第53話:喧嘩は同レベル帯でのみ起きるとか

「ヘディン~?そろそろ許してほしいな~なんて。」


「ふん!」


「はうあ!」


どうも、現在絶賛反抗期中の子の相手をしておりますカノイです。


なんでこんなことに……いや私のせいか?


実はヘディンの大切にしていた王都のお土産ことスノードームを誤って氷漬けにしてしまったのだ。


しかし、これは燃やせば元に戻る!とファイアを打とうとしたところヘディンさんがお怒りになられたのだった。


「雪解けちゃう!にーちゃ、ないない!」


「ないない!しないでって~。溶けちゃわないから大丈夫だよ~。」


「解けちゃう!ないない!」


そんなこんなでにーちゃないないをされているわけである。


ちなみにないないとは、開けようとしている扉を強制的に閉じる魔法の言葉である。


つまるところ閉じ込められている。


部屋から出してくれない。だからといって無理やり出ようとするとヘディンが怪我をしてしまう。


も、もどかしい!


「ヘディン!お兄ちゃんを許してあげよ?」


あんまりな事態にフロージが加勢に来てくれた!


ありがとうフロージ!


「にーにも、ないない!」


「あ、ごめんお兄ちゃんないないされた。」


フ、フロージ!?フロージはすごすごと自室の扉を閉めていった。


くそーどうすれば。


「にーちゃ、ちっちゃい世界くれたのに、全部燃やそうとした……。」


「……。」


「にーちゃがくれたのに!壊そうとした!」


「……。」


「にーちゃがくれたのに!にーちゃが……ひっく。」


「……!」


だ、抱きしめさせろー!


泣いちゃったじゃん!にーちゃがくれたもの壊そうとしたから泣いちゃったじゃん!


というかあれか、にーちゃがくれたものが大切だから怒ってくれていたのか。


くっ!かわいいな!


あぁもう無理だ!


デバッグモード!


「ヘディン!」


「にーちゃ!」


「ごめんな、ヘディン!お前の大切なものを壊そうとしたんじゃないんだ!ただ氷を解かそうとしていただけで……。」


「にーちゃ!にーちゃ!ふえーん!」


「ごめんな、不安にさせちゃったな。」


「えーん!にーちゃ!」


「よしよし、いい子、いい子だ。」


ゆっくりと撫で続けると泣き声は収まっていった。


同時に小さな寝息が聞こえてくる。


「寝ちゃったか……。ふぅ、落ち着いてよかった~。」


さて、どこかに吹っ飛ばした扉はどうするか……まぁ謝れば許してもらえるか!


今は弟優先!ということでこっそりと、


「ファイア。」


よっし解凍完了!


これで後はヘディンが目を覚ましたら、スノードームを見せて改めて謝ろう。


「……にーちゃ……こいこい……。」


「あ、ないないの逆ってこいこいなんだ。」


とりあえず夢の中では許されてそう、かな?


カノイ・マークガーフ、12歳、兄弟喧嘩というものを体験した冬の出来事である。

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