　薫の笑い声がやっと収まると、彼女の困惑がさらに深まるのに気づいた。彼女はまだ鼻を守るように手をかざしている。その様子を見て、薫は少しやりすぎたかもしれないと思い直し、喉を軽く鳴らして一歩下がり、首筋を掻いた。

「えっと、悪かったね…いや、その…大丈夫？あれ、あまり熱くなかった？」薫の言葉はぎこちなく転がり出て、自信がすっかり消え去っていた。

　彼女はためらいながら、指先で鼻先をそっと触れ、慎重に確認する。そして首を横に振った。「だ、大丈夫です…ちょっと驚いただけで。」その声は柔らかく、少し震えていた。「あの…小笠原霞です…」

「俺は木漏れ日薫。」一瞬言葉を切り、次に何を言うべきか考えた。「三年生ですよね？それなら、小笠原さんって呼ぶべきだよね。」

　薫は少し落ち着かない様子で手を動かしながら、次に何を話すべきか悩んでいた。彼の視線は再び彼女のカメラに向かい、彼女がしっかりと握りしめているのを目にする。そして、祭りの下の方や空の上の方を見つめて、別の瞬間を捉えようとしているようだった。

「それで…祭りの写真を撮ってるんですか？」薫は人混みの方を漠然と指さしたが、自分の視線は上空へ漂った。

「はい…部活の人たちに頼まれて…」

「ってことは、写真部なんだよね？そんな部活があったの、すっかり忘れてた…」人混みの上の雲の動きを見上げながら一瞬言葉を止める。「綺麗だよね。」

「えっ？」彼の視線を追って空を見上げ、霞がさっき撮ろうとしていた青く輝く光を目にする。小さく頷いた。「ええ…」

　今度は言葉を探すのをやめ、薫はただ彼女の隣で静かに立っていた。祭りの下から聞こえるざわめきを耳にしながら。それは大した会話ではなかったが、それでも構わなかった。もしかしたら、正しい言葉を言うことではなく、同じ空の下に立っているだけで十分なのかもしれない。

　結局、彼が何週間も悩んでいた行動をついに起こしたのだ。その後悔を消し去るために。ただ、今はもうやるべきことがないと感じていた。ある意味では少し物足りなさを感じたが、少なくとも彼女と話せたのだ。

　やがて、薫は彼女の方を見下ろした。そのぎこちない表情と、カメラをいじる仕草に気づく。そして少し考え込むように唸りながら、静けさをそっと破った。「祭り、楽しんでる？」

「えっと…」霞は少し考え込むような顔をして、薫は少し不安になった。この質問をするべきではなかったのかと感じる。彼女の目は答えを探すように地面を見つめていた。「悪くはないかな…」

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