マイフレンズ《記憶喪失の猫の冒険譚》

最悪な贈り物

第1話 目覚め

空を見上げながら言った。


「おれ、何してたんだっけ?」


森の中、一ヶ所だけ丘になっている部分があった。


そこには大きな大樹の下に緑のパーカーを着ている猫の姿があった。


「起きたら、目の前に青い空があって、それを眺めていたんだ。」


遠くの方から声が聞こえた。


「…ミー!ユミー!」


声はだんだんと近づいてきた。


「ユミー!」


耳の先がとんがっていて人間のような体型をした生き物が猫にユミーと言いなが

ら丘を登ってきた。


「ここにいたのか、ユミー!」


猫は自分のことを指差すと、


「あぁ、そうだよ君にいっているんだ。ユミー」


「俺はユミーっていうのか?」


「ああ、そうだよ。もしかして記憶喪失にでもなった?」


「実は君が誰かも、ここがどこかも、今まで何をしてここに来たのかも、よく覚

えていないんだ。」


えぇと言う表情をしながら耳の先がとがった生き物はいった。


「と言うことは、俺は自己紹介なければならないのかな?」


ユミーはなにも言わずに縦に首をふった。


「はぁ、これだから魂入式は嫌なんだよなぁ」


ボソッと独り言を言った。


「いいか!俺の名前はユリ!誇り高きエルフ族なのであーる!!って言ってもわ

かんないか。そんで、君がユミーだ!」


「おれは、ユミー…」


「なんだ?気に入らないか?」


「いや、良い名前だと思ってね。」


ユミーは少し微笑みながら言った。


「それで!おれはナニゾクなんだ!?」


今度はワクワクした目でユリに視線を向けた。


「はは、何族だろうね…」


「えー!?それじゃあ俺が帰るような村はないのかぁ!?」


「ユミーは族がわかればなにをしようとしたんだ?」


「族の村に泊めてもらおうとおもった次第です」


微笑みながらユリは言った。


「じゃあ、俺らの「属」に入らないか?そしたら住める家をやるよ!」


「良いのか?やったー!!」


二人は初めてあったにしてはとてもなかがよくなった。


「あ、そうだ!入るに当たって少しお仕事をしてもらうことになるんだけど良い

かな?」


「え?別に良いけど?」


「それが、どんな仕事でも?」


ユミーはすぐ答えた。


「まあ、住み込みはそんな簡単にはできないか。でも、まあ良いぞ?」


「本当?ありがとー」


森の中に入りしばらく歩いていると…


山に埋め込まれた大きな扉があった。


「なんじゃこりゃあ~」


「これが俺らの属の本拠地だ。」


でかい扉にちかずくと自動で閉ざされた扉が開いた。 


ユリは裏に隠していた、自分の闇を引き出した。


「ここに住むにはルールがあるんだ。」


「ナルホドォ」


「ひとつ目は上下関係は一部を除いて絶対。ふたつ目はここにこのでかい建物が

あることを口外しないことだ。これを守ってほしい。」


「もし破ったらどうすんの?」


「破ったやつを地獄の果てまで追いかけて、殺す。」


「わかったわ、指切りげんまんだ。」


「そしたら入るぞ。」


扉の奥には洞窟が広がっていた。


「ここのルートは身分が上のやつしかわからないから、基本は目をつぶって案内

するんだが、今回はいい。」


「何でだ?」


「そうだな、何でだろうな?」


そして、何か触れてはいけないようなオーラを放っていたのでそれから二人はあ

まりしゃべらなかった。


しばらくすると、広い空間にでた。


「ついたぞー」


その一言を言うとオーラはどこかに消えた。


空間の奥には手をかざすような所があった。


「ここに手をかざすと基地に行けるんだ。やってみ?」


ユミーはおそるおそる手をかざした。


「うおおおおおおお!?」


ユミーはどこかに消えてしまった。



ユミーが目をあけると、白と緑が広がっていた。そこにはいろんな生き物がい

た、頭に耳が生えている人間のようなやつや、プルプルとした頭の先がとんがって

