第5話 陽子の世界
墓地販売の待機のバイトの為に煉獄寺の墓所に来たら……
人が倒れているしぃ~
本当になんなのよぉ~
このおばさん、きっと霊能力が高いのね。
あれっ、確かこの人有名な霊能者じゃなかったかな。
これじゃ、また変な噂がたつわねぇ。
誰も周りに居ないわよねぇ~
よいしょっと……
このおばさん重いわぁ~
捨てて来よう……
私は煉獄寺の墓所に倒れている、霊能者のおばさんを担いで、橋立駅近くに捨ててきた、いや置いて来たわぁ。
可哀そうだから、ちゃんと近くの柱に寄りかからせて救急車も呼んであげたのよぉ。
この後はもう知らないわよぉ。
霊障が残ろうが私には何も出来ないから。
だって、私は……別の世界で生きているような物だからね。
全く関われないのよ。
まぁ、もしなにか起きたら自分で解決して貰うしか無いわね。
そのまま墓地に戻って、今日も待機の仕事をしているわ。
煉獄寺には立派な庫裏があって住職さんも住めるし凄く快適な場所なのに……小清水住職は殆ど居ないのよねぇ。
住職なのに法事や行事が無いとお寺に居ない事が多いのよぉ。
まぁ、かなり危ない場所だから仕方ないわよね。
私には関係ないけどね。
立地も良いし価格も安い……霊能力が低い人には最高の墓地よね。
お布施も殆ど無いし、そういうお客様には売れるのよ。
実際に昨日は、お客様が来て3人が予約して帰ったわ。
尤も私の仕事は墓所の予約だけ、石の契約は他の営業さんの仕事なのよぉ。
此処までね私の出来る事は……
まぁ、時間は掛かるけどこの調子なら1年位で完売できるかなぁ。
◆◆◆
「陽子、木を一本斬るだけのアルバイトやらないか?」
部屋で休んでいるとお父さんがこんな事を言い出したのよぉ。
「う~ん、100万円ならいいわぁ~」
どうせ、普通の木じゃないのよね。
お父さんが私に頼むと言う事は呪われた木かなんか何でしょう?
「もう少しまからないか? 親子の仲じゃないか?」
「大体、私い~木なんて斬った事無いわよぉ? それに、普通の木だったら植木屋さんに頼むわよぉね~。うちでするにしても他の社員さんがするわよねぇ」
煉獄寺はあそこを売ったら兄弟寺の増改築を一気に引き受けられる話だし……
きっとこれだって凄い高額なお仕事かなにかよね。
だったら、その位貰ってもいいわよねぇ。
「うっ……それは」
「お父さん正直に言わないなら、この後は幾らくれてもやらないわよぉ~……私は嘘が嫌いなのは知っているわよね」
「解ったよ……実はな」
東京都教文区にある『呪いの神木』かぁ~
都市伝説で聞いた事があるわね。
確か大手ゼネコンが請け負った工事で道路の邪魔になる大きな木を切ろうとしたんだけど、切ろうとした人が次々に不幸になり切る事が出来なかったんだよね。
確か、地元の話では神様が宿っている……そういう話しだったわね。
「それでお父さん、その仕事幾らで受けたの?」
「ううっ8千万……」
8千万の仕事で100万円をけちるのねぇ。
我が親ながらせこいわよ。
「そう、だったら300万円くれないかな? くれないならやらないわぁ」
「陽子、そんな、さっき迄100万円って……」
「神木を切るんでしょう? 安い物じゃない? お父さんこれが最後のチャンスよぉ~嫌ならもうやらないわよぉ~」
8千万円。
恐らく準備に500万も掛からないわよね。
だったら300万円位けちらないで欲しいわね。
「ううっ、解ったよ」
なんで渋々なのかなぁ。
本当に我が父親ながら出し汚いわね。
◆◆◆
「これが教文区の呪いの神木なのねぇ~ さっさと切っちゃおうか? これチェンソーで言われたまま切れば良いの?」
「万が一変な方に倒れても全部、工事会社が責任持つそうだから、自由に切ってよいぞ、下敷きにだけはなるなよ」
凄いな、工事関係の人が沢山来ているわね。
「はぁ~い」
「待て、御神木を切るなんて不届きな事をするな! 祟られるからやめろ」
神主さんかなぁ。
お爺さんが出て来た。
「この木をを切る許可は下りているんだ、邪魔しないでくれ」
なんだか揉めているけど、私には関係ないわねぇ。
この木を切ればそれで良いんだからね……
私は貰った指示の通り木に切り込みを入れた。
うん、ブイチューブで下調べもしたし簡単だわぁね。
あら……
神主みたいなお爺ちゃんが「やめろ―――って叫んでいる」
だけど、気にはならないわ。
何でだろう。
私に木を切るように頼んだ工事会社の人たちが耳を塞ぎながら「やめてくれー」と叫びながら屈んでいるわ。
なにか起きているのかも知れない。
だけど、私は切れば良いのね。
ブルン、ココココ…… ブルン、コココココ…….チュィィィィィ――ン
周りを無視して切り進めたらあっけなく木は切れていき……
メキメキメキッ……
遂に木が倒れたわね。
あれ……しかし、なんで皆気を失っているのかなぁ。
まぁ、私には関係ないわね。
約束通り切った。
それだけだわ。
◆◆◆
「ハァハァ、相変わらずだな陽子は……」
霊能力が低い私でも、あの木の断末魔は聞こえて気を失ってしまったよ。
全ての霊と干渉しない『霊能力 零』
あれなら、どんな事でも恐れる必要は無い。
お互いに関われないんだから。
◆◆◆
今日も陽子は霊に関らない世界で生きていく。
これからも......
FIN
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