第5話 隠された研究
翌朝、大地と美咲は体を引きずるようにして再び斉藤の研究室に戻ってきた。
負傷の痛みはまだ残っていたが、それ以上に心に重くのしかかるものがあった。
戦闘のたびに感じる恐怖と、力の限界への不安。
それでも二人は足を止めるわけにはいかなかった。
斉藤「戻ったか。君たちの表情を見る限り、昨夜の戦いはかなり厳しかったようだね」
斉藤は二人を椅子に座らせると、手元の資料を差し出した。
そこには異世界と地球の融合の法則を解析したデータがびっしりと記されていた。
斉藤「このデータによると、ヴァレリアが異世界と地球を完全に融合させるためには、いくつかの『封印の祭壇』を利用しているらしい。
その祭壇が異世界側に存在するだけでなく、こちら側にも影響を及ぼしていることが分かった」
美咲「つまり、その祭壇を壊せば融合を止められるってこと?」
斉藤「理論上はそうだ。だが、その場所を探し出すのは容易ではない。
ヴァレリアがその場所を厳重に守っている可能性も高いだろう」
大地「それでも、壊すしかないんだろ?」
斉藤「その通りだ。だが、慎重に進める必要がある」
その日の午後、斉藤は大地と美咲、そしてレイナを連れて、研究室の地下に案内した。
そこには異世界から持ち込まれたと思われる膨大な遺物が保管されていた。
古びた剣や盾、そして光を放つ石――どれも見たことのない不思議な物体ばかりだった。
斉藤「これらは異世界から流れ込んだものだ。
ヴァレリアが利用している封印の祭壇を見つける手がかりになる可能性がある」
大地はふと、棚の奥にあった一冊の本に目を留めた。
それは分厚い革の表紙に奇妙な模様が描かれた古い書物だった。
大地「これ、何だ?」
斉藤「それは…『次元の記録』と呼ばれるものだ。
異世界と地球の歴史が断片的に記されているらしいが、言語が特殊で解読できていない」
レイナが本に手を伸ばし、その中身を見た。
彼女の表情が一瞬で険しくなった。
レイナ「これは…『封印の祭壇』に関する記述だわ」
美咲「読めるの?」
レイナ「アルディアの古代語だけど、私の一族が使っていたものと似ている。
ここに、封印の祭壇の一つがこの地球側に出現していることが書かれているわ」
斉藤「それは朗報だな。だが、場所は分かるのか?」
レイナはページをめくり、しばらくして答えた。
レイナ「…ここから北西に50キロ。山間部に隠されているみたい」
大地「じゃあ、そこを目指せばいいんだな」
斉藤「だが、気をつけろ。ヴァレリアがその祭壇を守るために兵を送り込んでいる可能性が高い」
大地と美咲は頷き合った。
これまで以上に困難な戦いになることを覚悟していたが、それでも前に進むしかない。
その夜、三人は簡単な準備を済ませ、次の日の早朝に出発することを決めた。
休息の間、大地は再びキー・アームを見つめながら考えていた。
大地「この力…本当に使いこなせるのか?」
その問いに答える者はいなかったが、美咲がそっと近寄ってきた。
美咲「また悩んでるの?」
大地「悩むよ。俺なんかに、この世界を救える力なんてあるのかって思うんだ」
美咲「でも、あんたが立ち上がらなきゃ、誰も戦えない。
あんたがいるから、私も一緒に戦えるんだよ」
彼女の言葉に、大地は少しだけ笑みを浮かべた。
大地「ありがとな。お前の方がずっと強いよ」
美咲「何言ってるの。あんたの方がずっと頑固なんだから」
二人の短いやり取りを見ながら、レイナは静かに目を閉じた。
彼女の中にも、過去の戦いの記憶が蘇っていたが、それを表には出さなかった。
レイナ「明日が山場になる。しっかり休むのよ、二人とも」
次の朝、三人は斉藤に見送られながら研究室を後にした。
目指すは北西の山間部。
そこに待ち受けるものが、彼らにとって新たな試練になることは明らかだった。
次の戦いに向けて、大地たちは静かに歩みを進める。
彼らの旅は、さらに厳しい道へと続いていく――。
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