地味男、異世界に飛ばされる〜どうせなら異世界最強になってやろう〜
雫
序章〜生前〜
第1話 刺殺
「うわぁぁぁ!死ぬ死ぬ死ぬ!」
全力で叫びながら逃げる男。周りも阿鼻叫喚である。
そりゃそうだ。だって今彼らは殺人鬼に追いかけられているのだから。
「(え!?何で?何で追いかけてくる?)」
心の中で全力の疑問をぶつけているのは川上紫音。自他共に認める地味男である。
このかた一度も染めたことのない黒髪、高いとも低いとも言えない背、いいとも悪いとも言えない性格。簡単にいうとその辺にいる男だ。
そんな男が今、こんなことになっている理由を説明するには、まず6時間ほど遡る必要がある。
〜6時間前〜
「おっ!ここが集合場所か!あいつらまだかなぁ?」
彼、川上紫音は親友たちと3人で渋谷にハロウィンに参加しようと約束していた。
「(マジで仮装だらけだな…おっ!悠真みっけ!)」
「ごめんごめん!待たせた?」
そう言って走ってきたのは親友の悠真だった。
「いや、全然。てかすごい人だな…」
「うん…仮装も本格的だねぇ。あっ純いたよ!」
悠真が最後の一人、純を見つけ出した。
「いやぁ〜!すまねぇな…混んでて混んでて…」
彼はすまなそうにこちらにきた。
「いや、俺らも来た所だから。じゃあ行くか!」
紫音の掛け声で3人は群衆の中へと入って行った。そして、事件は起きた。
「悠真!危ねぇ!」
咄嗟に紫音が叫ぶ。彼の目には暴走するトラックが映っていた。
間一髪、悠真はトラックから逃げた。しかし、トラックの運転手は刃物を持って降りてきたのだ。
「(おいおいおい…これやばいんじゃねぇの?)」
しかもそれは一直線に紫音の元へとやってきた。
そして…冒頭のような状況になったのだ。
「あぁぁ!やばい!足が…重い!」
後ろまで奴が来ているのはわかる。しかしもう足が…
グサッ!
「うぁあ…」
咄嗟のことに自分でもびっくりするくらい間抜けな声が出た。
そのまま地面に倒れ込む。背中が熱い、燃えてるみたいだ。
「(人が刺される可能性って…0.01%なんだっけ…くじ運良いわけじゃないのにな…)」
何となく自分が死んでいくのがわかる。
「おい!紫音!死ぬな!」
遠くで二人の声が聞こえる。
「二人ともありがとな…」
最後に口から出たかもわからない言葉を出しながら意識を手放した。
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