第9話 四家の会合

「すみません、今日は呼ばれてないのにおじゃましてしまって…」

「かまうことないぞ光樹、そもそも今日の会は五家でするはずだったんだ、急に白姫家が来られないと言い出してな、四家ですると今度はうちだけのけ者だと言われかねないから、三家でとりあえずとなったんだ。な、大然」

「ああ、圭氏の言う通りだから、気にすることはないよ」

 五家の一つ白姫家の当主は灯子の兄で、灯子亡き後、すぐに後妻をもらった大然にいい感情を持っていなかった。甥の颯は可愛がってくれているが大然には何かにつけて難癖をつけたり、ごねたりしてじゃまをすることが多かった。

 ズカズカと座敷の上座まできてどかっと座った圭氏けいしとは対照的に所在なさげにする光樹こうきが席につくと深青が興味津々で聞いてきた。

「圭氏様、人間と揉め事とは?」

「おー、うちの若い衆が祭りの準備で会場に木材を運んだら、変な格好した奴らが許可取ってるのか?って言い出して」

「許可もなにも会場は国の敷地じゃないですか」

「そうなんだよ、木材を調達してくれた光樹がたまたま立ち会ってくれててな」

「ええ、圭氏さんが立ち会えないと聞いていたので何かあってはいけないと思いまして」

「いろいろイチャモンつけてきたらしいんだが最期にそいつら一番弱いと思って光樹にケンカをふっかけたんだよ」

「アホですね、そいつら」

「そうなんだよ、まあ、まさか一番強い奴とは思わなかったんだろ」

 木(緑)を操る妖の碧泉家あずみけの当主光樹は、深青よりも十歳ほど年上のはずなのだが甘い顔立ちからか深青よりも若く見える。

「じゃあボッコボコ?光樹さん?」

「深青くんは辛辣だなあ、まあ丁重にお相手したよ」

 光樹は相手を問わず、妖の力を容赦なく使うので有名だ。もとより人間が妖に敵うはずもないのだが光樹なら相手が妖だとしてもボッコボコだろう。

「変な格好って、特権隊だよね?」

「ああ、最近派手にやってるよ。警察が取り締まっても次々増えていくから、取り締まれてないのが現状らしい」

 警察でもないのに悪を取り締まると言って、街を練り歩く人間の集団がいる。警察の制服は紺色なのだが隊の制服は白色で自分達の力は特別な権力だとして特権隊と名乗っている。国に任命されたわけでも警察から依頼されたわけでもなく勝手にやっている集団だ。

「最近は特権隊の被害も出ててな、チンピラまがいの言いがかり、暴力、恐喝と、たちが悪い」

「祭りにも出張でばってくるだろうな」

「警戒が必要ってことですね」

「おお、今回は自警団的なものを考えてはいるが派手にするのはなあ」

「目立たないように各場所に監視つけたほうがいいですね」

「腕の立つ者を置くのはいいが、まやかしが絡むと簡単にはいかないだろ」

「そこですよね、ほんとなんですか?まやかしが特権隊と関わってるって」

「そこについては俺も大然も調べてるところだ、まだ確定じゃないからなんとも言えないが…はっきりしたら、五家を集めて対策を考えないとな」

 真顔の圭氏と大然に、事の重大さを感じて深青も光樹も黙ってしまった。

 


 

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