第26話

「な!? 私の制御が!?」

 熱で陽炎を纏いながら、炎の天使が宣告する。

「全て滅する!! この場にいる何もかもを、灰燼にしてやるぞ!!!!」

 上がってきた審問兵が襲いかかってくる。しかし、天使は最早制御不能の業炎を放ち、一発で死に至らしめた。

 イレインは戦慄する。明らかにライルが乗りこなせる存在では無い、死神となっているからだ。

「かかれ! 行け! ライルを止めろお!!」

 矢を放つホムンクルス。搭載された拷問具で殴りかかる審問兵。

 天使はそれらを炎で払い落とし、目にも留まらなぬ早業で次々と死を与えていく。

 ホムンクルス達が今度は矢の雨を降らすと、天使は炎の翼を羽ばたかせ、火矢で迎撃する。

 そのまま着弾し、火の苦しみにホムンクルスの一部が身悶えする。

 天使は掌から炎を連続で撃ち続け、兵士のことごとくを活動停止にしていく。

 天使は飛翔し、両手から極太の業炎を放ち、兵士の一団を黒焦げの山へと変える。

「やめろぉ、私のライル。この抵抗をやめろぉ」

 天使は回転し、左右の掌から吹き出し続ける炎で更なる傀儡どもを焼き続ける。


「あ...」

 気づけば逸脱者の手下は全滅し、本体だけが天使の前に存在していた。

「や、やめてライル。私の愛しい人。お願い、命だけは」

「消え失せろ悪魔。お前が存在してたなどと、この世が忘れ果てるまで滅してやる」

 天使は要塞の敷地程に長く、巨大な炎の剣を天に構えると、怪物に向かって振り下ろさんとする。


 お兄ちゃんやめて


 あの時助けた少女の声が頭の中に響く。


 やめて、こんな事しないで

 あなたは間違っている

 この人を殺したって世界は変わらないわ


 大勢の声が天使の頭にごちゃごちゃと叫び続ける。


「浅ましき者め。死ね」

 逸脱者は振り下ろされた炎の光景で、この世から去った。

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