第1話 夢


僕はよく知らない夢を見る。


高い建物が並ぶ世界。車と呼ばれているものに乗り、僕の目の前にいる父親と母親と呼ばれている人達と隣に座っている僕より背の高い女の人が楽しそうに話をしているそんな、日常を最近よく夢に見る。この前は見たことない家の中で話をしていた。


全て知らない記憶のはずなのに全て知っている気もする。そんな、不確定要素の夢をよく見る。


貴族の世界には階級があり、僕の家はそこそこ高い中の上くらいの階級で、親の親の親の……はるか昔の先祖が戦いで功績を残したかなんかでその地位を築き土地を代々受け継いでいるらしい。


そんな凄そうな家系に生まれてしまった僕。

兄と姉が優秀だからといって僕が優秀な訳では無いだろといつも弱音を吐くと怒られるため、今日も逃げることにした。

「あと1時間もすれば終わるか」

なんて呑気な独り言を言いながら今日も埃を被っている物が沢山置いてある離れの倉庫に隠れることにした。兄と姉との仲はいい。どっちも優しくしれくれるしお菓子もくれる、父は厳しい。


【この家に生まれたのだから優秀でなければならない義務がある】


といった説教をしてくる。しかも夕食時に、この家は夕食時はみんなで集まって食べる習慣があり使用人に手間をかけさせないようにするとかなんとかのルールを先代が決めたらしい。その教えを真に受けている父は頭の硬い人だ。


母は僕を産んだ時に亡くなったらしい、赤子の時の記憶が無いので悲しいや寂しいなんて感情は無い。自我が芽生えた時には使用人が付いていたのでその人が母親の代わりだそうだ。

ちなみに、父は複数の女性と関係を持っている。

父曰く

【色んな女性を知り、経験しろその先に道はある】

だそうだ、よく分からない。

なので、話の流れで分かるかもしれないが当然僕と兄と姉は血が繋がっていない。義兄と義姉と呼ばれるらしいが分からないので兄と姉と呼んでいる、本人達もそっちの方が嬉しいそうだ。

父も歳なので僕が1番最後らしい、ホントかどうかは興味が無いのでどうでもいい。

なんて、考えていると稽古担当に見つかってしまった。

「隠れるならもう少し上手く隠れてください?こちらもお金を貰っている以上見つけなければいけませんが貴方のそんなガバガバな制御じゃ生きていくことなんて出来ませんよ。上の2人位の実力をつけてからサボるってことしてください。」

「でも、稽古長いし体痛くなるもん嫌だよ」

「私だって嫌ですよ、こんなガキ相手にしてないで大人の男性早く捕まえて結婚したいですよ。最近同期が……」

話が長くなりそうなのでその場を去ることにした

「…ってことで分かりますか?もう20代も後半に差し掛かりそうなんですよ?結婚相手探さなきゃいけないのに、お兄さん紹介してくれてもいいんですよ?…ってもう居ないし!!」


「あの人顔はいいのに強すぎて相手が逃げちゃうって父さんが言ってたっけな可哀想」

「誰が可哀想ですって?」

「無音で後ろに立つのやめてもらえる?怖いから」

「気配察知が甘い証拠ですよ?」

「あんたが上手すぎるんだよ」

「早く稽古しますよ、来てください」

「えー、逃げれると思ったのに結局これかよ」

「弱音は吐かない、吐くのは二日酔いのゲロか甘い言葉だけにしてください」

「その2つ並べるなよ」

なんて、呑気な会話をしながら僕は持っていた木刀を先生に向けて攻撃を仕掛ける。

「欠伸が出るくらい暇ですね」

「すぐ本気にさせてやるよ」

「え?プロポーズですか?やめてください年下に興味は無いですよ、せめてお金を自分で稼げるようになってからにしてください」

「そんな事一言も言ってねぇーよ!」

案の定素の力じゃ勝てないことは分かりきっていたがここまでかと力の差に軽く絶望しながら、次の手に出ることにした。

「おおお?本気出す気になりました?」

「いつも負けっぱなしじゃ恥なんでね、勝たせてもらうよ」

「いいですね、頑張ってください」

「そんな態度今のうちだぞ」

【固有魔術・我の言を忘れよ・詠唱短縮】

【(自己強化)】【(アンチグラビティ)】

「いつ見ても凄い迫力してますよね」

「…今から行くぞ!」

「はい!どこからでも!」



完敗です。今日も空は青いですね。

「筋はいいんですけどね?なんか足りないというか、なんでそんなに弱いんですか?」

「ハッキリ言うのやめてくれません?先生」

「術式を2つ使える時点で凄いんですけどね、一般の人達は一つ一つ詠唱しないと効果が最大限発揮されないので」

「それは血筋のおかげですけどね固有魔術とかいう生まれつきの能力で自分の力じゃないんで」

「立派な力だと思いますよ?固有魔術が現れるのもごく稀と聞きますし?王家は別としても」

「まあ、後は来週にある適性職を選択することですね。ある程度の強化はされる筈なので」

「先生は剣士とかだっけ?」

「そうですよ、一般職です。下級民なので」

「それ嫌味にしか聞こえないよ?剣士で名を上げてるの歴史上で見ても異例って知ってるよ」

「え?そんな私に興味合っただなんて、聞いてくれれば答えたのに。何から答えます?スリーサイズですか?上から……って逃げようとしてますね」

「話そらす作戦ダメだったか、あと膝枕やめてもらえません?」

「あら?好きだから居るんじゃないですか?」

「気絶させて、目覚めたら毎回膝枕なのやめて欲しいんですけど後離れようとする度に力で押し戻すのもやめてね離れなれないから」

「年頃の男の子はお姉さんの膝枕なんて夢のまた夢でしょうに存分に味わってください」

「話しようね?先生さっきから会話になってない時あるから」

「…まあ、もう時間ですし良いでしょうまた来ますからね次はちゃんと隠れといてくださいね」

「なんで、隠れてる前提なんだよ」

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