1日目
第2話
ここはヨーロッパのとある国。【ファイラ】
芸術が盛んなこの街で、その名門校に今日も私は通う。
天気は快晴ーー。
私は自転車に跨り、煉瓦造りの町並みを走る。
「はー、いい気持ち〜!」
いつもの道を通り過ぎていくと、ふわっと香る幸せの匂い。
私は一軒のお店の前で自転車を止めた。
「フランおばさん!おはようございます!」
「あらあら、おはようエレンちゃん」
色とりどりの花が咲くここはフラワーショップ。毎朝ここに来るのが私の日課だ。
「今日もこれから学校?」
「うん」
私は芸術大学に通う女子大生。
ここへは自分の部屋に飾る花やモチーフの参考に良く立ち寄っている。
「今日はどれにしようかな〜」
「おい、邪魔だブス」
「ブ…!!」
私の目の前には大きなダンボール箱を抱えた青年が立っていた。
「もう、カイル!女性に対して失礼よ」
「どこにいるんだよ女性が…って痛ッ!」
コイツの私に対する悪口など、日常茶飯事。
「足踏みやがったなてめぇ!!危なく店の商品落とすところだったろーが!!」
「なによ。お客様に対してその態度を取るカイルがいけないんでしょ」
「お前を今更お客だと思えるか。毎日飽きもせず花を買いに来やがって」
「だってフレアおばさんが造るお花素敵なんだもの」
「まぁ!!エレンちゃん!!」
昔からここは心地が良い。
私には両親がいない。昔不慮の事故で亡くなった。
そんな私は孤児院で育ってきた。その生活は辛いものではなかったが、それでも時々寂しくて、無性に泣きたくなる時があった。
そんな時、孤児院に定期的に花を届けに来ていたフレアおばさんに出会い私は救われのだ。
『お花はね。1人で成長して咲いてるものだけど、実は周りの人達が助け合ったり、支えあったりしてできるものなのよ。だから、エレンちゃんも独りだと思わず、もっと周りに頼って生きていいのよ』
私はその言葉のおかげでここまで生きてくる事が出来た。フレアおばさんにはとても感謝しているのだ。
「エレンちゃん。今日は私からお花をプレゼントするわ」
「えっ?そんないいよ。ちゃんと買ってく」
「いいのよ!私のお花を褒めてくれたお礼よ」
バチッとウインクをして私にお花をくれた。
「そう言って、昨日も『可愛いからプレゼント』って理由付けて渡してただろう」
「だってうちの息子が可愛くないんだから仕方ないでしょ」
「どういう理由だよ…」
カイルは小さい頃からフレアおばさんの仕事を手伝っている。高校を卒業して大学にも行かない所を見ると、ゆくゆくは仕事は引き継ぐのだろう。
「全く、細かい男はモテないわよカイル」
「別にモテたいと思わないから平気だ」
そんな2人のやりとりを聞いているのも本当に楽しい。
「あっ!こんな時間だ、私行かなくちゃ。フレアおばさん、お花をありがとう!!」
「いーえ!いってらっしゃーい」
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