魔法と教師と化石の右腕
ソゴウ
No.1 俺を誰だか言ってみろ
魔法学園リオハイム
全国の魔法学園による魔法大会「マジックコンペティ」個人、団体総合共に9年連続最下位。
結果、毎年定員割れ、それに伴う入学者の質の低下、治安の悪化、教師不足、成績の低下、etc。
まさに負のスパイラル。
「文句なしでぶっちぎり最底の学園だな」
男はにこやかにそう言い放つ。リーゼントにサングラス、真っ白な白衣とネクタイを締めていないワイシャツに和柄のジーンズ。
まともな大人には到底見えない風貌だ。
「お願いします」
深々と頭を下げる。真っ黒なスーツに身を包んだ真面目そうな男。
「聞くがお前さん、学園というでっけぇシステムを俺1人で直せると思うかぃ」
「直せると思います」
即断言した。ウソをついている様にもお世辞を言っている様にも見えない、真っ直ぐな眼差しでそう言い切った。
「…マジで言ってる?」
「大真面目に言っています。」
また即断言した。この真面目そうな男は学校とか行った事ないのかと不安になる。
「…俺を誰だか言ってみろ」
「はい?」
「いいから俺を誰だか言ってみろってんだ!!」
余りにも大きすぎる信頼を得てしまっている事に少し焦り気味に言う。
「はい!魔法学最高権威として賢者の称号を持ちながらその粗暴かつ荒い気性から講義や授業依頼や指導依頼が一切無く、最近になってなにを持って賢者を名乗っているんだと巷で囁かれている『コージロー・ムラサキ』さんです!!」
「よぉく分かってんじゃねぇかどっか行けこの野郎!!」
最近みんなからそんな事を言われているのかと今初めて知ったコージローは怒鳴り散らかす。
「お願いします!賢者はおろか、もう全ての上位魔法使いにも断られているんです!コージローさんに断られたら教師が足らず学園が回らなくなってしまうんです!」
「俺最終候補じゃねぇか!!」
あの即断言は信頼からとかではなく、そう言うしかないからという事だったらしい。高い自尊心が徐々に傷つけられていく。
「違うんです!見てほしい生徒がいるんです!」
「あー!他のヤツにも同じ事言ってんだろ!?誰が見るか!!」
「全く魔力がない子がいるんです!」
静寂。
コージローは少し考えた。この世界の人間は基本的に『魔力』は大なり小なり持っている。それが全くないというのはまず聞いた事がない、というよりありえない。物や生物、果てには微生物や空気中にも『魔力』はあるからだ。
『魔力』が無いなんて、死人か化石くらいしか思い当たらない。
「…なんでそれ言って賢者共が放っておいてんだよ」
「門前払いにされましたので」
まさか自分より自尊心が高く性格の悪い魔法使いが多い事に少し驚く。
「…俺がリオハイムの教師になったら、そいつを見れるんだろうな」
「も、もちろんです!!」
「ちなみに聞くが…どこまで行きたい」
「ど、どこと言いますと?」
このまま興味本位で教師になる事も可能だった。ただコージローの性格上、それだけでは絶対に動きたくはなかった。
「マジックコンペティ、どこまで行きてぇか
あんたの口から聞きたい」
「優勝です。」
またまた即断言した。ウソをついている様にも見栄を張っている様にも見えない、真っ直ぐな眼差しでそう言い切った。
「絶対会わせろよ、その化石野郎に」
コージロー・ムラサキの教師生活が始まる。
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