日本で高校生活をする伝説の暗殺者が事件を解決してくれるそうですよ!
@sige02
第1話 コンビニのATMって便利だよね?
「あ、ラーメンが食べたいな……」
高校二年の春。
俺、【松田亮】は今年の四月に高校に転校してきたばかりで、この辺りの街についてよく知らない。なら、やるべき事は決まっていた。それは上手いラーメン店探しだ。
アメリカにいた頃は偶にハンバーガーやホットドッグを食べてることが多かったが、日本に来て初めて食べたラーメンに衝撃を受けたね。
う、上手すぎる……。
この汁の濃さとパスタと比べて細い麺が絶妙に合うのだ。
そしてシャーシューとかいう肉が素晴らしく上手いのだ。
俺はラーメンの虜になったね。でも保護者が煩いんだ。健康に悪いから控えろ……。
「はぁ……ラーメンが健康食品だったら毎日食べているのに……。」
ただいまの時刻、午後五時になろうとしていた。
そろそろお腹も空いてきたので、スマホのマップで見つけた店へと向かっていた。
今回の店は人気店だから少し並ぶかもしれないなと思った。
「そういえば、財布にお札が……」
最近の世の中は電子決済が増えてきていた。特にアメリカでは日本以上の電子決済文化だった。だが、日本の個人経営の飲食店では、電子決済に対応していない店も少なくない。
「特に俺の愛して止まないラーメン店ってのは、何故か電子決済してないこと多いんだよね……」
仕方ないなぁと思い、ラーメン券(1000円札)を卸すためにコンビニへと向かっていた。
「いらっしゃいませー」
レジに居る女の子と目が合った。おやおや、どうやら同じクラスの女の子【白井茜】みたいだな。でも、何故か変装しているので気づかれたくないのかなと思い、素知らぬ振りをしておいた。
すると向こうも俺に気づいていたのだろう。安堵するように息を吐いた。
初めて来たコンビニだと、何処にATMがあるか分からないよね。
左右と見渡すと飲み物が置いてある方向にあるようだったので向かい、ATMにカードを差して少しの現金を卸した。
沢山卸すと保護者に何言われるか分からないからね。
「でも俺がラーメン食べて帰ると少し機嫌悪くなるんだよなぁ……」
何かご機嫌取りに使える物はないかと考えると妙案が浮かんだ。
酒好きのアイツのことだから日本のビールを幾つか買っていけば喜ぶのではないかと……。
ふっ、天才だな……。
俺は酒コーナで、幾つか種類の違う缶ビールを籠に入れた。
そのまま店員に持っていくと、ギョっとした顔で俺の方を見てきた。
「あなた未成年よね!」
「違いますよ。僕は今年で21歳になるんですよ」
「え、そんなウソ私に通じると思っているの! 」
クッ……流石に真面目そうな白井茜だ。初めて話したが予想通り口調キツメ系だな。
それに俺が高校生だとバレている以上仕方ないな。
ここは大人しく降参するしかないな。
俺と白井がレジの前で話していると、全身黒ずくめでサングラスにマスクを着けた如何にも犯罪しますよと宣告しているような服装の男が入店してきた。
白井も瞬時に理解したのだろう、恐怖一杯の表情に変わっていた。
俺の隣で、店員にナイフを向けた小太り気味のおじさんが叫んだ。
「おい!早く金出せ!」
あまりの大声に品出しをしていた大学生っぽい男と他の客も恐怖のあまり硬直していた。
「早くしろ!」
「ひっ、ぐすっ……」
震えた手でお札を集めて店員に渡した。
「それだけじゃねぇだろ。隣のもだよ」
「は、はい……ぐすっ」
隣のレジからお金を取り出そうとして、お札を搔き集めていたが、恐怖のあまり涙が出すぎたのだろう。前が見えないのかダサいメガネを外した。
俺は、不味いかもと思った。
「ほぉ……」
犯人はニヤニヤと笑った。
どうやら嫌な予感は当たってしまった。
白井は正直に言って美少女である。転校したばかりで知らないがクラスの男子曰く学年一番は確実だとか。
コンビニ店員では面倒事を増やさないために変装してるんだろうなと思った。
そしてこんなコンビニを襲って数万取ろうとする犯人だ。
