第3話 冒険者、カレー、ビール、唐揚げ

「まあカレーだよね」

僕は野菜、牛肉をポイントで交換し、野菜を炒めて肉にも火を通す。

カレールーも交換…本当になんでもあるな…


隠し味などは無し!素人は変にルーに味を加えるな!鉄則だ!


20人前は作ったぞ、流石に足りるだろう。

しかし米も炊けたしカレーもできた…風呂長すぎじゃない?


男湯の様子を見に行ってみると、カムイさんとシルバさんが風呂に浸かって談笑していた。

「あのーご飯出来ましたよー」


「ショウさん!この風呂は最高ですね!こんな綺麗で広い風呂は初めてだ!」

「疲れどころか腰痛も治った気がしますな、これは良いものじゃ」


まあヒール風呂なんでね、多分腰痛治ってるよお爺ちゃん。

そういえば着替えがないじゃないか、ポイントで何か…バスローブ?違うな、浴衣…は着方が独特だ。

パジャマ!これだ!

あと洗濯機も設置しておこう。僕も使うし。


「着替え置いておきますからねー、ゆっくりしたらご飯ですよー」

男性用は甚兵衛か、動きやすくて良いよね。


「何から何まで申し訳ない…護衛はまかせてもらいましょう!」

宜しく頼みますね。


後は女湯か…流石にまだ上がってないよな。

一応ノックして脱衣所に入ると案の定まだ風呂に入っているようだ。


「あのー!着替え置いておきますからねー!」


「ありがとうーショウさん!この風呂最高だよー!」

元気そうで何よりだ。女性用のパジャマはなんか厚手のTシャツとハーフパンツか、なんか地味だな…


四人が風呂から上がるまでまだかかりそうだ、僕はすっかり忘れていた【異世界の歩き方】と書かれたノートを見てみる。

レベルってどうやって上げるんだろ。


『レベルについて』

レベルは魔物を倒すと上がります、その他生産を行う事でもレベルが上がり、稀にスキルを取得します。

異世界人はスキルを授かる確率が少しだけ優遇されてますので頑張って下さい。


「なんで最後だけ投げやりなんだよ…」


魔物って倒せなくない?なんか武器でも無いと…

考え込んでいると四人が風呂から上がってきたのだった。


全員口を揃えて最高だったと体から湯気を出している。

カムイさんは一直線にメロンソーダを取りに行くのだが…


「待って下さいカムイさん!風呂上がりのお酒があるんです!メロンソーダはその後でも間に合います!」

僕は全力で阻止する。ビールがあるんだ!ビールが!


カムイさんは少し寂しそうだが飲めば分かるこのキレ、味わい、喉越し!


全員分のビールを注いでジョッキで渡す、さぁ、飲んで下さい!

キンキンに冷えたビールに全員が口を付け、飲み干した。


「くぅ〜!!美味い!火照った体に染み渡るぅ!!」

「これはこれは!今まで飲んだ酒の中でピカイチじゃ!」

「うんめぇえ!もしかしてコレも無限に出るのか?!」

「美味しいですねぇ…苦味が気になりますけど喉を通る感覚がなんとも爽快です」


シンシアさんは苦いの苦手なのかな?

まあ好きな飲み物飲んで疲れを癒してほしい。


「あの、ショウさん?一つお聞きしたいのですが…」

シンシアさんは真剣な表情で僕を見つめた。


「あの、しゃんぷーとりんす、ぼでぃそーぷと言うのはどこで買ったんですか?とんでもない高級品なのは分かります。でもこの髪のサラサラ感!借金してでも買います!」

いやシャンプーの為に借金するんですか?考え直して下さい。


「うーん、あれは僕のユニークスキルで作った物なので売ってはいないんですよ…気に入ったなら持って行っていいですよ?でもあまり人目に付かないところで使ってくださいね。」

