クリスマスプレゼント

 助手席に座る彩希は、陽が落ちて暗くなった外の景色をぼんやり眺めていた。朝に比べると窓ガラスに当たる雪の量が格段に増えている。

 彩希は外の雪景色を眺めながら、「ハァー」とため息をついた。

 楽しい一日は、あっという間に終わってしまう。今日はこのままずっと真人といっしょにいたいが、そういうわけにはいかない。

「彩希、今日は楽しかったよ」

 真人がフロントガラスに顔を向けたまま、彩希の肩に手を置いた。

「あたしもすごく楽しかった。真人、今日はありがとう」

 彩希は外の景色から真人の横顔に視線を向けた。

 真人は赤信号で止まった隙に彩希に顔を向けて笑みを浮かべた。

「彩希からもらったクリスマスプレゼント大切にするな」

「うん、あたしも真人からもらったクリスマスプレゼント大切にする」

 信号が青に変わり、真人がブレーキから足を離した。

「また、デートの日に着てきてくれよな」

 真人はフロントガラスに顔を向けたまま言った。

「ねえ、真人」

 彩希は真人の横顔を見つめた。

「なに?」

「初詣もいっしょに行こうよ」

「えっ」

「えっ、じゃないよ。お正月もいっしょに過ごして初詣もいっしょに行こ」

「俺はいいけど、さっき彩希は正月は家族で暮らすって言ってなかったか」

「そう思ってたけど気が変わったの。だから、お願い」

 彩希は真人に向けて両手を合わせた。

「俺はその方が嬉しいけど、お父さんが正月は彩希といっしょに過ごしたがってるんだろ」

「お父さんはバレンタインにチョコレートでもプレゼントするから大丈夫よ」

「わかった。じゃあ、初詣の時に俺のプレゼントしたコートを着てきてくれよ」

「うん、そのつもり。今のコートより真人にプレゼントしてもらったやつの方が断然いいし。今のコートはもういらない」

 真人は赤信号でブレーキを踏んだ。

「じゃあ、今のコートはどうすんの」

 真人は彩希の顔を見て首を傾げた。

「うーん、どうしよっか。捨てるのはもったいないし、お母さんにでもあげようかな」

「そうだな、捨てるよりはその方がいいな」

 真人が後部座席にあるコートに視線を向けた。

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