　ダミアンは、あちこちでブラックソーン家のパーティーに関して低評価を耳にしていた。ヴィクトリアよりも優秀だと信じていたイザベラに任せたのに、この想定外の結果に激怒していた。貴族たちの間で囁かれる批判的な言葉は、彼のプライドを深く傷つけていた。

「イザベラ！　また失敗か。評判は最悪だし、俺の面目も丸つぶれだ。お前に任せたのは間違いだった」

　ダミアンは、イザベラを呼び出して責めた。

「私は一生懸命やりましたのよ。何度も申し上げておりますが、ダミアン様の協力が足りなかったせいです！」

　イザベラは必死に弁明し、ダミアンの協力不足を責任転嫁した。失敗は自分のせいではないと、いつものように責任逃れを繰り返す。

　ダミアンは、彼女を信じて任せたのに大失敗だったことに不快感を覚えた。そして何より、彼女の言い訳じみた態度に辟易していた。これ以上は、彼女を信じるべきではないと思った。

　そのうえ、ダミアンを不愉快にさせていたのは、離れていったヴィクトリアの評判の高さだった。どうやら彼女の段取りにより、パーティーを何度も成功させているという。各所から聞こえてくる称賛の声が、彼の後悔の念をさらに深めていく。

　ダミアンは、ヴィクトリアを手放すべきではなかったと痛感していた。あの判断は、最悪の間違いだった。騙されて、ヴィクトリアよりイザベラを選んでしまうなんて。

　そんな中、イザベラが突然、起死回生のアイデアがあると言ってきた。

「今度こそ、絶対に失敗しないわ。今までにない、最高のパーティーを用意してみせるわ！」

「本当か？」

　自信満々なイザベラの様子に、ダミアンは不審そうな目を向けた。また、いつものように誇大な約束をして失敗するだけだろうと、彼はうんざりしていた。

「だから、私に任せて！」

「もういい。勝手にしろ」

　ダミアンから突き放すように言われて、イザベラは意外にも笑顔を浮かべた。

「もちろん！　私の好きなようにさせてもらうわ」

　そう言って、イザベラは勢いよく部屋を出ていった。

　彼女が去ってから、ダミアンは深いため息を漏らした。投げやりな態度で「勝手にしろ」と言っただけで、正式な許可を出したわけではない。むしろ、これを機にイザベラとの関係を整理できるかもしれないと考えていた。

　そうだ。イザベラが本当に無謀な行動をとったら、これまでの失敗と合わせて全ての責任を押し付けて関係を終わらせればいい。そして、どうにかしてヴィクトリアと再び婚約するしかない。今更ながら、彼女の才能を痛感していた。

　侯爵家の男がヴィクトリアの新しい婚約相手になったと聞いている。だが、それも何とかなるはずだ。公爵家の権力を行使すれば、婚約の撤回も不可能ではない。

　ヴィクトリアの重要性を再確認したダミアンは、まず目の前の問題を片付けることにした。イザベラとの関係の終わらせ方と、ハーウッド侯爵家のエドワードという男からヴィクトリアを取り戻すための方法を、具体的に検討し始める。

　自分の判断ミスから始まった問題だ。だけど、自分は騙されていただけ。悪いのはイザベラだ。そして、あの時簡単に受け入れしまったヴィクトリアにも問題がある。だけど、関係を元通りにすれば、きっと問題は全て解決するだろう。そう思い込んだダミアンは、新たな策略を練り始めたのだった。

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