いる青い色をした、生き物などとにかく色々だ。


「すげえ」


ユリの手がユミーの肩をつかんだ。


「生まれて初めてだろ?こんなに人がいるのは。ようこそ!アースグレイ

へ!!」


どうやらユミー達の居るところは広場らしく見渡しただけでもすぐに向こうの壁

に行くことはできなさそうだ。そして、上を見上げると空があった。


「あれはなんだ?」


上を指差しながら言った。


「あれは空を模したものだよ。」


「へー」


そんな中、広場に一つのアナウンスがあった。


「「ユリさま、ミャンさま、エルマさま、クルタさま会議室へお越しくださ

い。」」


「おっと、呼び出しだ。この紙に書いてある通りに進めばお前の部屋に着くか

ら、はいこれ鍵だ。」


そう言うと小さいキューブと紙をわたした。


「キューブはボタンを押せば皮膚のなかに埋め込まれるから、じゃ!」


そう言うとユリはこの場をあとにした。


「ボタン?どこだ?」


ユミーはキューブをいじっているとカチッっと音がした。そしてユミーの手のな

かに潜っていった。


「あ?まあいいか。」


紙に書いてある通りの場所に言った。


そこにはさっきと同じような手をかざすのがあったのでそれを使い、少しの不安も抱えながらもワープした。


一方でユリはと言うと…


暗く真ん中に机がある部屋にいた。会議室らしい。


ユリは一人立たされており机を囲むように7人の色んな族の人が椅子に座ってい

た。


「で?ユリ、どういう魂胆だ?よそ者を連れてくるとは。」


「だから、言ったじゃないですか?新人のユミーだと。」


「だが、そいつは今度の新人試験で受かったらの話では?」


「まだ、その話ですか?言ったじゃないでか、僕の推薦だって、あと6人ももうち

ょっとで到着するんで推薦なら試験はなくていいですよね?」


「いいかユリよ、この我々の組織アースグレイはこの星の治安を守るのだぞ?少

しのことで、この星が壊滅するかもしれないのに。」


「大丈夫ですよ。何せ彼らとは古い友達なんでね。それに今はあの家に居ますか

ら。」


「確か絶対的な防衛の家か。」


「そうです。なので大丈夫ですよ」


「だが、なぜ一人だけ先に来ているんだ?まさか、侵入者ではないだろうな?」


「なんのことですか?」


「今日未明にアースグレイが管理している土地の魔術のバリアが破られたらしい

ですよ」


「エルマさん」


「この魔術の天才で、あのバリアの産みの親である私から言わせれば、あれはそ

う簡単には壊せないし解くこともできない。触れただけでも普通の生物なら核が

はち切れて死ぬはずなんだけど。」


「となるとお前がつれてきたのは化け物な訳だが何か言うことはあるか?」


「だから、彼らは僕の古い友達なんで、それにもし、問題を起こしてもあなた達

が対処すればいいじゃないですか。何せ人員が6万人も居るなかの組織の幹部なん

ですから、充分化け物じゃないですか。」


「まあ、今回のことは保留にしよう。ユリはユミーの監視係に命ずる」


「わかりました。」


「しかし、あいつは何なんだ?」


「んな!?」


「どうした?」


「今回バリアが破壊された辺りから放射線が検知されたようです…」


「何だって?」


「あそこに秘密捜査官を要請しろ!徹底的に調べろ!」


「あいつは何なんだ…」


「きっと、この世界を揺るがすような何かなんじゃないでしょうか。」


「なら、いい考えがある。ユリの推薦したやつらには試験として魔王サタンの取

り立てをしてもらおうじゃないか。あやつはそう簡単には動こうとはしないから

な。」


「いい考えだ」


「危険な人物はさっと対処してもらおう!」


「決まりだ。ユリの推薦者の試験は魔王サタンの取り立てで決まりだ!」


この物語はユミーが、いやユミー達が混沌の世から世界を造り出す物語だ。

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