第3話 冷血の女王への憧れ

優里は深いため息をつき、画面に映るランキングを見つめた。己のコミュ障が自分の足を引っ張っていることを悔やむ気持ちがこみ上げてきたが、それでも彼女には変わらない目標があった。


「でも、私には目標があるし」


 ヴァルキリー・フロントのランキング画面には、名だたるチームが名を連ねている。10位から2位までのチームは互いに競り合い、激戦を繰り広げている中で、1位のチームは圧倒的な数字で他を凌駕していた。


GALMガルム…やっぱり私が目指すべき場所はここなんだ」


 対戦数3000試合、そのうちの敗北はわずか4回のみ。勝率99%を誇る「GALM」は、ヴァルフロの運営会社「ヴァルハラ・インダストリーズ」直属のプロゲーマーチームであり、実力も知名度も群を抜いていた。


「しかも、その4敗だって初期の頃だし、負けた相手の主力メンバーを次々と引き抜いて、今の布陣は実質的に無敗状態…」


 優里の目には、絶対に負けられない覚悟を持つ「GALM」がいかにして頂点を築いているか、その戦略と実力が映し出されていた。彼らに勝利を収めようと挑む者は絶えないが、日々、夢破れて消えていく挑戦者たちが後を絶たない。


 優里は拳を握りしめ、画面に映る「GALM」という文字を睨んだ。


「まさに化け物…だけど、私もいつかはあの人みたいに」


 彼女の視線は、チームランキングから個人ランキングへと移った。そこには個人のスコアが並んでおり、そのトップに君臨する一人の名前が表示されていた。


「冷血の女王、Helヘル…」


 ヘルは圧倒的なキル数と、ほとんどデスしないという信じられないような記録を持つ。キルデス比率という点で、FPSのプレイヤースキルを語る上で最高峰の存在だ。彼女は「GALM」のリーダーであり、優里が憧れる目標そのものだった。


「だけど、そのためにはまず仲間を見つけないと…」


 画面の向こうにいる遠い存在を思いながら、優里は視線を自分のカレンダーへと移した。数か月後に予定されている公式オンライン大会、その決勝には必ず「GALM」が出てくるだろう。


「スカウトされるなら、そこで実力を見せるしかない」


 彼女にとって、公式の大会で自分の実力を証明し、「GALM」にスカウトされることが最大の目標だった。孤独な戦いを続ける中で、彼女の心の奥には強い信念が宿っていた。


「…って、言ってるより鍛錬鍛錬っと!」


 優里は再びM4のグレネードランチャーを手にし、戦場へと飛び込んでいく。彼女の眼差しは、まるで熱い炎を宿したかのように輝いていた。

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