第3話 ヴァレリアの影
瓦礫の山を越えながら、三人は崩れかけた街の中心部を進んでいた。
高層ビルは軒並み破壊され、道路には深い亀裂が走っている。
異世界と融合した街は、かつての面影をほとんど残していなかった。
大地は足元に転がる瓦礫を避けながら、ぼんやりと周囲を見回していた。
初めての戦いで得た勝利の感覚は、徐々に薄れていく。
代わりに、これから立ち向かわなければならない敵の存在が胸を重くしていた。
大地「ヴァレリアって、どんな奴らなんだ?」
彼の問いに、レイナが足を止めて振り返った。
彼女の表情はこれまで以上に険しい。
レイナ「ヴァレリアは、異世界『アルディア』で反乱を起こした勢力よ。
彼らの目的は、アルディアと地球を完全に融合させ、両方の世界を支配すること」
美咲「支配…どうしてそんなことをするの?」
レイナ「力が欲しいからよ。異世界と地球が融合すれば、彼らは二つの世界の力を自在に操れる。
ラグナスというリーダーが、その野望を実現しようとしているわ」
レイナの言葉には、抑えきれない怒りがにじんでいた。
そのラグナスという名前を口にするたび、彼女の声が少し震えるのを大地は感じ取った。
大地「そのラグナスって奴、そんなに強いのか?」
レイナ「アルディア最強の戦士と言われているわ。
彼の力を前に、私たちは何度も敗北してきた。だから、彼を止めるのは簡単じゃない」
美咲「それでも、やらなきゃいけないんだね」
美咲は強く拳を握りしめた。
その手には、異世界の武具と共鳴して浮かぶ緑色の紋様が淡く光っている。
その様子を見た大地もまた、握りしめたキー・アームを見つめ直した。
三人が目指しているのは、街の中心にある唯一破壊を免れた高層ビルだった。
レイナによると、そのビルには地球側で異世界の力を研究している科学者がいるという。
彼の知識が、ヴァレリアの次なる侵攻地点を予測する手助けになる可能性があった。
ビルが近づくにつれ、緊張感が高まる。
周囲にはいくつもの影が蠢いており、今にも襲いかかってきそうだった。
レイナ「注意して。何かいるわ」
その言葉が終わる前に、影の中から鋭い咆哮が響いた。
次の瞬間、黒い甲殻をまとったモンスターが姿を現し、三人に向かって突進してきた。
大地「また来たか…!」
彼はすぐにキー・アームを構えた。
先ほどの戦いで少しだけ掴んだ感覚を頼りに、光の刃を振り下ろす。
だが、モンスターは素早く動き、大地の攻撃をかわして背後に回り込んだ。
大地「やばい…!」
モンスターが鋭い爪を振り下ろそうとしたその瞬間、美咲が前に飛び出した。
美咲「守るよ!」
彼女が掲げた盾が光を放ち、モンスターの一撃を受け止める。
衝撃で美咲は後退したが、その間にレイナが動いた。
レイナ「隙を見せすぎよ!」
彼女の剣がモンスターの体を切り裂き、黒い液体が飛び散る。
モンスターは断末魔の叫びを上げ、地面に崩れ落ちた。
美咲「ふぅ…なんとか倒せたね」
大地「お前、無茶するなよ」
美咲「無茶しなきゃ、あんたを守れないでしょ?」
彼女の軽口に、大地は少し苦笑した。
だが、そのやり取りの中でも、彼の心はまだ晴れていなかった。
ビルに到着した三人は、中に入ると急いで上層階を目指した。
エレベーターは動いておらず、瓦礫を避けながら階段を登る。
そこに待ち受けていたのは、一人の中年男性だった。
白衣をまとい、手には異世界の資料と思われるものを抱えていた。
斉藤「よく来たな。君たちがこの混乱を何とかしてくれると信じているよ」
大地「あなたが…異世界の研究をしているっていう?」
斉藤「その通り。斉藤誠司だ。
私はこの異常現象の原因を探り、それを止める方法を見つけるために研究をしている」
斉藤の落ち着いた声と知識量に、大地たちは信頼を寄せることができた。
彼の話によると、異世界と地球の融合を逆転させるには、特定の「封印の祭壇」を破壊する必要があるという。
斉藤「しかし、その祭壇はヴァレリアの拠点にある。
簡単には近づけないだろう」
大地「それでもやるしかないんだろ?」
斉藤「その通りだ。
だが、無計画に突き進めば君たちの命は保証できない。まずは準備を整えよう」
三人は斉藤の協力を得て、次なる目標に向けて動き始める
その背後には、ヴァレリアの影が着実に迫りつつあった。
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