第30話 姫様、落ち着いてください
「ど、どういうことだ、リリアンヌ、クラーラ……いつから二人はそんな関係に……!」
「ふふふ。クラーラさんが言っていたでしょう。私が彼女を王宮に招いたと。そこで一緒に暮らすうちに、姉妹のような関係が芽生え、クラーラさんは自然と私を『リリアンヌお姉様』と呼ぶようになったんです」
「違います。お姉様と呼べと強要されたんです。リリアンヌ様、嘘つかないでください」
「はうっ、クラーラさんが私にジト目を! 妹の反抗期! 可愛い!」
駄目だ、こりゃ。
こんなのが王女だなんて、この国は長くないかもね。
「強要はよくないぞ、リリアンヌ。ところでクラーラ……俺が『お兄ちゃんと呼べ』と強要しても呼んでくれないのに、どうしてリリアンヌの強要には応えるんだ!?」
「それはリリアンヌ様が、美人で優しくておっぱいが大きいからです」
「容姿で決まるシステムなのか!? 俺はイケメンなんだろう? だったら!」
「ハロルド様はイケメンで優しいだけなので。リリアンヌ様はそこにおっぱいが加わるので。三つでようやくキモさに抗えるって感じです」
「つ、つまり俺も巨乳になればいいんだな!? 錬金術師にそういう薬を作ってもらおう……!」
「ハロルド様におっぱいがあったら、ますますキモいと思います」
「くそ……だったらいっそ女体化する薬を……」
「そしたらお兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんですね」
「くそぉぉぉぉぉぉォォォォオオオオオッ!」
そんな雄叫び上げるほど悔しがらなくても。
「ハロルド、落ち着いてください。あなたが女性になったら、私はどうすれば……あ、ハロルドより私のほうが一ヶ月ほど早く生まれたんですよね。つまりハロルドが女性になったら妹……はあ、はあ……じゅるり」
姫様、落ち着いてください。
「あの質問なんですけど。ハロルド様とリリアンヌ様の関係こそ、なんなんですか? 呼び捨てにし合ってますし。やたら親しげですし」
リリアンヌ様がハロルド様を呼び捨てにするのは分かる。でもハロルド様がそうするのは普通じゃない。だって相手は王女様なんだから。
「いや、その、あれだ。恋人だ。結婚を前提としたお付き合いをしている。クラーラとの婚約を解消してすぐに新しい相手を作るのはどうかと思わなくもないのだが……」
「うふふ。私たち、情熱的に燃え上がっちゃいましたからね」
「うむ!」
ハロルド様とリリアンヌ様は見つめ合う。熱々だ。ラブラブだ。
「新しい婚約者がいたら、そりゃ私と復縁するわけにいきませんね」
「婚約者、か……そこが難しい話なんだ。俺とリリアンヌは結婚したいと思っている。だが国王陛下が認めてくれなくて……」
ああ、なるほど。
ハロルド様は騎士爵があるから一応、貴族だ。けれど騎士って貴族の一番下っ端だもんね。王女様とは釣り合わないよね。
「だから俺はもっと功績を立てて、高い爵位を得る。そして陛下にリリアンヌとの結婚を認めさせる!」
「ハロルド、素敵です!」
燃え上がってますねぇ。
「そういう関係なら、ハロルド様を女体化させるわけにいきませんね」
「……妹と結婚……臨むところです!」
このお姫様、なんで目に炎を宿しながら叫んでるんだ。むしろ、そっちのほうがいいと言いたげだ。ハロルド様、怯えてるぞ。変態度はリリアンヌ様に軍配が上がるか。
「まあ、お二人がどういう関係になろうと、お二人の自由ですけど。それよりハロルド様。私を実家まで案内してくれませんか? 道が分からなくて……お父様に会いたいのです!」
「そうか。君はずっと寝たきりだったから、王都の道さえ分からないんだな。案内するのは簡単だが、リンフィールド男爵はご不在だぞ。陛下から任務を受け、王都を離れている」
がーん。
やっと会えると思ったのにぃ。
でも我慢しよう。待ってれば会えるんだから。
ああ、ハロルド様とリリアンヌ様に全部お話しできてスッキリした。
私は今日から野生の聖女じゃなく、ただの少女クラーラ・リンフィールドとして生きるぜ。
と、思っていたのに。
次の日。国王陛下から「野生の聖女に会いたい」とお誘いをいただいた。
くぅ……野生の聖女からは逃れられねぇのか。
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