Celistical Sky Apocrypha

夏乃あめ

Saffron yellow #fac559

第1話 かく語りき

 セリスの家に来て、あっという間に10日経ったけど、セリスって基本淡々としているのよね。話しかけたら、そこそこ話すけれど、自分から話しかける事はあっても、会話は短いし、命令口調だし、居丈高だし。もっと自然に会話できないのかとワタシは悩んでいた。いわゆるお喋りが殆どない。基本的に悪い人ではないと思うの、研究所の資金繰りの目途もたちそうだし、でもあのドS顔顔から真意を読むことは難しいのよね。そもそも時間の使い方に隙がない。多分、5時前には起きて、朝食を摂った後、しばらく読書。30分くらい経った後には、眼下の森へほぼ自然降下した後、森の中で木々の間をギリギリですり抜けるような飛行魔法と加速魔法を使いながら、下級魔物を見つけるとあっという間に極小の結晶にして、家の前に転送するというのを30分間繰り返し、時間になったら、家に戻り、うず高く積まれた微少な結晶を反重力魔法で空間に浮び上がらせたかと思うと、それらを1つに纏める【再結晶】をして、マスケット銃の球形の弾丸くらいの大きさの暗赤色の魔結晶を作ったかと思うと、無言でユーリに渡し、シャワータイム。その後、自室にこもったり、妖精たちの森に行って、たくさんのハーブや、ネジや鋼板などを何処かへ転送し、金貨を1人ずつに渡していた。そこはワタシの予想だけど、そのお金はセリスが上乗せしたものではないと思う。うまく説明できないけれど、それは妖精たちのプライドを傷つけることになるんじゃないかな。自分達の労働に見合うより対価を正しく受け取る。セリスは案外そういうことキッチリしてそうだし。

 夕方には何処かへ行っては、満足そうな顔をしたり、気難しい顔をして、一体なにをしているのやら。余りにもヒミツが多すぎる、掴みどころのない人だけど、それを暴いていくのも楽しいわね。

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 ヴィーチェと同居して10日、とにかくかしましい。

「部屋にこもる。」

と言って、一人きりになる。私は深呼吸を1つすると、床から伸びる配線が正しく接続されているか確認して、実行キーを押すと同時に完了を意味する無機質な機械音がする。私は深い溜息を吐いた。オクタゴンrfs防壁の突破、記録のコピー、足跡の消去。面倒な処理を同時に行わねばならない事を、軽々と押し付けた陛下には、この報酬かなり高くいただくとしよう。やっている事は犯罪行為だからな。手を汚すなら、自分の手を汚せばいいのに。

「おまえたち、無理をさせた。」

私は地下にいる【彼女ら】に話しかける。当然返事はないが嬉しそうにしているような気がした。あの難攻不落なオクタゴンref防壁を突破した者はいないだろう。そもそもそれをやろうとは思わない。突破さえしてしまえば、後は必要なデータをコピーするだけだが、こんなまどろっこしいやり方ではなく、本人に聞けばいいのにと思ったが、もしこれが机上の空論ではなく、実現可能となれば畑違いの私でもほぼ確実に国が滅ぶことは理解る。とても危険性の高い理論をはいどうぞと簡単に開帳することは到底できない。それをやった時点で危険人物として国から狙われるか、その理論を実行しようとする怪しげな集団に狙われるか。まあ、余程の敵が現れない限り、実装はされないと考えるのが妥当だろう。だが、この理論を公表する訳にはいかない。これはいざという時の切り札にするしかない。さて、依頼主には元より報告するつもりはなかったが。私は目の前のデータをぼんやりと見ながら、思索にふけった。そのうち何故か少しだけ心が痛んだ。嫌われる事には慣れているはずだか、この気持ちは何処からきているのか、自分でも良くわからなかった。

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