心の中

なかむらゆづき

冬が終わること

まだ始まったばかりなのに、冬が終わるのが怖くなった。


春は私を塗り替えて、痛くても、やめてほしくても、強く背中を押してくる。


暖かく私を守るブレザーも、柔らかく膝に触れるスカートも、そうやって押し付けられたのに。


今ではもう、ずっと離れたくないほど大切になった。


それも全部、私以外の誰かのために、私以外の誰かのせいで、抗いようもなく始まって、終わっていくような気がして、怖くなる。


外から、近所の保育園の子どもの声が聞こえた。


友達にお別れの挨拶をしているようだ。


「バイバイ」という、希望の響きに、なんとなく居心地が悪くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る