第8話 ジグソーパズル トンカツ ドラゴン

ギルドの入り口を出るとホノカとシロがもう到着していた。


「早いね、もう買い物はいいの?」


「まあシロが全部買ってくれるからね、私は買い物下手だから」

分かるわぁ…なんか木彫りの熊とか買って来そうだもん。

「準備万端、さっそく出発しよう」

シロさんも大変っすね。


町の門をくぐり外に出る。よく考えたら臨時とはいえ僕は勇者パーティーにいるんだよな、なんかすごい事になったような気がする。


「じゃあ町も見えなくなったし地下室で進むか」


「地下室で進む?何言ってるの?」

確かに何を言ってるんだろう僕は、でも事実なんだよ。

とりあえず行けば分かるさと二人と地下室へ降り、透視をアクティブにしハンドルを握る。


「もうなんでもありじゃない…」

「これであの大砲撃てるとか国取れる」

取らないよ、いらないよそんなもん。


初めは僕は操縦していたがホノカが自分もやりたいと言い出したので操縦を任せる事にした。


すぐに飽きると思ったがとても楽しいらしく休憩を挟みながら操縦している。まあ楽でいいけど。


シロはソファでミルクティーを飲み座っているが…暇なのだろうか、表情が読み取りにくい娘なんだよな。


しかし暇そうなので何か娯楽を提供しようとステータスを開く、そういえば幸せポイントも溜まってるな。


【幸せポイントが規定数に達しました。スキルポイントを300ポイント付与します】

300!?残りのポイントが400ポイント超えたぞ!?

ちょっとくらい無駄遣いしても大丈夫そう。


娯楽は…ボードゲーム、ダーツやビリヤードもあんのか、複合施設とかいうのは1万ポイント?バカの数字じゃん。


他には…ジグソーパズルか…なんか直感なんだけどシロが好きそうなんだよな。


これにしよう、せっかくだしちょっと大きいのを。

イラストは…空に浮かぶ城かぁ、空と雲が大変そうだけど…難易度が高いだけ達成感がある!これにしよう!


「シロー暇ならこれやるか?なんとなく好きそうだなって思って。」


「なに?これ」

僕はジグソーパズルの遊び方を説明し、シロはふんふんと真面目に聞いている。


「まあそんな感じの遊び、気に入らなかったら遊ばなくてもいいからね」


「やる!」

おっ、刺さったか?

シロは黙々とジグソーパズルを遊んでいる。

途中ホノカがちょっかいを出しに来たが「邪魔」と一蹴されていた。

少し可哀想だがジグソーパズル中に後ろから抱きついた方が悪い。


そして夕飯時、ホノカとシロが風呂に入っている間に何を作ろうか考えていた。


ホノカは見た目に反して一人前しか食べないし、シロは五人前くらいペロリと食べる。

解釈不一致だ、今も納得いってない。


悩んでいると風呂からシロが上がってきた。

あれ?シロって風呂好きだったんじゃなかった?


シロはミルクティーを持ってジグソーパズルを始めた。

風呂より好きなの?思ったよりハマってしまったようだ。ちゃんと寝るよな…この娘。


微妙な物作ると食わない可能性すらあるな…ここはガツンとトンカツにしよう。

困ったら肉!常識だ。


五人前を揚げ終わったタイミングでホノカも風呂から上がってきた。パジャマ代わりのTシャツを来てご機嫌である。


「美味しそうな香り!これなに!」


「これはトンカツって料理だよ、ソースは黒いのをかけてくれ。酒が飲みたいならビールもあるよ。」

迷わずにビールを受け取りグイッと飲み干すホノカ、そしてトンカツを齧ってまたビール。


「くぅ〜、これは堪らないわ!火照った身体にキンキンに冷えたお酒!美味しいトンカツ!そしてその油を流し込むお酒!ねぇシロ!あなたも早く食べましょうよ!」

ホノカは随分気に入ったみたいだ。揚げ物とビールって合うからなぁ。


シロは気になってはいるようだがジグソーパズルを止めそうにない、そんな中毒性ある?僕は苦手だから分からないんだよね。


流石に美味しそうな揚げ物の音とホノカの食レポが気になったらしく、パズルをやめて食卓に着くシロ。


トンカツを一口食べてライスをかき込む。

「美味しい!」

笑った?シロって笑うの?


「シロは心を許すと笑うわよ、良かったわね。ビールおかわり!」

そうなんだ、あとビールは自分で持ってこい。


シロはお酒が苦手らしく、ご飯とトンカツをひたすら食べていた。本当にどこに入るんだろあの小さい体に。


ホノカは酒ならいくらでも入る!と言いながら今は酔い潰れて寝ている。30分くらいしか飲んでないよ?


