第3話 駄目だ我慢できねぇムシャムシャムシャァァァァァうんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!
幸い、洞窟には食料と水が蓄えられていた。
私はそれで空腹を満たし、疲れがとれてから棍棒で地面に穴を掘り、使用人の死体を埋葬した。
この世界の創世神に祈りを捧げてから、南無阿弥陀仏とも唱える。両方に祈っておけば、どちらかが彼の魂を導いてくれるだろう。
それにしても、病弱で歩くのがやっとだった私が、こんなに動けるなんて。
回復魔法を連続してやったせいで上達し、病気を完全に治してしまったらしい。
ある意味、邪教徒のおかげと言える。
でも、邪教徒の死体は埋葬なんてしてやらねぇ。洞窟から離れたところにポイ捨てだ。
「くくく……勝手に朽ち果てるがいいのです」
次の日、様子を見に行くと、邪教徒は数本の骨だけを残して綺麗に食べられていた。
いい気味だ、と笑ってばかりもいられない。普通の動物なのか魔物なのかは分からないが、この辺りに肉食の動物がいるという証拠だ。
洞窟の周りくらいは探索しておこうと思ったけど、やっぱり大人しくしていたほうがいいみたい……。
なんて悠長なことを言っていられなくなった。
一週間で水も食料も尽きてしまったのである。
食料は数日なら我慢できるけど、水はそうもいかない。川とか泉とか、なにかしら見つけないと死んでしまう。
「う、うぅ……喉渇いた……お腹減った……」
私は集中力を失い、魔物を警戒するのも忘れてフラフラとさまよった。
運良く、泉を発見。
すぐさま顔を突っ込んでガブ飲みする。
美味しい!
水をこんなに美味しいと思ったのは前世を含めても初めて!
空腹こそが最高のスパイスなんて言うけど、乾きはただの水を極上の酒よりも美味くしてくれるのだ。
「あ、ウサギさんも水飲みに来てる。かわいい」
いや待て。あのウサギ、おでこから角が生えてるぞ。あれはもしかして魔物では。
そう思った次の瞬間に、ウサギはとんでもない速度で私に体当たりしていた。
角が腹に深々と刺さる。棍棒が衝撃でどっかに飛んでいった。
「いだだだだだだだっ! でもこのくらいの痛みは日常茶飯事! 病弱少女を舐めないでください! 喰らえ、聖女パンチ!」
ぐしゃあああああああっ!
ウサギの魔物は一撃で挽肉になった。一秒クッキング!
……これって形を整えれば立派なハンバーグになるのでは?
だ、駄目だ。いくらお腹が減っているとはいえ、生肉をそのままムシャムシャするのは……駄目だ我慢できねぇムシャムシャムシャァァァァァうんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!
ごちそうさまでした!
ん? なんだろう? お腹が……お腹が痛い!
もう食中毒発症!?
けれど私には成長した回復魔法がある!
治れ治れ!
治らない!?
もしかしてこれって食中毒とは違う!?
そうだ、思い出した。魔物の肉は人間にとって猛毒だって本に書いてあったんだ。どうせなら食べる前に思い出したかった!
痛い! もはやお腹だけでなく全身が痛い! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅ!
《死亡を確認。自働蘇生を実行します》
死んだ! 死んで生き返った! けど痛い!
自働蘇生って傷は治るけど毒は消えないの!?
ゲームで例えるとHPは全回復するけど状態異常はそのまま系!?
ってことは。
《死亡を確認。自働蘇生を実行します》
毒をどうにかしないと死んでは生き返っての繰り返しになっちゃう!
そして魔力が尽きて蘇生できなくなって死んだままになるんだ!
やだぁっ!
《死亡を確認。自働蘇生を実行します》
解毒じゃ! それしか助かる道はない!
解毒魔法なんて回復魔法の親戚みたいなもののはず。
今の私は聖女だから、きっとできる。
うおおおっ毒よ消えろ!
《『魔法スキル:回復魔法』からの派生で『魔法スキル:解毒魔法』を習得しました》
治った! 解毒成功!
いやぁ、死ぬかと思った。まあ実際に三回も死んだんだけど。
こうして元気になったから三回くらいはノーカンだ。
《『実績:魔物を捕食』を達成しました》
《『スキル:悪食』を習得しました》
《説明。悪食とは、食した魔物の魔力を吸収できるスキルです。ただし同じ種類の魔物を食べるたび、吸収効率が落ちていきます。色々な種類の魔物を食べましょう。また魔物を食べた際、スキルをラーニングすることがあります》
なんかもの凄く便利そうなスキルを覚えたぞ。
言われてみると魔力が増えた気がする。
魔力は多ければ多いほど安心だ。
もっと魔物を食べて魔力を殖やさなきゃ。
あ。
またウサギの魔物を発見。
聖女パンチ!
ムシャムシャムシャ!
美味しい! って痛たたたたたた!?
あれ? 悪食スキルって魔力を吸収できるようになるだけで無毒化はしてくれないの!?
ええい、こうなったら解毒魔法を使いながら食べてやる。
魔物の毒がなんぼのもんじゃい! ワシは聖女じゃい!
「完食です!」
お腹がいっぱいになった。
けれど、魔力はあまり増えた気がしない。
神言の説明の通り、同じ種類を食べ続けるのは効率が悪いらしい。
ほかの魔物を探さなきゃ。
なんかいないかなぁ。
遠くから感じたあの極めて強そうな魔物には、絶対に近づいちゃいけない。でも、それ以外なら慎重に戦えばなんとかなる、はず!
というわけで森をウロウロ。
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