切実な果樹園

第1話

まだ君は

あの頃に居るのだろうか

誰かと笑ってしまっているのだろうか

世界の全てが二人の全てに見えて

そのつじつま合わせに

誰かの声を借りて

生きていた

やがて飲まれて

やがて君の声を忘れて

随分と遠くへきた

まるで実っているのは

君の植えた木ではなくて

誰かが落とした

涙みたいな一粒だった

それでも君はまだどこかで

誰かと一緒に笑っているのだろう

いいさ

いいよ

だめだよ

だめなんだ

さよならの果樹園に

まだ赤い実はなって

その切実に僕はいる

さよなら

実ることのなくなった

庭園で

君の植え気を探している

涙だけを蓄えて

わらっている

ありがとう

さよならだよ

まだまだ生きてはいるよ

君にいつかこの庭園に招きたくて

なんて、当然

あるわけはないのだろうけどね。

赤く色づく季節

まだ僕だけは実ってはいない

なんてね。

赤いね

とても赤いね。

とても青いけど

本当まだとても青いのだけど・・・

いつか

なんて

いつか

なんて

なんてね。。。