なんか評判とかなったら目立っちゃうしね。悪目立ちは避けたい。


シンシアさんは心底嬉しそうに何度も頭を下げた、いやなにもそこまで…


「あとこの服もすげぇよな!上等な生地で出来てるし動きやすい!王都でも売ってないよこんなすげぇ服!」

アカネちゃんはピョンピョン飛び回りながら喜んでいる。胸のあたりが弾むのが気になって仕方ない。


「それも持って行っていいよ、あと汚れた服は洗濯機…うーんと、浴室にあった穴の中に入れておいてね、自動で洗うから。」


「ほう、魔法ですかな?ちと興味があるわい、見せて貰っても?」

シルバ爺さんは新しい魔法だと思っているらしく、全員分の洗濯物を詰め込み、洗濯機はグルグルと回転した。


シルバさんは高度すぎて分からん!と諦めてビールを飲んで寛いでいた。


「あ、ご飯食べましょう、僕は先に食べちゃったんで皆さんどうぞ」

全員の長風呂を待つ間にカレーの誘惑にやられたんだ。しょうがないじゃないか。


カレーをテーブルに置くとみんな顔が強張った。

「ここまで来て疑う訳では無いのだが…いやすまない、ちょっと見た目が個性的というか…」


まあそうですよね、でもそうじゃないんですよ。


「いや言いたい事は分かります、しかし違うんです。まず騙されたと思って食べて下さい。ビール幾らでも飲んで良いので。」


ビールの誘惑に負けたカムイさんが恐る恐る一口食べる、パーティー全員がその様子を伺う。


突如カムイさんはガツガツと食べ始め、一瞬で一皿を食べ切ってしまった。


「お前たちが食わないなら全部俺に寄越せ!これは美味すぎる!」

その言葉を聞き他のメンバーもカレーを口に運び…

ガツガツと食べ始め見事に完食した。


「美味しいでしょう?僕も好きなんですカレーライス」


「ショウさん!おかわりあるの!?」


「あるよ!ライスも置いておくから好きに食べてね、僕はお風呂行ってくるからさ」

あれだけ作れば足りるだろう。僕は浴場に向かう。


ヒール風呂…これは良い…体力が回復していくから長風呂しても良いのか…みんな長い訳だ…

あと鏡で見た僕の顔…転生させたあの女が好みのタイプにしたって言ってたけど…

イケメンすぎる…惚れちゃいそう。


15分ほど浸かり、僕も甚兵衛を来て部屋に戻ると…


なにやってんすか…

カムイさんとアカネちゃんが何やら争っている。

結構ガチだ、ガチめのケンカだ。


「リーダー!もう10皿くらい食べたでしょー!!最後は私だよぉ!!」


「バカを言え!お前の方が一皿多く食べたのを俺は知ってるんだ!命令だ!渡せ!!」

20人前あったのに!?もうないの!?


「あのー、まだ足りないんですか?なんならすぐに何か出しますけど…」


「こ…これは恥ずかしいところを…申し訳ない…俺とアカネは大食いなんだ…食える時に食っておかないと急な敵襲に対応できないから…」


「恥ずかしいけどまだまだ足りないんだよねぇ…なんかごめんなさい…」

二人共シュンとしている…いやまあ温めるだけの何か出すよ、大量にね。


僕はキッチンに移動し、ステータス画面で食材を見る、揚げるだけの唐揚げか、コレで良いかな。もしかして僕の記憶を元に食材が出てきているのか?このパッケージ見た事あるぞ。


唐揚げを…3、いや、5キロいこう、油を温めどんどん投入していく。

カムイさんとアカネちゃん、あれ、シンシアさんとシルバさんも食べるの?


揚げたてをどんどん皿に置いていくが一瞬で無くなる。ビールに合うよね。

途中シンシアさんがこの調理方法に興味があると言ってきたので教えて交代してもらった。


お風呂入ったのに、揚げ物の油が…


5キロの唐揚げを全て平らげ、やっと落ち着いたブレイズのメンバーはソファに座り寛いでいる。


色々話を聞きたいんだけど…僕はもう眠くて…

今日は疲れたので先に休みますと伝えて僕はベッドに潜り眠りについた。


そして僕が寝た後…


「なぁ、ショウさんの事どう思う?」


「いや本当にすごいよねぇ!食べ物も設備も初めての物ばっかりだし!せんたくき?っていうので洗った服とか汚れが完全に落ちて真っ白になってたんだよ!」


「このビール、エールに似ているが似て非なるものじゃ、しかもこの冷え具合、魔法の気配もないんじゃよ。」


「あのお風呂の石鹸達もすごいですわ、見てこの髪、癖っ毛で悩んでいたのがウソのよう、あと鏡見た?全く歪みがないのよ?あんなのどこ行っても買えないわ、しかも全て均一だし!」


「あと顔の割に落ち着いてるっていうか…大人っぽいよな、一見イケメンの青年なんだけど」


「山奥に住んでたって言ってたよな…まさかとは思うが…賢者様だったりは…」


「「「それだ!」」」


僕は寝てる間に勝手に賢者になったようだ。

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