自分でもこの先の人生が上手くいかないと分かっているのだろう。
そんな犯人がコンビニ強盗をするという緊張状態の中で、突然思いもよらない美少女が目の前にいる。しかも自身に恐怖の感情で一杯なのだ。
逃げる前に少し遊んでやろうと思ったのだろう。
隣にいる男の目つきが変わったのを俺は感じた。
恐らく白井も感じたのだろう。先ほど以上に恐怖で手だけでなく足も震えていた。
「へぇ、白井ちゃんか。メガネ外すまで分からなかったけど、君かなり可愛いね。しかも……胸もデカいときた」
白井の胸はかなりデカい。俺がアメリカで見てきたデカいと言える女性とほぼ互角であった。白井の華奢な身体に似つかわぬデカさだった。つまり日本だと規格外のスタイルなのだ。
「ひぃっ……ぐすっぐすっ」
完全に立つ力が無くなったのだろう。腰を抜かして地面に尻もちついていた。
その怯えた表情が犯人には、また堪らないのだろう。レジカウンターに男が入ろうとした。
「ちょいちょい」
俺はおじさんの肩を叩いて話しかけた。
「あぁぁん、なんだテメェ。うごっ……」
ご馳走と言う名の獲物を前に邪魔されて、殺意丸出しの視線を俺に向けた。
振り返った瞬間に俺はおじさんの顎に目掛けて拳を振り上げた。
つまりアッパーを入れたのだが、今までの経験上不意打ちでここに当てると相手は平衡感覚を失うだよね。
俺の予想通り男は立っていられず、勢いよく巨体が地面に倒れた。
『う、うわーなんだ』
『キャーーーッ!!』
周りがいきなりのことに驚いたのだろう男の店員と客たちが叫んだ。
俺は近くで品出ししていた男性店員に話しかけた。
「結束バンドとかありますか?それかガムテープでもいいですけど」
「あ、あります。今持ってきます」
いきなり話しかけられて驚いた表情だったが、この場面で必要な物であると分かったのだろう。男の店員は店の奥に急いで走っていった。
俺はその間におじさんが落としたナイフを拾い、おじさんの身体に他に武器になるような物がないかを確認したが、特に無く財布とスマホがあるくらいだった。
「これでいいですか?」
「あ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。あと、警察に通報もよろしくお願いします」
「は、はい!」
俺は慣れたもので結束バンドでおじさんの足と手を縛り、ガムテープで目と口を塞いだ。
「白井、大丈夫か?」
「すんっ……大丈夫なんかじゃないわよ。ソイツに襲われかけたのよ」
赤くした目で俺に視線を向けた。
「まぁそうだけど……。まぁ運よく何も無かったし結果オーライだ!」
オーライだけ流暢に話すのがポイントだ。
「くすっ、なにそれ。オーライだけ流暢すぎるのよ……」
口元に手をあてて上品に笑顔を浮かべた。
どうやら白井にも笑うだけの余裕が生まれたようだ。
「松田君って面白い人なのね。クラスでは大人しかったから、少し意外だわ」
俺が大人しい理由は初めての学校で、どうやって過ごせばいいのか分からないので周りに合わせているだけなのだが……。
だって変なことやると、アメリカに戻されるかもしれないし……。
「え、そう?ありがとう……。あ、これから大事な用があるから、俺は帰るとするよ。シーユー」
強盗オジサンに時間を潰されたが、俺にはラーメンを食べるという本日のメインイベントがあるのだった。開店前に並ばなければならないので少し急がなければいけなかった。
「くすっ、だから英語のところだけ流暢すぎるのよ」
面白そうに再び上品に笑っていた。
完全に普段通りに戻っていたようで俺は安堵した。
こういうのってトラウマになると後の人生困るからさ。
「……あ!マニュアルだとあの人に残って貰わないといけないんだった!!」
もう俺は外に出ていたが男の店員が叫んでいた声をしっかりと聞こえていた。
だが、ごめんな。ラーメンが俺を待っているんだ。しかも人気店ときている。
これはもう仕方ないよなぁ?
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