第9話
二十年後ーー。
結婚してあたしも一児の母になった。
自分の母と同じように、夏になるとこの港町に帰る。
祖父母はもう亡くなったけれど、家をあたしに遺してくれた。
「ママーーッ」
「はーい」
「海に行こう!!」
「はいはい」
元気な娘は今年で十歳になる。
やっぱり親子でこの子も海が大好きだ。
名前は凪。
あの日ー。
一人で歩いた道を娘と手を繋いで歩く。
「凪」
「うん?」
「パパには内緒よ」
「内緒?」
「ここはね、ママが初恋の人と出会った大切な場所なんだよ」
「えーーーっ!?」
目を真ん丸くして驚く愛娘にあたしは笑う。
見てる?太洋。
あたし、今幸せだよーー。
あなたが願ってくれたから。
あなたとの恋は、叶う前に終わったけれど。
苦しいとき、悲しいとき。
いつもあなたとの思い出が明るく輝き道を照らしてくれた。
ありがとう。
一際強い風が吹き、あたしと凪は目を瞑ってやり過ごす。
そして目を開けた先には
キラキラと太陽の光を受けて青く澄んで輝く海があった。
“海ーーっ”
恋でした。❲完❳
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