、よく冷えていて染み渡るわぁ。」


「このメロンソーダも美味しいですよ…」

ユキさんはメロンソーダが美味しいらしい。でもなんでだろう。メロンソーダに失礼な感じがするよ?


「ユキさん飲まないんですか?ワインもありますけど…」


「ぐっ…私は結構です。今日はお酒ではなくこの緑を飲みます。」

ぐって言ったよ?しかももう緑とか言ってるじゃないか。メロンソーダ美味しいのに。


「この間はご迷惑をかけてしまったので…少し自重しようかと…」

みんなの前だから?それとも僕に遠慮してる?


僕は大袈裟にBARの存在を仄めかしてみる。

「あー、それは残念ですねー。色々なお酒飲める場所を準備したのになー。一緒に飲めないのかー。残念だなー。」


ユキさんはピクっと動くと。

「ち、ちなみにどんな場所なんですか?」

二人も続いて聞いてくる。

「色々なお酒っすか!?飲みたいっす!」

「興味あるわぁ、連れてって頂けないかしら」


ふふ、ついにBARのお披露目だ。心の準備はいいかな?諸君。

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