第47話:海で遊ぶときは準備運動しよう

「あ~ごくらく~。」


カノイ、11歳の夏、海に来ております。


「ウォーターしなくてもこんなに水がある~。」


ぷかぷかと浮かびながら独り言つ。


あ、海にも危険なモンスターがいるんじゃねって話は狩猟祭後なのでなしだ。


今回はバカンスモード。今年からは海に家を作ったので数日宿泊できるのだ。


「カノイ様ー!あっちまで競争しましょー!」


「カノイ様!俺らとレースしようぜ!」


「カノイ様!一番になった人にご褒美付けましょうよ!」


最近遊べていなかったファンとジェイルとエイルがとっても元気だ。


よーししょうがないな~遊んでやるか!


「じゃあ一番にはミルクアイスキャンディプレゼントだ!」


「まじか!」


「やりましょう!」


「やったー!」


「さすがですカノイ様!」


今日も皆元気で良し!




「よっしゃー!俺の勝ちー!」


「ジェイル、早かったね。」


「足が速いと泳ぎも早くなるのかしら。」


「お兄ちゃん惜しかったね。」


「ジェイル、ファン、リボルの順番だな。よし!頑張ったし3人にアイスを進呈する!」


「よっしゃー!」


「さっすがカノイ様ー!」


「俺これ好きー!」


「よしよーし、他の奴らも狩猟祭の片づけの手伝いしてくれるならアイスをプレゼントだ!」


「やったー!」


「ぼくも大好きです!」


「アイス……!」


皆アイス大好きだな。まぁ暑い中で食べるアイスは最高だからな!


このご時世甘味料が手に入りずらいからこそって部分もあるかもしれない。


家で甘味料って言ったら森で取れる木の実くらいだからな~。


砂糖、もっと購入してほしいな~。


その辺は私が大人になったら確認してみよう。


もしかしたら作れるお菓子も増えるかもしれない。


「目下、かき氷を作りたい。」


「かき氷?」


「おかしー?」


「お菓子だよ~。」


フロージとヘディンも興味があるようだ。


よーし作るか!




「こう、氷をガリガリっと削って。」


「「「うんうん。」」」


「お皿に盛って木の実の搾り汁をかければ……完成!」


「「「おー!」」」


「新しいお菓子ー!」


「おかしー!」


「美味しそう!」


「でもなんでアイスと違うんだ?」


「うーん、ミルクが入ってない分こっちのほうがさっぱりしているから?」


「なんで疑問形なんだ?」


「なんでもいいわよ!それより食べましょ!」


そこは新しい物好きのファン、我先にとかき氷に食らいつく。


「んんー!おいしい!キンキンだわ!」


「うわー美味そうに食うなぁ!俺もー!……うわ!あめぇ!うっま!」


「木の実の味そのままにキンキンの氷に溶け込んださながらジュースみたいな。」


「なんだよ急に~。あ、これ美味いわ。」


「さっぱりしてていくらでも食べられますね!」


「カノイ様お代わりください!」


「うぁ、頭がキーンってする……!」


「キーン……。」


「ははは!急いで食べ過ぎるとキーンってなるんだよ!誰も取らないからゆっくりお食べ。」


「溶けちゃうよー!」


「ヘディンもキーンしたい!」


「じゃあちょっとずつ作るか~!」


いっぱい食べる君達が好きだが氷を作って削るほうは結構大変だ。


うーむ生産態勢は整えたい。


あ!そうだ!


「トム!グルート!ちょっと氷を作ってみない?」


「へ?」


「え?」




「ウォーター!」


「アイス!」


おぉ~大量生産!


これは削りも自動化したいな~、そうだ!


「ファン!一緒にウィンドで氷を削るぞ!」


「え!私も?」


「よーし行くぞー!ウィンド!」


「やってやろうじゃない!ウィンド!」


魔法の効果をちょっといじって螺旋状に風を回転させる。


ファンもなんとか同じ動きを再現してくれた。


螺旋状の風に当たった氷が見る見るうちに雪のような粒上になっていく。


「おー!さっきよりきめが細かい!」


「雪みたい!」


「今から雪を食べるのか!いいな!」


「夏の雪、贅沢ですね!」


「よーし他の奴らは木の実を搾れ~皆で村人達にかき氷を作るぞ!」


「「「「おー!」」」




「「「「「うおー!!!」」」」」


「なんか、すっごい盛り上がったな。」


「そりゃあ、いつも可愛がっている子供達が自分たちのためにお菓子を作ってくれたって聞いたら盛り上がりもするさ。」


「パパーパパの分もあるよー。」


「あるよー!」


「ヘディンとにーにが搾ったのー!」


「うぅ、お前達……大きくなって……。」


わかる~がんばって木の実を搾っている姿を見てホロリと来たもん。


「カノイもありがとう。」


「いいよ別に、かき氷くらい。」


「それだけじゃないさ。」


「え?」


「手に職付けるのは悪いことじゃない。魔法の使い方も、普段はしないような新しい使い方だ。家の村も今までは家業を継ぐことしか考えられない状況だったが余裕も出てきた。広い視野を持てるようになるのは皆にとっていいことだ。」


「パパ……。」


「カノイは皆に新しいことに挑戦させようとしてくれる。それはきっと領主として必要なスキルだ。」


「う、うん。」


領主になる気はないのだが。


「偉いぞ、カノイはもう立派な領主見習いだな!」


「お、おう」


ならないけどね!


「この調子で秋のウェアウルフとの交流も頑張ろうな!」


「せやな……。」


ならないってば!いや交流は確かに頑張らねば。


と、とりあえずかき氷の布教は大成功!ってことで。


カノイ・マークガーフ、11歳、暑い夏に一石を投じた夏の出来事である。

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