神通力上昇中
唯響(いおん)
第一話 蘭陵王
君は、
そういって説明をするのは、部活の顧問だった。部室の中で数名の生徒が見守る中、顧問は一人の冴えない生徒に、説教をしていた。
世にも珍しい
「次の大会での、陵王役は
顧問がそういうと、生徒中の目が、
なにも聞こえはしない。だが、確かにその言葉を理解できた。
「アイツ、やっぱ凄ぇな」
「
「てかなんでアイツ、
「前に聞いたら直感だってさ。耳も聞こえないのにな」
羨望の眼差しの中に、確かな差別が含まれていた。なん人かは、
顧問が
誰もが真剣に取り組んでいる訳では無い。だから、巨大な
だからこそ彼は、真に価値のある人間になろうと、日々ぶつけられる下らない差別の悪意にも負けずに、自分の役目を真面目にこなそうと努力し続けていた。
部室を出た時、友人の
「放課後は暇か? たまには遊びに行かないか」
「今日は部室に残って舞の練習をするよ。大会も近いしね。でもまた飲みたいなぁあの抹茶。品川にもあんなに美味しいお店があるなんて、思わなかったよ」
「そうだなぁ。でもいつかは、新宿とか代官山、渋谷にも行ってみてぇよなぁ」
「そんなの両親が許さないよ。そういう所は、僕たちみたいな名家の人間が
「そうだよなぁ。まぁ卒業まであと一年。取り敢えず学生の内は我慢かなぁ。じゃあ
弥勒は「ありがとう」といって、教室へ向かった。取り敢えず鞄を取って、部室へ戻るつもりだった。
教室に戻ると、そこには、クラスメイトの
「ジロジロ見やがって、なんか用かよ
「いや……ごめん。なんでもない。鞄を取りに来ただけだったんだ」
「さっさと取れよ。お前は耳が聞こえない分、目から意識がだだ漏れなんだよ。ジロジロ見られたら、体が痒くなる」
「ごめん……神通力のコントロール、苦手なんだ」
「そうだろうな。普通は日常生活で神通力なんか使わねぇのに、お前はいつも、人と会話をしたり周囲の音を聞く為に、神通力を使っている。常に半分、意識がぶっ飛んでるってことだよな」
「ま、まぁそうだね……」
「なんでそんな中毒者みたいな気持ち悪いやつなんかに……勝てないんだよ俺は……! おい
部室へ戻るのが憂鬱だと思いながらも、鞄を取って、彼の後を追った。
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