第22話 持続可能性に背を向ける社会
「持続可能性」という言葉が広く使われるようになったのは、地球環境や社会が限界に近づいているからだ。しかし、私たちの社会はその必要性を認識しながらも、真の行動には至っていないように思える。便利さや経済成長を追い求めるあまり、未来の世代への負担を増やしてしまう選択をしているのではないだろうか。
たとえば、環境問題に関しては、多くの人が「エコ」という言葉を耳にしているが、実際の行動は追いついていない。プラスチック削減やリサイクルの取り組みは進んでいるように見えるが、国内でのゴミの焼却や埋め立てが依然として主流だ。一方で、再生可能エネルギーの普及も進んではいるが、その導入ペースは国際的に見ると遅れており、化石燃料への依存から抜け出せていない。
また、食料や水の問題も見過ごされがちだ。日本では食品ロスが年間約600万トンにも上ると言われている一方で、世界の多くの地域では飢餓に苦しむ人々がいる。この矛盾を解消するための具体的な施策はほとんど進んでおらず、消費者としての私たちも、食品ロス削減への取り組みを真剣に考える機会が少ない。
社会全体の持続可能性にも目を向けるべきだ。少子高齢化が進む中で、労働力不足や社会保障の問題が深刻化している。それでも、これらの課題に対して抜本的な解決策は見出されておらず、未来の世代に負担を押し付ける形で現状が続いている。持続可能性とは環境だけでなく、社会全体が持ちこたえられる仕組みを作ることを意味するが、その視点がまだ欠けている。
では、なぜ私たちは持続可能性を後回しにしてしまうのだろうか。一つの理由は、目の前の利益や快適さを優先してしまう心理だ。持続可能な選択肢は、短期的には不便であったり、コストがかかったりすることが多い。そのため、個人や企業が積極的に取り組むモチベーションが生まれにくい。
もう一つの理由は、「自分一人が変わっても意味がない」という無力感だ。特に環境問題では、個人の行動が大きな変化を生むことが難しいと感じることがある。しかし、この考え方が、結果的に社会全体の行動を遅らせている。
では、持続可能性を実現するためには何が必要なのか。一つの解決策は、個人が行動を起こしやすい仕組みを作ることだ。たとえば、プラスチック削減のためにリサイクルが容易な製品を普及させたり、再生可能エネルギーを選びやすい価格設定にしたりすることが考えられる。企業や行政がこうした選択肢を提供することで、個人が自然に持続可能な行動を取れるようになる。
また、教育の役割も重要だ。学校や地域での環境教育を通じて、持続可能な社会を作るために必要な知識やスキルを次世代に伝えることができる。これにより、未来のリーダーたちが責任を持って社会を変える力を育むことができる。
さらに、私たち一人ひとりが「小さな行動」を続けることも大切だ。買い物袋を持参する、食品ロスを減らすために計画的に購入する、必要以上のエネルギーを使わない――こうした日常の積み重ねが、社会全体の意識を変える第一歩となる。
持続可能性に背を向ける社会では、未来を明るく描くことは難しい。しかし、私たちが今、小さな一歩を踏み出すことで、その未来を少しずつ変えていくことができるはずだ。便利さや快適さだけを求めるのではなく、次世代に何を残せるかを考える。それが、私たちが持続可能な社会を作るためにできる最も大切な行動ではないだろうか。
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