シロは満足したのか食器を片付けてからジグソーパズルに戻った。食卓を綺麗にして食器洗いまでしてくれる。そこで爆睡してる剣聖とは大違いだな。


僕も眠いので先に休むと言うとシロはもう少しパズルをしてから寝るらしい。


「しっかり寝るんだよー」


「分かった、おやすみ」

少しだけ距離が縮まった気がする、パズルは半分ほど完成していた。


翌朝、昨日おやすみと言った状態のままのシロを見つける。

寝てないの?今日ドラゴン倒すんじゃないの?


「お、おはようシロ、まさか寝てないのか?」


「これ楽しすぎる、一生できる」

ダメだよ勇者パーティーの魔法使いが一生ジグソーパズルやっちゃ。


「おはよぉー、よく寝たわぁ、あのベッド一生寝れるわね」

お前も?勇者パーティーが寝てジグソーパズルだけやってる集団になっちゃうよ?


全員風呂に入って眠気を覚まし、


「今日も飛ばすわよぉ!」

とハンドルを握る勇者、黙々とジグソーパズルをする魔法使い。


僕はヒマなのでステータスを開き次になにをアクティブにしようか悩んでいた。

ビリヤード、麻雀、将棋、娯楽もいいなぁ…


ん?サウナなんてあったっけ?よく見てみるとレベルが上がって選べる物が増えてる。


とりあえずサウナが第一候補だな。なんか新しくでたのはポイントが高い気がする。サウナで50ポイントかぁ…


「あ!いたわよー!ドラゴン発見!あの大砲使っていい!?」

え?ダメだよ?


「ちょちょちょっと待って!まだ見てない!生きてるドラゴンと穴の空いたトカゲの屍骸じゃワクワクの度合いが違いすぎる!!」


僕は操縦席に入って行きモニターを覗き込む。



ふーん…良いよ撃って…


画面には僕が想像してたドラゴンとはかけ離れた大きなトカゲがノソノソと歩いていた。

確かに羽もあるけど退化してる?あれじゃ5センチも飛べないよ…


「撃っていいよ…ちょっと戦ってるところも見たかったんだけど…」

そう言うとホノカは少し考えた後に聖剣を持って梯子を登り始めた。


「しょうがないわね!私の力見せてあげる!」

おお、これは楽しみだ。負ける事はないみたいだし安心して応援でもしていよう。


外に出たホノカは一直線にアースドラゴンに突進し、尻尾を掴んで上にぶん投げた。

アースドラゴンは地面に激突しホノカの方を見る。

こうやって見るとすごいな、まさに勇者、力強い背中を見ているとワクワクするな。


地上では衝突音が響き渡り、ホノカの大剣から繰り出される攻撃でドラゴンはどんどん傷だらけになっていく。


「圧倒的じゃないか、なぁシロ?」

あれ?シロがいない?どこ行ったんだろ。


「うるさいな!集中できない!ヴォルカニックインフェルノ!」

いつの間にか地上に出ていたシロの杖から放たれた魔法はアースドラゴンを包み込み轟音を立てて燃え続けている。

数秒で幾つかの骨を残して消し炭になってしまった。


「次邪魔したら燃やすから」

え?誰に言ったの?まさか勇者様にじゃないよね?


シロさんジグソーパズルの邪魔されてめっちゃ怒ってるな、だめだぞホノカ、うるさくしちゃ。


というかホノカ大丈夫?燃えてない?


「ちょっとシロ!危ないじゃないの!危うく服が焦げちゃうところだったわ!」

あ、大丈夫そう。


「ホノカ大丈夫だった?途中まではすごいカッコよかったよ!」


「くぅ…もう少しでかっこよく勝てたのに…」

本気で悔しがってるな…ドンマイ。


シロのジグソーパズルはもう数ピースで完成するところだ。その最後のピースをはめる瞬間が気持ちいいんだよね。


「シロはまだそのパズルやってるの?あ、もう少しで終わりじゃない!そのくらいなら私でもできそう!」

ホノカはシロのジグソーパズルの最後の3ピースを横からハメてしまった…


「おいバカ!良くそんな酷いことできるなお前…」


「バカって何よ!シロが苦戦していたから助けた。これがチームプレイよ!」

おいお前今のシロの顔見てもチームって言える?


シロは絶望の表情をして完成したパズルを見ている。

こんな結果で誰が幸せになんの?


「ねぇシロ!お風呂行きましょう!戦闘で汚れちゃったし!」


シロはホノカの顔を真っ直ぐに見てこう答えた。

「ヴォルカニックインフェルノ!!」


【地下室での攻撃魔法を確認、危険につき消去しました】

攻撃魔法使うと消されるのか、新発見だな。


シロは魔法が使えないので杖でポカポカとホノカを叩いている。


「痛いってばぁ!なんで怒ってるのぉ!」


え?本当に分からないの?


そんな2人を見て少し羨ましく思ったのは秘密だ。

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