私とわたし

美月つみき

朝6時に目覚まし時計がなった。

昨夜は残業があって、帰ってきたのは23時。

すぐにお風呂と買ってきたカップラーメンを食べて寝てしまった。

やりたいことも趣味もない。

ただ職場と自宅を行き来するロボットのような生活だ。

洗面所の鏡に映る顔は隈と正気のない目をしていた。

顔を洗う作業が1番嫌いだ。

1日が始まるのを認識する瞬間だからだ。

深いため息は排水溝に水と共に流れていく。

食欲のない朝は、昨日買った安いヨーグルトと誰かが朝に食べるといいと勧めてくれたバナナ。

これで昼まで持つとは到底思えないが、朝なんてこんなもんだ。

食器をそのままシンクに放置して、シャワーを浴びる。

すると水に流されるようにさっきまでのどんよりした私はどこか遠くに行って、わたしが生まれる。

わたしの目にさっきまでなかったハイライトが入り、頑張るぞ!とるんるん気分で支度を始める。

髪を巻き、さっきまでとは違う顔を作ってスーツを着る。

準備万端なわたしは、いってきますと言うと

職場に向かった。

同じ自分のはずなのに、毎日私はどこか遠くからそれを眺めている。

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私とわたし 美月つみき @tsumiki_8

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