第17話 ダミアンの処罰

 ヴィクトリアに会わせてもらえなかったことに怒るダミアンは、兵士たちに拘束されながら歯軋りした。エドワードの邪魔立てに憤慨していた。


「あの男が邪魔をしてくる。どうにかしなければ」


 低い声で呟くダミアンの目は、憎しみに満ちていた。しかし、いくら怒りを感じていても、今は逆らうことはできない。王家の騎士団に連行されることになり、これは面倒な事態になったと悟った。流石に、王家に歯向かえばマズイとは理解しているので、大人しく従うしかなかった。


 タイミングを見て、ハーウッド家に反撃しなければ。この借りは絶対に返してやる。プライドを傷つけられたことへの怒りが、ダミアンの胸の内で渦を巻いていた。いずれ必ず報復してやると、その時を待つしかなかった。


 しばらく拘束されていた部屋の扉が開き、再び兵士に連行される。待っていたのは、厳めしい表情のブラックソーン家当主、ダミアンの父だった。


「父上、これは――」

「馬車に乗れ」

「ッ!」


 それ以外の行動は許さないという威圧的な態度に、ダミアンは息を呑んだ。反論する余地もない父の冷たい眼差しに、従うしかなかった。


 それ以降、父は黙ったままだった。馬車の中は重苦しい緊張感に包まれ、ダミアンは窓の外を見ることしかできなかった。馬蹄の音だけが、不吉な音を立てて響いていた。


 実家に戻ってきたダミアンは、書斎で事情を説明し、父親の理解を得ようとした。すべてを静かに聞く父。ヴィクトリアを取り戻そうとした理由、エドワードの妨害、そして起きた騒動について。きっと理解してくれるはずだと、ダミアンは必死に説明を続けた。


 話を聞き終えたブラックソーン家の当主は、深いため息をつく。そして、重い口を開いた。


「爵位の継承を無効にする」


 耳を疑うダミアン。一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「な、なんですって?」

「だから、お前に爵位の継承はしない」


 父の声には決意が込められていた。覆すことのできない判断だということが、その声音から伝わってくる。


「どうしてですか!?」

「黙れ。あれだけのことをしでかして、処刑されないだけマシだと思え」


 当主の怒鳴り声が書斎に響き渡り、ダミアンは声が出なくなった。怒りのまま部屋を出ていく当主。重厚な扉が大きな音を立てて閉まる。ダミアンは、黙ってそれを見送るしかなかった。


 どうして、こんなことになってしまったのか。生まれた時から約束されていた次期当主の権利を失うだなんて。これから、どうすればいいのか。どうなってしまうのか。


 心の中に疑問が渦巻いていた。次期当主の権利を失ったダミアンは、これからの人生に不安を覚えた。部屋の中で、彼は呆然とする。


 その後、ダミアンはとある役目を命じられることになる。それが一生涯続き、終わりの見えない無意味な人生を送ることになるなんて、この時は予想もしていなかった。栄華を極めるはずだった人生は、一瞬にして暗転していく。

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