呪文

天川裕司

呪文

タイトル:呪文


「え?!キミ呪文使えるの?」

友達「ああ、使えるよ。例えば君が今怪我してるその右手、治してあげようか?」


私は先日、派手に転んで、右手に怪我をしていた。


「え?…こ、これ?」

友達「ホイミ♪」


友達がどこかで聞いたような言葉を唱えると…


「え?え??」

怪我の具合はたちまち良くなり、治った…?


「…ウソでしょ…」

友達「他に何か悩み事はない?」


私は最近、悪夢にうなされていた。

毎晩同じような夢を見て、

そこで誰かに追いかけられ、

刃物を持ったそいつに殺されそうになる。


その夢のことを話すと、

友達「…そう。きっと疲れてるんだね。ラリホーマって知ってる?」

これもどこかで聞いたことのある言葉。

いや呪文だ。


「…確か、よく眠らせる呪文?」

友達「そう。でもそれってね、眠らせるだけじゃなくて、安眠を招く効果もあるんだ」

「え?」

友達「つまり今の君のように、悪夢なんかを見てる人にはさ、その悪夢を解消させる効果もあるって事」

「……」

友達「じゃないと、ちゃんとよく眠れないだろ?」

「…ま、まぁ…」


友達「この剣、持って行くと良いよ」

「な、なにこれ??」

友達はどこから出したのか知らないけれど、

おもちゃにしては相当きらびやかな剣を

背中の後ろから出してきた。


そしてそれを私に持たせ、

友達「ラリホーマかけてあげるから、それを持って寝て見るんだ」

友達「で、夢の中にそいつが出てきたら、その剣でなぎ倒してやれば良い。きっと勝てるよ。フフ」

「………」

とりあえず、何も言えない。


でもさっきの怪我が治った効果がある。

それがある以上、心の正直は、

この友達を信じてしまう。

「…じ、じゃぁお願い…」

友達「フフ…ラリホーマ…。キミ1人だけど、効果は充分だろう」

友達がそう言うのを聞いた後、

私は深い眠りについた。


(夢の中)


魔人「グフフ…戻ってきたな?」

「あ、お前…!」

早速、私の前にあいつが現れた。


眠る時に持った剣が、

ちゃんと私の右手に持たされてある。


「…そっか、夢の中に持って入れたんだコレ」

とりあえず理解でき、私はその剣で

今目の前に居るこいつを斬り倒そうとした。

けれど…


魔人「グフフ…そんなもので♪」

「な、なんで…なんでよ!」

持っていた剣は見る見る朽ち果てて、

私の手から消え去った。


魔人「そうかw外で何かされたなお前?」

「…え?」

魔人「おおかた呪文の類いでも見せ付けられて、その気になってここに入ってきたんだろう?」

魔人「呪文とはなかなかwでもしくったな」


「ど、どういうことよ…」


魔人「呪文の成り立ちを考えてみろ」

「…もしかして…」

わかった気がした。


魔人「そう。呪文とは所詮『呪われた言葉』。その効果は相手に対する呪いだけじゃなく、助けようとするその人にもかけられる霊念(りょうねん)の1つ」


「つ…つまり…」

魔人「そうさ。お前は呪われたんだ。そいつに」

魔人「俺がお前のこの夢の中に出てきて居たのも、もしかするとそいつのせいかもなw」


「でも治っ…!」(右手を見せようとして)

魔人「気を緩めてやるのも呪いの手足の1つ、そうは思わなかったか?そのとき思わなくても今思ったね?」


「は…はぁぁ…」

魔人「どれ、料理してやろうか。お前自身が呪文を身に付けておくべきだったな」


(現実)


友達「フフ…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=1HPPk3fZaOo

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呪文 天川裕司 @tenkawayuji

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