百合の花よりも可憐な日々ありて

霜花 桔梗

第1話 ファースト・キス

 私は高校の書道部、部長『花崎 麗葉』である。身長は高くショートカットであり、制服は男子のワイシャツにスラックスを履いている。それでも恋愛対象はノーマルのつもりでいたがガールズラブの文字は何時も心の中にあった。


 そして、今の目標は秋の学園祭で飾る書の一品を創作することである。しかし、九月だと言うのに蒸し暑い。


この部室棟にはエアコンが無く扇風機しかない。私は半紙を目の前にして固まっていた。


 うーん、スランプだ。ここは自販機で珈琲を買って飲もう。一階の部室を出ると体育館の隣の自販機に向かう。


『キャー、麗葉様よ』


 体育館の中から黄色い悲鳴が鳴る。一年の女子バレーボールの人達だ。扱いは完全にアイドルである。そこは塩対応せず手を振って歩く。


 そして、私は珈琲を買うと自販機の隣のベンチに座り、この一杯を楽しむ、このベンチは日陰にあり夏の残暑の日々にはうってつけの場所であった。


 その後は珈琲を飲みながら、木漏れ日の先の空を眺めていると……。


「誰だ?」


 後ろから手で目隠しをされる。その手のひらは小さく声からも女子だと確信する。


「はい?」


 私は手をほどいて後ろを見ると、綺麗な見知らぬ女子が立っていた。その容姿は可憐でコスモスの花に例えられた。


「どちら様で???」

「やだな、恋人候補の『元町 かすみ』ですよ」


 なんだ、コアなファンか。時々勘違いしたファンが寄ってくるのだ。そして、甘い匂いが女子から立ち込めていた。


 私は安心して、ふと、警戒心が解けた瞬間です。


 すぅー


 それはファースト・キスであった。


 私の唇は奪われてしまったのだ。重なる唇に表現できない想いが廻り。


「私のファースト・キス……」


 胸はドキドキして、言い知れない感情になった。それは心が奪われた気分であった。


「心が甘い……」


 キスの後の私のセリフは断片的であり胸の高鳴りは凄まじいモノであった。


「甘い、でしょ、でしょ。でも、麗葉様が初めてなのは予想外だな」

「失礼な、私に恋愛経験が無いのは個人の自由だ。それから呼び名は『麗葉』でいい」

「なら『かすみ』と呼んで」


 それは初恋であり、かすみとの恋の始まりであった。

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