第2話

あたしの母は田舎の小さな港町で生まれ育った。



海が綺麗な町で、海が大好きな母は娘のあたしに



“海”



と名付けるほど。



でも結婚して住んでる場所は海なし県。



海開きになると、母はあたしを連れて里帰り。



海を思う存分堪能して帰るのだ。



お祖父ちゃん、お祖母ちゃんと会えるのも楽しみだけど……。



もう一つあたしには楽しみがあった。



祖父母の家の隣に住む同い年の友達と遊ぶこと。




『お前、海って名前なのかっ!おれは、入江太洋(いりえ たいよう)!!俺の名前も海なんだぜっ』



『太陽なのに?』



『そっちじゃねぇ!!たいったいっ……母ちゃん!!なんだっけ!?』



『太平洋』



『それそれっ!!太平洋からとったんだ!!』



『太平洋??』




これが5歳だったあたしと太洋との出会い。



これからあたし達は10年以上、一年に一回の夏を共にすることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る