豊秋津の風〜とよあきつのかぜ
henopon
1 お腰につけた
「♪桃太郎さん桃太郎さんお腰につけたきび団子一つ私にくださいな」
はい!
「歌わないわよ」
「ノリ悪いですね」
「響くんほど呑気にはなれないの」
平安期、空海が密教の秘伝を日本へと持ち帰るとき、一人の青年に日本へと来るように懇願した。
龍之拳の継承者である。
他からは龍洞拳や龍神拳など呼ばれるが、継承した本人自身イマイチ気にしていない。ただ
密教は大日如来を中心とし、術を使うことで森羅万象を含めた人々の暮らしを守る信仰の一つだ。空海が言うには龍洞拳の拳は体現化した曼荼羅そのものであると。
「あれから二年になるのね」
「きび団子でこき使われました」
夜、二人は大阪中之島の肥後橋界隈を歩いていた。開発計画が進んでいて、解体現場に「鬼」が現れたと通報があるので、高野山に滞在していた僕に応援を求めてきた次第だ。
浜中少尉は戦争でもしてるような格好だが、これくらい装備していたところでも死ぬかもしれない。
「近くで部隊が地獄穴の探索してたんだけど、誰か動いてるみたい」
「誰かとは」
「今の技術ではわからないわ」
別働隊に対してインカムから聞こえたが、浜中少尉は聞いているのかいないのか無視していた。
浜中少尉の前で山田軍曹らが解体現場を覆う防音壁の間を大きなニッパーで切断してこじ開けた。
靴の下で霜柱が割れた。
「軍曹らは待機するように。ここからは二人で入る」
「二人?」と僕。
「一人で行く?」
「それでもいいかな」
「ひどっ。こんなわたしにもプライドがあるのよ」
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