第21話 side:U 帰宅と実家と
皆さんに聞いていただきたい!
何とか、ほんっと!何とか!首の皮一枚であったけれども、ホテルについてからも風呂も夜も、やらしいことは回避できた!!
・・・まあ、色々と触られたり、キスはガンガンされましたけどね・・・。
ただ、二日に渡って行われたえろえろしい行為は避けられた。
いや、うん。・・・そりゃ、嫌いじゃない。そう、嫌いじゃない。ああいうのだって、嗣にぃとだし。気持ちいいし・・・。ただ、気持ち良すぎて随分と疲れてしまう。体力をつけるべきなんだろうか。そもそも慣れてないのもある。それに加えて嗣にぃが上手すぎるのでは?と思う。触り方だなんだ、と。
とにもかくにも、最後の日は割と平穏に終わった。
そして今は飛行機の中だ。昼過ぎの便で俺たちは帰路に着いていた。
嗣にぃもそれなりに疲れていたのか、座席に座って暫くしたら眠ってしまっていた。俺の片手はそんな嗣にぃにしっかりと繋がれている。
飲み物を配る際にCAさんが俺たちを見て、仲が宜しいですね、と微笑んでいた。
恥ずかしい・・・けど、嬉しさも大きいもので。
そうした時間の後、俺は一人ぼーっと外を見ていた。
結婚式からここ数日を改めて振り返ると、この旅行中、凄まじいほどに嗣にぃと俺の仲は変わったと思う。
ずっと好きだった嗣にぃとキス以上の関係になり、帰宅すれば、恐らくはもっと・・・とは思うが、隣で眠るこの男がどこで正気に戻るかも不安でもあった。
結婚式に新婚旅行ーーそんな非日常から日常に戻るわけだから、静かに狂ったーーと俺は思っているーー嗣にぃの頭が正常に戻ったらと思うと・・・そこが今、一番怖い。急によそよそしくなって、なかったことにされたら・・・俺はきっと立ち直れないのではないだろうか。引き籠りまっしぐらだ。そんな可能性も0%というわけではないだろう。
優秀且つ容姿まで兼ね備えたこの男は、いつでも桐月家の自慢の息子で、俺たち双子の憧れの幼馴染だった。正気に戻る前にどうにかこちらを向けさせたいが、いかんせん恋愛経験皆無の俺だ。どこまで上手くいくのやら・・・帰宅しても、この数日間の続きであればいいけれども・・・。
なんて、若干センチになって機内で過ごしていたのですけれどもね。
全然杞憂だった。引き続き、桐月久嗣さんは狂ってた。ありがとう神様。
飛行機はあっという間に羽田に着いて、これまたあっという間にタクシーで嗣にぃのマンションに着き、玄関を潜って扉が閉まるなり、俺は捉えられてねっとりとキスをされた。
喘ぐ俺を楽しむかのように、ながーく濃ーく、キスは繰り返されて、終わる頃には俺の腰は軽く抜けていて嗣にぃの腕に凭れ掛かっていた。・・・うん、大丈夫だった。俺は色々と大丈夫ではないが。
力の抜けた俺を軽々と抱えてーー男の沽券が徐々に失われていくぅ・・・ーー、嗣にぃが部屋の中に入り、リビングあるソファの上へと俺ごと座る。俺は嗣にぃの腕の中で、顔や首筋に、引き続きキスを受けていた。
「今までと同じうちだけど、ゆうくんが、奥さんがいると違うように感じるね。仕事頑張れちゃうよこれは」
「え、あ、なら嬉しい、かな・・・。俺も勉強頑張るよ・・・っあ、ちょ・・・」
話しながらも繰り返される行為に声が乱れる。嗣にぃの手が服の裾から入ってきて腹や胸を撫でるのを阻止はするが、結局止められていない。
て、か。いいんだな?俺が奥さん役続行でいいんだな?若干混乱しつつも考える。
「一応各自の個室も用意はしているけれど、寝室は一緒に使おうね。ベッドも大きいし。掃除なんかは出勤前に軽くしてるけど、週一で家事代行の人に掃除だけ頼んでいるよ。年末の大掃除とかしないで済むから楽なんだよね。料理は暇があれば作るし、外食にも出てるよ。他はそうだね・・・」
「ね、まって・・・っ・・・手、止めてよっ・・・頭に入ってこないから・・・っ」
説明をされるが、そうしながらも嗣にぃの手が身体の上を弄るので、話だけを聞くことが出来ない。嗣にぃは不満そうに、えー、と声をあげたがいったん、手を止めてくれた。ほんっと、考えてほしい・・・!
「はぁ・・・俺、学生だし、時間が嗣にぃよりもあると思うから、なるべく家事するよ・・・?生活費とかも、どうすればいい?」
一緒に住むにしても、ちゃんと区別するべきところはあるだろう。当面は親に頼むことにはなるが、大学に慣れたらバイトをしようと思っていた。
けれども嗣にぃは、
「あのねぇ、ゆうくんは僕の奥さんなんだよ?だったら生活費なんかは僕が出すべきだと思うし、遠慮はいらないよ。こういうのって人それぞれな考え方ではあるけどね。僕はそうしたい。家事をしてくれるのは、それこそ奥さんみたいで嬉しいけど、まずは自分の生活に慣れることが一番。違う?」
「・・・ん、うん・・・」
言葉の最後と共に、嗣にぃは俺の額に口付けた。
ひえー・・・今のご時世、夫から働けと言われる人も少なくないと、そんな情報も見たことあるのに・・・なんという優良夫よ・・・。料理くらいはなんとかしたいが、俺の料理は嗣にぃか母さんに教えてもらったものばかりだ。つまり腕前としては、目の前の人の方が上。これ、どうやって攻略すればいいんだろうな。
「ああ、でもゆうくんに一つお願いがあるにはあるんだよ?」
思いついたように、嗣にぃが言った。俺は首を傾げる。俺ができることはしていきたい。
「え、何?」
ふふ、と嗣にぃは微笑むといきなりソファの上に俺を押し倒した。
えええええええええええええええええ。
「ちょっ・・・!!なに、して・・・!」
「ゆうくんには少し、体力をつけて欲しいかなぁ。奥さんは夫を癒すのも仕事でしょ?僕は長い時間ゆうくんを可愛がりたいんだよね」
間近に顔を寄せて告げられる。本当、自分の顔の良さを十分に理解してやっているとしか思えない。いやいや、てか、ナニをするために体力つけろってか・・・!おかしいだろ?!俺は顔を背けて、
「ばっかじゃないの・・・!と、とにかく、退いて・・・!・・・っあ!ダメだって!!」
言うと、嗣にぃの止まっていた手がまた動き出して、皮膚の上を移動していく。ダメだダメだ!なし崩しに色々とされる・・・!俺と動く嗣にぃの手で攻防が始まったのだが、嗣にぃの動きが唐突に止まった。ジャケットからスマホを取り出して眉を顰める。安堵の息を吐きながら、それを眺める。なんだろう・・・仕事?とかだろうか?
「タイミング悪いなぁ・・・仕方ない。ゆうくん、うちに行こうか」
嗣にぃがため息まじりに見せられたスマホの画面には、桐月麗華、と表示されていた。
※
俺達が桐月家に着くと、お手伝いさんから応接間に通された。
お手伝いさんが俺のことをあさと思って「若奥様」なんて呼ぶものだから妙にドギマギしてしまう。
それに加えて、麗華さんに話すという大イベントがあるわけで。うう緊張する・・・。勝手知ったる人の家だと言うのに、応接室までの距離がやたらと長く感じた。
途中で嗣にぃが、大丈夫だよ、と背中を撫でくれる。大丈夫だといいけど・・・。
緊張しつつ応接室に入ると、そこにいたのは麗華さんとうちの母さんだった。
ソファの前にあるテーブルにはデザートやサンドイッチが並べられておりーーほぼ母さんの好みだな、あれーーその光景だけを見れば、二人で優雅にお茶会しているように見える。・・・麗華さんが母さんの肩を抱いているけれども。母さんは一つも気にしている様子もない。
「あ、ゆう~お帰りぃ。お母さんへのお土産は?」
「あ、うん。ただいま。あるよ。二人にあるけど・・・母さん、なんで?」
ひらひらと母さんが手を振っている。
というか母さんはなんでここに?俺がハテナを飛ばしていると、隣にいる嗣にぃが、
「昼乃さんにメールをね・・・マンションを出る前にしといたんだ」
と耳打ちしてきた。ああ、なるほど。それでいるのか、母さん。
母さんの隣で麗華さんもにこにこと微笑んでいた。
「ゆうちゃん、旅行は楽しめた?久嗣はちゃんとゆうちゃんのお世話をできたのかしらね?」
名残惜しそうに、母さんの髪に頬ずりした後、立ち上がりながら麗華さんは首を傾げる。
桐月麗華ーー桐月家の家長であり、家業を継いでいる人でもある。女性の割には身長がある人で、パンツスーツで颯爽と歩く姿がとても綺麗なのだ。嗣にぃのお母さんだけあって、顔も異常なほどに整っている。今、この場にいない嗣にぃのお父さんもイケメン甚だしい。上流階級というのは美男美女で構成されてるのかな?と思うほどだ。
しかし・・・なんか、こう・・・改めて見ると、近いな、麗華さんと母さんの二人も。
あまり気にしたこともなかったが・・・というか、麗華さんの行動は傍目から見てみると、嗣にぃと重なる部分があると、この短時間で気付いた。
「久嗣、ちょっと・・・昼乃とゆうちゃんはゆっくりしていてね?ゆうちゃんともお話ししたいから」
俺は言われたことに頷いて、母さんの前に座る。麗華さんは嗣にぃを連れて、部屋の外に出ていった。
話というのは、やはり今回のことだろう。そう思ってそうしたわけではないが、結果的に今の今まで騙していたことになる。うーん、気が重い・・・。
「・・・母さん、もう話してるんだよね?あさのこと」
「うん。お母さん、麗ちゃんに嘘つくの下手だもん。言っちゃった」
出されているクッキーを頬張りながら、軽く母さんは答えた。
軽いことでもないんだけどなぁ・・・。
「麗華さん、なんて・・・?」
「えっとね・・・あさを探してくれるのと、ゆうがどうするのか、って。お母さん分からないから、どうかなぁ、って答えたけど」
母の答えはあまりにも抽象的だ。
あさを探してくれるという情報しか掴めない答えに俺は眉を寄せるしかなかった。
「・・・わ、わからん。もうちょっと詳しくさ・・・」
と俺が言ったところで、ドンっ、と大きな音が外から聞こえてきた。
俺は吃驚してしまい立ち上がったが、母さんはころころと笑っている。
「い、今の音なにっ?!」
「あーあれはね、麗ちゃんの足ドンかな。私はされたことないけど、お父さんとかよくされてたよ。今もたまにされてる。私もあれ、されてみたい」
待って、よくわからないのだけど?!てか、足ドンされたいって何さ?!それに父さんはされてんのかよ?!突っ込みのオンパレードだ。
麗華さんは俺たち双子にも母さんと同様に優しい。ので、そんな面は初めて知った。おたおたとする俺に母さんが、座りなさいよ、と言うので座ったが落ちつかなかった。相変わらず母さんは呑気に菓子を摘んではお茶を飲んでいる。
我が母ながらマイペースだ。あさは絶対に母さん似だと思う・・・。そして俺の気質は間違いなく父さん・・・かなぁ?なんか父さんもアレっちゃアレな気が・・・。
諸々と考えていると、時間が経過していて麗華さんが扉を開けた。
真っ直ぐに母さんの元に行き、隣へと座ってからまた母さんの髪に頬ずりをする。母さんは擽ったそうに笑うばかりだ。
「昼乃、可愛い・・・」
え、本当に・・・凄い既視感なんだけど、この麗華さんの行動。
ここ数日の嗣にぃではなかろうか・・・。俺、されてた気がする・・・。
当たり前のように麗華さんは母さんに対していつもこんな風だったから、目に入ってなかったのかもしれない。
二人をまじまじと見ていたら、嗣にぃが遅れて入ってきて、扉を閉めてから俺の隣に座る。見上げた俺に向かって、大丈夫だよ、と微笑んでから麗華さんを見た。
「麗華さん、話した通りでいいよね?」
嗣にぃが麗華さんに問うと、麗華さんは不満気な表情で嗣にぃを見た。
「もうちょっと状況を見てくれないかしら。・・・はぁ・・・。ねえ、ゆうちゃん」
俺へと顔を向けた麗華さんは打って変わって優しいものだった。
「私、あさちゃんのこともゆうちゃんのことも怒ってないから大丈夫よ?あさちゃんがいなくなったのは久嗣のせいだと思うもの。でもゆうちゃん、本当にいいの?あさちゃんの代わり、だなんて」
心配そうに麗華さんは聞いてきた。
とりあえず、麗華さんが怒ってないことには安堵した。きっと嗣にぃが上手いこと話してくれたのだろう。人間、怒られるかも、と思うとやはり気持ちは萎縮してしまうものだし。俺は麗華さんに向かって頷く。
「俺は大丈夫。嗣にぃ、社会人だし・・・それにあさは俺の姉だし。出来ることはしたいから・・・。助けになるかどうかはわからないけど」
それに好きなのでこの機会に籠絡したいと思ってまして!とは流石に付け加えれなかった。
「ごめんなさい、麗華さん。あさが・・・」
頭を下げて謝ると、麗華さんが額に手を当てて天井を仰ぐ。
え、ちょっと、どうしたの・・・この人・・・。
何秒かそうしてから、顔を下げて、母さんへと抱きついた。
「昼乃!昼乃!見た・・・?!今の・・・!!私たちの子が、可愛い・・・!」
「うんうん、可愛いねぇ。ねえ麗ちゃん、私、お買い物に行きたいなぁ。この前、麗ちゃんに似合いそうなアクセサリー見つけたから、プレゼントしたいな・・・?」
「・・・っ!昼乃・・・っ!ゆうちゃん、ごめんね!私達出かけるから、好きにしていっていいからね・・・!」
出かけるの?!今から?!話し合いはいいのかな、これ。え、大丈夫な感じ?!母さんがいると、いつだってよくわからない終わりになるから本当に困る。麗華さんが怒らないのは母さんのおかげもあるだろうけど・・・。
しかし目の前の二人はそんなこと関係ないらしい。
麗華さんは感動に打ち震えてから、立ち上がる。母さんをエスコートするように手を差し出した。母さんもその手を取って立ち上がった。
「ゆう。久嗣くんに迷惑かけないようにね?久嗣くんも、あまりゆうを甘やかさないでね?お父さんも心配してたから、連絡してあげて。じゃ、麗ちゃん行こっか」
「久嗣、私との約束はちゃんと守ってもらうわよ。守れないときは、わかっているわね?じゃあね、ゆうちゃん」
嗣にぃはひらりと手を振って、俺は頷いた。二人は俺達へとそう言い残して、仲良さげに出ていく。
ろくに話さないまま、話し合いは終わった。まあ、麗華さんが納得しているならいいけれども・・・。嗣にぃのお父さんの方はいいのだろうか。あー・・・わかんね。
扉が閉まると嗣にぃがソファへと凭れ掛かる。
「相変わらずだねぇ・・・あの人・・・昼乃さんが連れ出してくれて良かった」
そして呆れたように苦笑まじりで零した。
え、母さんにそんな機転が利くだろうか・・・ただ自分が行きたかっただけなようにも・・・。それよりも気になることがあって、俺はうーん、と頭を傾げた。
「ねえ、母さんと麗華さんって・・・いつもあんなだった・・・?」
「えぇ・・・?いつもはもっと近いと思うよ。ああ、でもゆうくん達の前では抑え気味だったかもしれないね。一応、周囲は見ている人だから」
「そうなんだ・・・ねえ、嗣にぃ」
俺もソファに凭れ掛かりながら、嗣にぃを見上げる。
嗣にぃは先ほどの麗華さんのように、俺の肩を抱いた。当然のようにするものだから、何も考えないで受け入れたが、ここ他人様の家じゃんね?!とはたと気付いて、少し離れようとしたが、逆に抱き込まれる。おおおふ・・・。
「うん?」
「麗華さんとの約束って、何・・・?」
ああ、と呟いて嗣にぃは思案気に視線だけを動かした。少しして、俺を見るとにっこりと笑う。
「まあ、そのうち話すよ。それに、ゆくゆくはわかる話でもあるし、ね。ところでゆうくん。そろそろ帰ろうか。夕飯の時間も近いし、何か食べて帰る?買って帰ってもいいよ。今日はどちらかにして、夜はゆっくりと過ごそうよ」
どうかな?と繋げられる。
隠されていると言うほどではない約束の内容が気にならないといえば嘘にはなるが、現状で嗣にぃは話す気はないらしい。まあいいか・・・。
嗣にぃの提案に特に反論もないので、俺は頷く。ああ、でも家には寄りたいな。お土産も置いて帰りたいし、身の回りのものも多少は持って行かなければ何もない。
「少し家に寄っていい?ちょっと荷物を持っていきたい」
「大丈夫だよ。お義父さんにも挨拶をしておこうね」
とか言いながらも、嗣にぃは抱き込む手とは反対の手で俺の頭から頬を撫でて顎を取り、自分の方へとあげさせた。おっと?!これ、キスされるやつでしょ?!
「ちょ、嗣にぃ、ここでは・・・っ」
「少しだけ、ね」
「少しって・・・っ・・・んんっ」
慌てる俺なんかものともせず、唇は重なって、嗣にぃの舌が俺のそれを絡め取った。
あーーーーーー、これ、本当にちょっとだろうな?!?!
観念して受け入れた俺に向かって、嗣にぃが微笑みながらキスを深くしたのだった。
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