第10話

郁と康孝、彩夏の3人は中学1年からの友人同士だ。

野球部のエースで女の子の人気は抜群の康孝。

毎日、野球漬けの日々を過ごしている。

小学校4年生から野球をやり始めたが、中学から一緒の学校になった郁はその頃の事を知らなかった。


彩夏とは同じ小学校だったが、小学校の時はそれほど仲が良かったわけでもなかった。

その3人がどうして仲良くなったかと言うと、キッカケは郁の絵だった。

「ある意味、お前って俺達よりスタミナ強いかもな」

中学1年の7月の夕方、郁がグランド近くにイーゼルを立ててキャンバスに絵を描いているのを見て、康孝が声を掛けて来た。

「そうかな」

「これ、もしかして俺?」

小さくピッチャーの絵が描かれていた。

「うん。フォーム決まってたから」

「そうかなあー。照れるなあ」

康孝は頭を掻きながら笑った。

「素敵な絵だよね。やっぱり、加納君だったんだ。そのピッチャー」

ふと振り向くと彩夏が立っていた。

「そうだって。俺、こんなにカッコいいかな」

「野球をやっている時はね」

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