第6話 勇者 模擬戦 タコ焼き

僕はホノカとかいう頭のおかしい勇者に訓練場まで連れてこられてしまった…

ブレイズのメンバーは柵の外から心配そうに見ている。

口出しできないくらい強いの?頭痛くなってきた。


「ほんなら始めよかー、武器は何使うん?まさか素手でなんて言わんやろな?」

いや武器なんて包丁くらいしか握った事ないけど…


「武器なんて持った事ないけど?そもそもマトモに戦ったことも無いよ!」

普段なら敬語を使う僕だがこの勇者は無礼がすぎる。そんな相手に敬意を払うほど僕は人間が出来てないんだ。


「まじで言ってんのかそれ?出し惜しみしてたら死ぬで?」

死ぬで?じゃないよ!死んでたまるかこんなところで。


「じゃあ本気出させたるから覚悟しぃや!」

ホノカは巨大な剣を振り上げて突進してくる、早すぎる!避けれるわけがない!


僕の首に触れた所で刃はピタっと止まった。


「なんや兄ちゃん…出し惜しんで死ぬ気かいな?少し怪我したら本気出してくれるんか?」

なんかイライラしてきたぞ、コイツは自分勝手すぎる!


「じゃあユニークスキル使うけど大丈夫?多分君何も出来ないよ?」


「言うやんけ…ぶっ潰したるからはよ出しぃや!」

知らないからね!泣いたって知らないから!


僕は地下室の入り口を出し中に入って扉を閉めた。


「なんやそれ、結局逃げるんかいな?いや…下におるな…」

僕は下の操縦席からホノカを見上げた。白か…案外普通の下着なんだな…


「おーい!隠れてないで出てこいやぁ!!」

え?何する気?

ホノカの剣には勇者とは思えない禍々しい炎が絡みつき、一直線に僕に向かって振り下ろした。


とんでもない轟音と共に地面は陥没し、僕が居たはずの地面はガッツリ無くなっている。

バカじゃないの?ブレイズのみんな無事!?

見回すともうかなり前から避難していたようだ。もうこの場には僕たち…ともう一人水色の髪の毛の魔法使いがいる。


なんか防御魔法みたいなシールド張ってるから大丈夫なのか?涼しい顔してるし平気なのかな?


「あれ?おかしいなぁ?ここにおったと思ったんやけど…」

いたよ!ただここは異空間だから切れないよ!


「おーい、もう降参するかー?」

僕は地下室から顔を出し一応聞いてみる。


「どっから出てくんねん!降参なんかするワケないやろ!まだろくに攻撃もしてへんやないか!舐めとんのか!さっさと攻撃してこいや!」

あ、そうですか…


「じゃあ攻撃するけど、死ぬなよー」

僕は地下室に引っ込み大砲のボタンを押す。

照準は…あの剣でいいか、ホノカ狙ったらシャレならないし。


ホノカは警戒し防御の構えを取っている。

大丈夫かなぁ、まあ勇者だし…最悪怪我したらヒール風呂あるしいいか…


ポチっと


ドゴォォン!

轟音と共に鉄球が発射された。まあ見えないくらいの速度だから多分鉄球としか言えないけど。


「ちょ!なにそれ早すぎ!!!」


大砲はホノカに剣をへし折り、当たった角度が良かったのか空高く登っていった、と思う。

なんせ速くて僕じゃ見えない。


流石に悪い事したかな…剣折っちゃったし…


僕は地下室から出てホノカに近寄る。

「もう良いだろ?剣折れちゃったし」


ホノカはプルプルと震えている、怒ってるよなぁそりゃあ…


「うわぁぁぁああああん!聖剣折られたぁ!もうヤダぁああ!シロぉぉお、聖剣折られちゃったよぉお!」


え?いやごめんって!そんな泣く事ないじゃん!だって出し惜しみすんなって…いや!ごめんじゃん!


