神狼物語【中編】

清水朝基

宵の語り

 ――さて、今宵は、常とは異なる話をしよう。

 まだ、高天原たかまのはらの神々が、豊葦原中国とよあしはらのなかつくにと深く関わっていらっしゃった頃、それは美しく聡明な皇子みこ様がおわした。名を青星あおぼし様と仰られて、その通り、珍しい冴えたはなだいろの眼をお持ちでいらっしゃった。

 皇子様らしい白銀の毛並みもさることながら、眉目秀麗で文武両道、素晴らしい御心映えで、お慕い申し上げない者はいないほど、大層優れた御方だったそうな。

 お前も、神呼帝じんこていと聞けば、わかるであろう。――そう、あの天康てんこう大水おおみずを治めた、偉大な天子様だ。

 しかし、これには隠された話がある。悲しく哀れな恋の物語が――。

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