第35話
「うーむ、うん。ちょっと相談してみるか。」
俺達は順調にクエストを消化している。正直E、F級魔物は問題ないし、魔力も十分。リリーの柳ムチの攻撃力アップもかなりのものになり、二人共オーバーキルになってしまっている。
依頼クエストの方は、ユーゲン商会から新しいボードゲーム(ジーオー)の開発協力名での囲碁指導が入り始め、こちらのペースでできる範囲で協力?している。正直おいしいだけだ。
そのうちにE級へのレベルアップも見えてきた。
E級といえば、俺の理解だと前世の量産型サラリーマンだ。贅沢はできないが、ちょっと趣味で大人買いができる。そんな所得層だろう。しかもうちは大商会御指名クエストのおかげで、その中でも上へ推移中だ。
現在かなりの金額も稼げるようになったので、次の段階へ進むべきだろう。
俺達は冒険者だし、スキルの研鑽を考えればレベルアップは必須だ。
ただね、今は孤児院にいて、このままだと突出してしまい多分軋轢の感情を生ませてしまう。極貧の生活をしているやつの近くで、おいしい菓子でも食べようものならどうなるか想像するまでもない。
今のところ見た目にさほどの差がないとはいえ、直ぐに露見するだろうし、俺達も遠慮しながら生活するのは何か違う。
分与える?うん、一時的ならそれもいい。けど、簡単に人に与えるのは違うと思っている。人が育つうえで、無条件で与えちゃいけない。自立心がなくなる。そいつらが立派に育つかどうかは、現実を認識する必要がある。
親が子供を育てるような状況ですら、与えすぎちゃいけないと思っている。なんでも与えると、わがままで自己中にしか育たん。特にそれは底辺の人間に不幸をもたらす。
孤児院への援助金はいいんだ。それは当然考えるとして俺たちがやるのはよく考えてからにしないといけない。孤児院から出た方がいいだろう。
とすると、俺はともかく問題になるのがリリーだ。あいつ、外での生活耐えられるかね。
しかも女の子だ。気は弱いが、ちょっとかわいい赤毛の子である。自慢の娘である。(娘ではない。)
いつかは嫁にだすのかね?男親の悲哀を感じるぜ。・・・。おっと。思考がそれたな。
高級な宿でも取り続ければ、安全な環境は得られると思うが、それではさすがに金をかけすぎだろう。
まずは相談してみるかね。今日から依頼クエストだしな。おっと、その前にリリーだな。
・・・・・
「ーと、考えているんだ。俺達は孤児院を出た方がいい。」
リリーに宿の事以外の状況について説明する。
「・・・。孤児院に援助は、さ、賛成よ。神父様やシスターには、ほんとにお世話になったと思ってるし。
私たちのような子供へは、できるなら手を差し伸べてあげたい。で、でもヒロの考えだと直接は難しいのね。
うん、わかった。こ、孤児院をでる。
で、わ、わ、私はヒロについていくわ。ずっとついていくわ。
え、何?一緒に宿に泊まればいいでしょ?今までだってみんな近くで寝てたでしょ。」
いや、10歳でもぎりぎりだとは思うが孤児院が12歳で独立をさせるのはその年齢で二次性徴が始まっているからというのもあるだろう。早い話が子供を産む準備が始まるのだ。貧乏も当然あるだろうが、育てるのに面倒、いや、手間やお金がかかり、いや、適当ではなくなる。
さっさと独立してもらわないと困るだろう。
しかし一緒の生活ってことだが。うーん?ま、しばらくはそれでもいいか。最悪行き遅れたら俺が嫁に取るか。
恥ずかしくなったら部屋をわければいいし、そのころにはリリーも強くなってるだろ。
・・・・・
「そう。成長が早いと思ってたけど、ヒロはよく考えているわね。援助の事は無理しないでね。ただ、お金がないのはよくわかっているでしょうから、余裕があるようなら助かるわ。
そうね。リリーもヒロが一緒ならまかせられる。ちゃんと面倒見てあげてね。
・・・。二人共ケガや病気に気を付けるのよ。何かあったら相談しにきなさい。いいわね。ううん。何もなくてもたまに顔をだしなさい。きっとよ。」
リリーとシスターは泣きながら抱きっている。別れ際に俺にもハグしてくれた。
この世界の初恋だったんだよなぁ。
いままでほんとにありがとう。なんとか生きてこれたのは間違いなくこの孤児院のシスターと神父様のおかげだ。
神父様?ああ、傍で泣くのを我慢してかなり難しい顔になってる。同じくハグをしてお別れをする。
あとで泣くんだろうな。それくらいはわかっている。義理の関係とはいえ家族同然だったんだからな。
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