前のエピソード――第45話　完璧じゃないからこそ愛される

人生において、「変わる」ことと「変わらない」ことは、どちらも重要だ。変化は成長の源であり、新しい可能性を広げてくれる。しかし、変わらないことには信念や一貫性という強さがある。どちらを選ぶか、どちらに重点を置くかは、自分が向き合う状況や価値観によるだろう。それでも、どちらも人生を豊かにするためには欠かせない要素だ。

たとえば、新しい環境に飛び込むとき、「変わる勇気」が必要だ。進学、転職、引っ越しなど、新しい一歩を踏み出すには、慣れ親しんだ場所やルーチンを手放す決断が求められる。それは不安や緊張を伴うが、そこにこそ成長の機会がある。変わることを恐れずに前進することで、自分の能力や可能性を広げることができる。

一方で、「変わらない強さ」も同じくらい重要だ。時代が移り変わり、周囲の価値観が変化しても、自分が大切にしているものを守る姿勢は、自分らしさを保つための支えとなる。たとえば、どんな状況でも家族を大切にする、誠実さを忘れない、といった信念を貫くことは、人生の基盤となる。そして、その強さがあるからこそ、変化に翻弄されることなく、自分を見失わずにいられる。

しかし、現実には、「変わるべきか」「変わらずにいるべきか」という葛藤に悩むことが多い。たとえば、長年続けてきた仕事に疑問を感じ、新しい道に進むべきか悩むとき、その選択にはリスクと期待の両方が伴う。変わることで得られる可能性と、変わらないことで得られる安定感。その両方を天秤にかけるのは簡単なことではない。

では、どうすればこの葛藤に向き合い、バランスを取ることができるのだろうか。一つの方法は、「自分にとって何が大切か」を明確にすることだ。変わることで得られるものと、変わらないことで守れるものを整理し、自分の価値観に照らして選択する。たとえば、「挑戦することで成長を感じられる」と思うなら、変化を選ぶのが自然だし、「大切なものを失いたくない」と感じるなら、変わらない選択も正しい。

また、「小さな変化を積み重ねる」ことも有効だ。大きな変化を一度に起こすのではなく、少しずつ新しいことに取り組むことで、変化に対する不安を和らげることができる。同時に、自分の軸となる信念を確認しながら進むことで、変わらずに守りたいものを意識できる。

さらに、「失敗を恐れない」という姿勢も大切だ。変化にはリスクが伴うが、失敗することで新しい学びや経験を得ることができる。一方で、変わらない選択をした場合も、周囲からの期待や批判を恐れる必要はない。自分の選択に自信を持つことで、その選択を正しいものに変える力を持てる。

変わる勇気と変わらない強さ。この二つをどちらか一方ではなく、状況に応じて使い分けることが、より良い人生を築くための鍵だろう。変化を受け入れる柔軟さと、自分らしさを守る強さ。そのバランスを見つけることで、私たちは困難や不確実な未来にも対応し、自分らしい道を歩むことができる。変わることも変わらないことも、自分の選択次第。それを理解することが、人生を豊かにする第一歩なのではないだろうか。