ホノカは子供のように泣きじゃくっている。さっきまで防御魔法を張っていた少女がいつの間にか近くにおり、よしよしと撫でている。


10分後、ほのかは目を真っ赤にしているが落ち着いたようだ。良かったな観客いなくて。


「責任とってよね!聖剣なきゃ魔王倒せないじゃん!」

君さっきまで喋ってたエセ関西弁はどうしたの?


「ホノカは強そうに見えるという理由からあの言葉遣いをしていた。元々はこっちの喋り方」

シロ?だっけ?静かな子だ、ホノカと足して2で割ったら丁度いいかも。


うーん、ステータス画面を確認し、それっぽい項目が無いか探してみる。

これはどうだ。武器再生炉、名前からするに絶対これだろ。

20ポイントか…まあいつかまた使うかも知れないしな…


「直してあげるから付いてきなよ、理由はどうあれ折ったの僕だし。」


「本当!?直せるの!?」

ホノカは笑顔で聞いてくる。

「不可能、聖剣は製造方法が失われている、再生は絶望的」


「いややってみなくちゃ分からないじゃん」

そう言って二人を連れて地下室へ降りる。剣は大きすぎたので回収で地下室に入れた。


武器再生炉は専用の部屋が出来ていた。結構広い、聖剣も入りそうだな。

少し重いが僕でも持てる、剣をセットするとタイマーが作動した。

120分か、結構かかるな。


「120分で完成らしいぞ、良かったな」


「本当!?やったぁ!!」


「有り得ない、喜ぶのはまだ早い」

確かに、シロの言う通りだ。


しかし2時間もかかるのか。

風呂入ってこようかな、なんか埃だらけだし。


「僕は風呂入るけど君らどうする?」


「え?お風呂あんの?入るー」

「お風呂!!!」

シロさんお風呂好きみたいですね。


使い方を簡単に説明し、僕は風呂で汗を流した。

お腹空いたな…

30分ほどで上がったが案の定2人は出てきていない。


軽食でも作るか…僕は温めるだけのたこ焼きを大量に買い、温め続けた。なんかあのエセ関西弁聞いてて食べたかったんだよね。

きっとホノカはすごい食べる、そんな気がする。


1時間もすると2人も上がってきた。


「なにあのお風呂!石鹸もすごく良いし傷も全部治っちゃった!」

ホノカは完全に元気になったな、良かった。


「このお風呂は至高…ここに住もうと思う」

ダメだよ何言ってんの?シロは女の子なんだから。


2人にはメロンソーダを渡し、軽食を作ったと食事に誘った。

「なにこれぇ!美味しすぎるんですけど!!」

「美味しい…お風呂上がりに最適」

メロンソーダって嫌いな人いるのかな?


「何この丸いやつ!イイ匂いしてる!」

「たこ焼きって言うんだけど美味しいから食べてみてよ」


2人は熱がりながらも口に入れ、美味しい美味しいと夢中で食べている。

気に入ったようで良かった。


「ふぅーお腹いっぱい!ありがとう、あと突っかかってごめんなさい…ちょっと調子のってたの…本当にごめんね…」

普通に謝れるじゃないか、根はいい子なんだな…それよりも気になるのだが…


「いやそれはもう良いんだけどさ、もう食べないの?まだ一人前しか食べてなくない?」


「え?一人前なんでしょ?じゃあ十分じゃないの?」

コイツは食わないのかぁ…めっちゃ作っちゃったよ…


「でもシロはいっぱい食べるわよ?多分足りないんじゃない?」

あの小さな身体のどこに!?


ホノカの言う通りそこからたこ焼きを追加して作りまくったのだった。

食べ終わった丁度くらいでピピピっと電子音が鳴り響き、聖剣の修理が完了したようだ。


ホノカは恐る恐る機械を開け、確認すると…


「直ってる!!やったぁ!!」

あんま振り回さないで!!?家具壊れるから!


「有り得ない…けど良かった、この部屋で何が起こってももう驚かない。」

そうしてくれ、またいつでも来いよな。


「じゃあ約束通り魔物討伐にいきましょう!」


ん?約束した?僕が?いつ?

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