第18話 背負わされた責任

「公爵夫人になれないって、どういうことよ!?」


 ダミアンから爵位継承権を失ったことを聞いたイザベラは、怒りを露わにした。原因がダミアンの暴走にあると知ったイザベラは、さらに怒りを募らせる。


「それは、お前がパーティーを上手く仕上げることができなかったから。それで評判を悪くしたからだろう」

「私のせい!? 招待状も持たないでパーティーに突入しようとしたのは、そっちの問題でしょ。それを私のせいにしないでよ」


 二人は責任を押し付け合い、醜い言い争いを繰り広げた。これでは埒が明かないと、ダミアンは話題を変えた。


「とにかく、この事態を解決するためには君の力が必要だ」

「どういうこと?」


 刺々しい態度で聞くイザベラ。そんな彼女にダミアンは告げる。


「次のパーティーを成功させて結果を出せば、今回の件を許してもらえる。そういう話になっている」

「どうして私が、あなたなんかのために頑張らないといけないのよ」


 イザベラはダミアンのために頑張る理由がないと主張し、別の男に乗り換えることを考えていた。これまで頑張ってきたのに、ちょっと成果を出せないくらいで怒られて、侯爵夫人になれる可能性も失ったのであれば、もうダミアンと付き合う必要もないと思った。


 しかし、それは許されなかった。


「このまま何もしなければ、俺達は立場を失ったままだぞ」

「は? 私は、そんなことに付き合うつもりはないわよ」

「残念ながら、逃げることは出来ないぞ。俺の父は、二度目の婚約破棄は許さないと言っていた。君のところのローズウッド家当主も、それを認めたそうだ」

「はぁ?」


 ダミアンは、両家の当主が二度目の婚約破棄を許さないと決めたことを明かした。これに従わないのであれば二人とも処刑されると。イザベラは絶望する。どうして、こんなことになってしまったの。なんで、私が巻き込まれるのよ。




「今は指示に従い、言われたことをやるしかない」


 ダミアンはイザベラの能力に期待を寄せ、彼女だけが頼りだと訴える。


「君の手腕を存分に発揮して、パーティーを成功させれば問題ないだろう」

「そんな、簡単に言って……」

「次は必ず成功させると、秘策があると言っていただろう。それがあれば、大丈夫なんだろう?」


 期待を込めてイザベラの顔を見るダミアン。立場を取り戻すため、頼れるのは彼女だけだった。そんな視線で見られたイザベラは、目を細め、溜息混じりに答える。


「まあ、考えていることはあるけれど」

「それなら、頼む。お前だけが頼りなんだ」


 ダミアンの頼りなさに失望し、彼を選んだことを後悔したイザベラ。かつて姉がダミアンと婚約していた時、イザベラは姉から彼を奪い取った。だが今、こんな男だと知っていたら、そんなことをする必要はなかったと思う。


 もしかしたら、姉はダミアンの本質を知っていたから、婚約破棄を告げられても慌てずに受け入れたのかもしれない。自分は騙されたのだと、イザベラは思った。


 そして、姉への憎悪を深めるイザベラ。知っていたなら教えてほしかったと思う。

姉はパーティーの段取りのことも、婚約相手のことも教えてくれない。


 とにかくイザベラは、パーティーを絶対に成功させることを求められた。やる気はないけれど、やらないといけなくなった。仕方なく、計画を固めていく。

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