第24話
要塞の重い扉が開かれる。
内部は最早人の活気が無く、正気を無くした人間達がゆっくり、ゆっくりと当てのない動作をしている。
槍をだらしなく構えてほうけながら歩く者、壁に向かって何度も頭を打ち付ける者、テーブルに座り、皿に盛られた腐った何かを緩慢に咀嚼し続ける者もいた。
歩哨を行っていたらしい者がライルと目が合い、ゆっくりと槍を構えて近づいてきた。他の者達も気づき始めゆっくりと近づき始める。
ライルは再び剣を抜き、前に進む為の屍山血河を築く事にした。
要塞内の騒動が静まった頃、ライルはとある部屋の前に辿り着いた。
イレインの居室である。
自身の内から沸き起こる憎悪を押さえつけつつドアを開いた。
はたしてそこには、明らかにおかしくなっている司祭達を侍らせて、席に着いているイレインがいた。
司祭の一人が口をハクハクさせながら、何とか言葉を紡いでいく。
「や、やはり、き、来てくれたぞシスター・イ、イレイン。かか、賭けは、あ、あなたの勝ち、勝ちだぁ」
「ええ、来てくれたわね」
もう一人が口を開く。
「な、ぁ、ならば我々を、か、解放しろ、この事が教会の中央に知られれば、ぁ、ぁ、ぁ、お前は、ひ、ひ、火あぶりにされるぞ」
それが辞世の言葉となったか。抗議した司祭は口から血を流し、こと切れた。
ライルは血塗られた剣を構えた。
「イレイン。魔女め。一体何が目的で俺に付き纏う?」
刺激するな、という司祭達の視線を浴びるが、ライルは剣先に怒気を纏わせる。
イレインは机の上で手を組むと、歌うかの様に口を開いた。
「そうね、あなたもそろそろ説明を受けるべきでしょう。」
「そ、そうだ、お前は一体何者なのだ? 何故、我々司祭と席を並べる事が出来る?」
司祭の一人が疑問を投げかける。イレインはそれをニンマリと見下しながら続ける。
「何を言っているの? そもそも、この第35異端審問部隊を組織したのはこの私。貴方達もただのお付きに過ぎないのよ?」
「一体何の事だ?」
ライルも口を挟む。
「ライル。私はそこいらのシスターでは無いわ。教会内の邪教徒大討伐の動きに乗じて、私は女の武器を駆使して地位を得て、そして手足に出来る一団を手に入れた。ここにいる司祭達も私の情夫。全て私の思うままに動かせたわ」
「そこまでして何が目的だ?」
「ライルには説明してあげる。教会中枢にいる光輝なる聖女の事は知っていて?」
「光輝なる聖女?」
「やはり知らないのね、私の可愛いライル。教会はね、悪魔イブリムが再び世界に闇をもたらす事を恐れているとか言って、一人の女を神輿にしているの。笑えるよね。力があるからと理由付けているけど、女一人に群がっているのが、この世界の法の現実なのよ」
クックッとイレインは笑いを漏らすが、司祭達は凍りついていた。
「私は思ったの。光の御力とかのたまっている女よりも、私の方がよっぽど人を導ける。そのために、ライル。私は貴方のような戦士を持ちたいとずっと思っていた。己自ら試練を受けて力を増す事の出来る存在を。だから、幼少の頃からあなたに目を掛けて、そして祈っていた。より大いなる試練へとお導きくださいと」
「黙れ」
「そして完成したわ。ご褒美は何が良い? 更なる殺し? それとも...」
イレインは胸を強調した。
「私の体で労ってほしいかしら。何晩でも良いわよ?」
「黙れえ!!」
刹那の動き。ライルは周りが反応するよりも速くイレインの前へ踊り出て、首を刎ねた。
絶句する司祭達。ライルは怒りの興奮で肩を上下させている。
「クフフ、アハハハハハハハ! ハハハハハハハハハハハハハハ!!」
首を刎ねたにも拘わらず、イレインの笑い声が部屋中に響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます