お嫁さんと義弟くん。
@NatsunoMarin
出会い
第1話
俊介くんに初めて会ったのは、結婚前、夫のご両親に挨拶に行ったときだった。
「美由紀ごめん、親に会うだけでも緊張しているだろうに悪いんだけど、弟もちょうど実家に帰っているから一目会いたいってうるさくて。紹介させてくれる? 仲は良いし結婚のこともめちゃくちゃ喜んでくれていたからさ」
「圭介さんの弟さん? うん、もちろん。私も家族になるんだもの。ちゃんと挨拶しておきたいな」
夫になる圭介さんが申し訳なさそうにお願いしてくるものだから、私は二つ返事で頷いた。
初めて踏み入れた藤間家は、とても温かい家庭で。彼のご両親は心から喜んで私を迎え入れてくれて、挨拶はつつがなく済んだ。談笑して彼の子どもの頃の話なんかを聞いていたら、カチャ、と遠慮がちに居間のドアが開く。
「……こんにちは!」
振り向くと、満面の笑みの男性が立っていた。最初に何を思ったかって、まあそっくりな兄弟だこと。
「兄ちゃん、挨拶終わった……?」
「おー、終わったから俊にも紹介するわ」
はっとして椅子から立ち上がる。
「わあ、良いんです良いんです! 座っていて! 初めまして、次男の藤間俊介といいまーす!」
「は、初めまして……! 美由紀と申します! 圭介さんと、この度け、結婚させていただくことになり……! ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、言っていただければ精一杯改善しますのでどうかよろしくお願いします」
「そんな! 俺には堅苦しくならないで大丈夫です。こちらこそよろしくお願いしまーす! 俺、今日会えるの超楽しみにしていて。兄ちゃんからすっごく良い人だって聞いていたから! それに……すっごくきれーな人! 兄ちゃんまじ良かったね! おめでと!」
黒々とした大きな目を輝かせて見つめられてぱちくりと瞬いていたら、俊介、と名乗ったその人はぴょーんと圭介さんの元に飛んでいって、ぺしぺしと背中に縋り付いていた。
圭介さんは呆れ顔ながらも嬉しそうにしている。
「ごめんなあ一気にうるさくて。びっくりするでしょ。俊は藤間家一賑やかなの」
うん、それは思っていた。
圭介さんはもっと物静かだから、テンションとか発言量が全然違う。外見はそっくりだけど性格はまた別なんだなあ。
「ううん。賑やかなの楽しいです。ずっと一人だったから」
「おっ! でしょー?! 藤間家に来たら毎日すっごく賑やかにしてあげますからね! もうごはんの時とか爆笑だから!」
「お前はこれ以上うるさくなんなくていいしそもそも普段は一緒に住んでないだろうが!」
えへへへ! と突っ込んでくれた兄を見て悪戯っぽく笑う姿に心から笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます