No.11 お前さん、どっち側?

「いやー無事に終わったな」


「どこがよ!!!」


コージローとリーナは実戦の授業を終え、昼食を食べていた。実戦の結果としては

『勝負がつかない』がほとんどだった。


「あいつらは降参なんてしねぇだろうしどうなるかな、と思ってたがまさか気絶も戦闘不能にもならねえとはな」

コージローはガハハと笑う。


そもそもの魔法の威力が低く、かつ魔障壁に

よってさらに威力が減少される為ノーガードでの殴り合いが成立してしまった。それにより、コロッセオが荒れに荒れ果て、掃除、整備をコージローとリーナの2人だけでやっていたのだ。


「ただジフちゃんとザックくんの勝負は目を張るものがあったわね、とてもクラスDとは思えないくらいに、ねー?ダンテきゅん。」


ニヤニヤしながらダンテに話しかける。


「…クラスAを3年間受け持ってなんの成果も出てない人に言われても何も感じませんよ」

「…ヤな事言うわこいつ、モテないでしょ?」


ピリピリした空気が流れる。しかしお構い無しに弁当を食べるコージロー。最近はずっとこの小競り合いが続いているので周りも反応しない。


「しっかし、教師陣も活気がねえなココは」


元気に喧嘩をしている人間といえばダンテとリーナしかいなかった。しかし他の教員はというと会話も時たまにしか聞こえない程度に大人しかった。


「まぁ僕たちが若すぎる、というのはあると思いますね、皆さん僕達よりずっと先輩なので…」

「20代とか私とダンテ以外いないんじゃなーい?」


コージローが見渡すと、確かに白髪混じりだったり腰が曲がっていたりと高齢化の波が一目で分かる。


「…組織と魚は頭から腐るってか」


コージローの頭をリーナが叩く。


「なんつー事言うのよあんたはぁ!」

「おま、俺のリーゼントが崩れたらどうすんだよ!」


「あンの〜」


覇気のない低い声で話しかけられる。

コージローが後ろを振り向くと長身で猫背のオールバックの男が見下ろしていた。


「ん、お前さん、どこのどいつだい」

「リオハイムの教師のアレク・エンフィールドと言いますぅ〜」


アレクはにこやかに答える。笑うとただでさえ垂れている目がさらに垂れ、声も相まって

なんとも穏やかそうな印象を受ける。


「最年少ですよ、我が教師陣で」

「マジか、てことはお前さんもしかして10代か?」


アレク・エンフィールド。19歳。体格は細身ながら背筋を伸ばせば2mは超えるであろう背丈と紺色のオールバックが特徴的なリオハイム

最年少教師である。


「私達の唯一の後輩よ!あんたもパシリに使いたければ使いなさい!」

「アレク、リーナの言う事は聞かなくて良いですからね」


アレクは苦笑いで反応する。随分と可愛がられている事が伝わってくる。しかしコージローはアレクを見て全く別の印象を受けていた。




(コイツ、相当強いな。)



ダンテを平凡、リーナを秀才として、アレクを例えるなら鬼才。コージローから見るアレクの印象は、まるで抜き身の大刀。コージローを

除く教師陣の中なら間違いなくダントツで

アレクが強いと感じた。


「…俺に用があるじゃないのか?」


「あ、はぁい、教頭がなにやらお話があるよぉで、コージロー先生を呼んで来いってぇ〜」

「なんだよ自分で呼びに来いっての、なぁ

アレク」


これまた苦笑いで反応する。

あまり人の事を悪く言いたくないのか、どっちつかずの笑顔で乗り切った。


「んじゃあな、あんまり乳繰り合うなよお二人さん」

『誰が!!!!』




「…アレはどっち側かね」


コージローは教頭室の扉をノックせずに開ける。

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