第49話:人らしい生活って無意識にやってるだけですごい

「うーん、どうしたものか。」


ウェアウルフが引っ越してきてからしばらく、今のところ彼らも何の問題も起こさず、村人側も脅威ではないと理解してくれて来た。


それはいいんだが、


「躾をどうするかだな……。」


「なんかカノイがえらいこと言ってるー!」


なんか勘違いされてる気がするが、君も一因だからね?


「いや、ウェアウルフの躾をどうするか、と。」


「ヴァイスー!カノイ様が壊れたー!」


「あ!こら!ここぞとばかりに様付けするんじゃない!」


いつもは呼び捨てのくせに!




「ウェアウルフ達は好き勝手に食事をしています。」


「「はい。」」


「ウェアウルフ達は好きな場所で適当に寝ています。」


「「そうですね。」」


「ウェアウルフ達はトイレを覚えていません。」


「「そうなの?」」


「ということで躾が必要なんだよ。」


「言い方よ。」


「躾って人に使うのどうなんでしょう。」


「いや、半分、いや、今の現状ほとんどワンちゃんなんだって!」


ワンちゃんなんだって!


「じゃあ全員学校に通わせるか?」


「うーん、現状そのレベルにも達していないというか、一般的な人間の生活から始めてほしいというか。」


「普通に家を用意するところからですね。彼ら地べたで寝てますし。」


「だよね~家にトイレとベッド、あとお風呂ね。」


「風呂も入ってないんかい!」


「入ってないんじゃい!」


いろんな意味ですごいぞ臭い!


「とにかくトイレ!お風呂!ベッドを覚えさせる!」


「躾ってそういうとこから?」


「犬ですね。」


だからワンちゃんなんだって!




「ということでよろしくお願いしまーす!」


「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」


村人総出で家づくりだ!


といっても木を切ったり運んだりがメインで仕事はほとんど大工さんまかせだ。


「お頭ー!あとどれくらいでできそう!」


「そうだなーこの調子だと冬は越すだろうなー。」


「まじかー!」


暖かいお家で暮らすには遠いなー!


ウェアウルフ達は興味津々で私達を眺めていた。


いや手伝おうよ。


「手伝えばよいのか?何をすればよい?」


「声に出てたわ。じゃあとりあえず木を切って運ぶのを手伝ってよ。」


「あいわかった。」


ウェアウルフ達と人間達がえっちらほっちら。


頑張った結果、一冬で何とか十件の家を建てることができた!


一軒に3人が暮らす計算、そこから増えてもいいように余裕をもって4、5人が暮らせる設計だ。


「よし!ではまず家の暮らし方を教える!まず第一に掃除!」


「掃除だと?それならしている。」


「まだまだ掃除してない!家は綺麗に保ちましょう!ってことでまず掃除の仕方を教える!」


その後も苦労しながらなんとかトイレとお風呂、ベッドの使い方を教えることに成功した。


人間にとっての必要最低限の生活、プライスレス。


カノイ・マークガーフ、11歳、必要最低限の生活の大切さを改めて感じる冬の出来事である。

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