三日馬村に訪れた3人の若者#1
神楽崎が失踪して早2週間が経過した。
彼からの音沙汰はなく、しばらく経ったのち、
ある通達が『超常現象の館』
のもとにやってきた。
それは記載されているメールアドレスで
添付されたものではなく、
茶封筒の中にビデオテープが忍ばされていた。
神楽崎の部下『有田』はそのテープの中身を
確認するために辺りを見回す。
たしか、プレイヤーがあったはず。
積まれたさまざまな資料や
雑誌が邪魔で仕方がない。
「おい、有田、まだ連絡は取れないか?」
手を動かしながら編集担当の『石井』が
声をかけてきた。
「はい。まだ連絡は取れてないんです」
「もう2週間か?」
「明日で2週間です」
「神楽崎はあの場所に行ったのか、
それが分かればまた違う」
「この送られてきたテープの中身、
答えに近づくと思います」
「そこにあるだろ」
しばらく手探りでプレイヤーを探していたのを見ていたのか石井が指を刺して言った。
反対方向の壁沿いに
プレイヤーが置かれていた。
「井の中 蛙、行方不明ってネットでも
見る様になりましたね」
「度々見るよな、井の中 蛙関連の記事」
「ニュースほどになってしまいましたね」
それを準備支度し始めると、石井が言った。
「なんだよこれ」
彼はその茶封筒の中身を確認するため、
上からのぞいていた。
「髪の毛だよ、長い髪の毛」
声にならない声を出す。
それは腹痛に苦しむ様な声で。
その割には髪を一掴みにして袋から出した。
一本二本の数ではない、その数数十。
「気持ち悪」
「よく掴めますね」
慄く様な声で言う。
その感触を確かめた彼は低い声を出した。
「なんか濡れてる」
茶封筒を思い出した。
確か裏表何も書いていない。
と言うことは何者かが届けにきたということ
だろうか。
その長さは肩下ほどであろうか。
彼が白い机にその髪を添える様に並べた。
「気持ち悪いですね」
有田は少し声を震わせて言う。
「匂いもする」彼はその鼻を
近づけながら言った。
「生臭え」
「そんな嗅がないほうがいいですよ」
「これがある種の呪いだとしたら?」
彼は急にそんなことを言う。
「一種の呪い?」
「呪いを相手にかける時、相手の体の一部を使うといいらしい」
「聞いたことあります」
「そう、その理屈が通じるのなら、
これは我々に対する呪いだ」
その言葉を聞きながら私は
ビデオカセットをセットした。
「おいおい、何が始まるんか」
その掠れた様な音と共に何かが始まる。
入力を変えて黒い場面からうすらうすらと
その全貌が明らかになろうとしている。
こんな映像が流れ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます